第121話 Che vuole questa musica stasera

 アイさんへの説教を終えた俺は街へと繰り出す。

 ソマリンへと出発する前に行っておきたい場所があったからな。

 俺はカリンとマリアを連れて久し振りにここに訪れた、例の雑貨屋である。

『あらお父様ったら仕事が早いこと』

 看板を見上げて言うマリアに何事かと尋ねると看板に「アミダラ商会公認」と書いてあるらしい。

「こんにちはー」

 そう挨拶しながら店に入ると出てきた店主が驚き顔で飛び出してきた。

『おお!あんたか!まさかアミダラさんにつてがあるなんてな!おかげでワシの店は商会公認になって客が殺到してウハウハじゃ!』

 そう興奮しながら捲し立ててきた。

「いや、よく俺からってわかりましたね」

 俺がそう言うと。

『いやいや、ワシの趣味で作った短剣など買って行ったのはあんただけだしこの前もほれ、マリアお嬢様と一緒じゃったろう』

 そういえばそうか、マリアはこの町では(いい意味でも悪い意味でも)有名人だからな。

『それでコレをアミダラさんから言われて作ってみたのじゃがあんたの感想も聞きたかったんだ、見てくれ』

 と言って出してきたのは俺がトイレに使っている簡易シェルターと同じ構造をした物だった。

 ただしこっちは何やら獣か魔獣の皮で頑丈に作ってありいかんせんコストが高そうな代物だった。

「物はすごくいいですけど素材が勿体無い気がします、所詮トイレの目隠しなので布の素材でいいのではないですかね?急な雨を考えれば布に何か防水性のある物を塗るとかその程度で十分だと思います。

 こんなにいい皮があるならむしろ野営用のテントを作ったほうが売れるんじゃないですか?」

 そう言って俺は一般的なドームテントの形状を羊皮紙に描き込んでやる、シェルターで継ポールの構造は再現出来ているので丈夫な皮などでテントを作れば良い品物ができそうじゃないかと思って。

『むむ!コレはいいな!特にこの二重構造と前室を作ると言うアイデアは素晴らしい!このアイデアを使っても良いのか?』

 店主がそう言うので俺は許可を出す、許可といってもあのyoutuberヒロシ絶賛のコールマンのツーリングドームの構造図を書いただけだからな、俺の知恵じゃ無いし。

『あんた明日まで街にいるのか?アイデアのお礼にワシのとっておきで試作品を作りたいのだが貰ってくれないか?』

 店主がそう言うので俺は。

「出発は明後日の予定ですから明日また顔を出しますね」

 そう言うと。

『こうしちゃおれん!ワシは裏で試作に入る!明日の夕方また来てくれ!』

 そう言って裏に引っ込んでしまった。

 残された俺たちはやる事もなく帰路に着いたのだった...あの親父さんが作る道具面白いから何か新製品がないかと思って居たのだがどうにも創作意欲を刺激してしまったようだ。

 明日に期待しよう。

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