第118話 綺麗だ貴女のスイミングスタイル

 明け方、予定外に起きたままになってしまった俺は若干ふらついていた。

「むー、スライムが来る前まで寝てたからちょっとはマシだけど若干徹夜気味だと流石にきついな」

 顔を洗って眠気を覚まそうとしたがどうにもスッキリしない。

『じゃあお昼まではあたしが運転するからちょっと寝てたら?』

 というメリルの言葉に甘えて荷馬車の方でシートを倒して横になる。

 サスペンションが上手く動いてくれてるので程よい振動に意識を手放す...。


 ...


「起きて...」

 ん?誰だ?さっき寝付いたばっかりだけど何かトラブルか?

「起きて...」

 うーん、ちょっと待って...。

「起きろっつってんでしょうが!」

 うわ!びっくりした!

 って馬車の中じゃない!?

 飛び起きた俺の目の前には...たしかアメリ?

「そう、私はアメリ...この世界の女神です」

 いやいやいや、スライムに服溶かされる女神様とかいないだろ?

「それ...あんたのせいだからね、このスケベ。

 まあいいわ、堅苦しい喋りする必要もないか、あんた召喚したわけじゃないし」

 自称女神様は急に砕けた喋りになった。

「だから自称じゃないんだってば、あんたの考えてる事筒抜けなんだからね?」

 なに!?と言うことはこの前見たアメリのエロい姿を想像すれば...。

「ふざけてるの?」

 割とマジ顔で説教されて俺は反省する。

「ま、冗談はこれくらいにして。

 あんたがマイさんを地球から呼んで勇者にしたんだな?」

 俺の問いにアメリは。

「そうよ?まさか文句でもあるわけ?」

 と聞かれて俺は。

「ありがとう、君のおかげでマイさんは元気にもう一度青春をやり直せそうだ」

 と答える。

「なるほど、あの子の境遇を聞いたのね」

 と言われたのでコックリと頷く。

「で?今俺は荷馬車で寝てたはずなんだけど急に俺の夢に出てきた理由は?」

 俺の問いにアメリは。

「マイには一通り説明したつもりだけど案内者ナビゲーターとしてあんたを指名した以上細かい説明しとかないとと思ってね」

 アメリが言うには自分と同じ姿をした天使=アメリズが北の大陸で消息を絶った、他の世界と照らし合わせて考えられるのは『魔王』の誕生による物では無いかと。

「魔王って俺たちが小説とかで見るあの魔王でいいのか?」

 と言う俺の問いにアメリは。

「んー、まだ確認出来てないから正確なことは言えないんだけど魔王って世界に対するバグなのよね、例えばありえない力を持った魔族が生まれたり有り得ない概念が生まれたり。

 今回の件がどういう『魔王』かわからないけど上手くマイを導いて欲しいのよ、異世界の先輩としてね」

 なるほどな、とりあえずざっと理解した、それじゃ本題に...。

「あ、あんたチート無いから。

 ちなみに記憶消去して覚えてないだけでこの会話2回目だから」

 あー!やっぱりー!?

 マイさんから言われていたけど確認したかったんだよう...。

「でもまぁ、バグ取りの報酬はちゃんと用意しておくから、世界の危機を救ったって言う実績があれば神界も結構ガバガバ判定してくれるからさ、頑張ってね」

 そう言ってアメリは俺のおでこにチュッとキスをした。

 その瞬間俺の頭の中に魔王の調査討伐の為のルートが浮かんで来た。

 まずはソマリンから船でサンブックって国に行くのか、そこから北上してウォトカの国に行くと。

 そしてその果てで...おそらく魔王に遭遇出来る...のかな?

「じゃあもう行くわね、マイの事頼んだわよ...」

 そう言ってアメリは消えてしまった。

 って?普通こう言う時俺も流れで目が覚めるんじゃ無いの!?

 なんか真っ白な空間に俺一人取り残されてるんですけどー!おーい!アメリー!


 へんじがないただのいくうかんのようだ。


 むー、でもまぁこれって俺の夢の中なんだろ?それなら俺のやるべきことは...。


 俺はその場でゴロンと横になって目を瞑った。

 どうせ現実で寝てるんだ、ここでも寝ていよう。


 ...


 お昼になってみんなに起こされたら普通に起きれました、はい。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る