第117話 垣根の垣根の曲がり角
ビーッ!ビーッ!ビーッ!
「パターン青!⚪︎徒です!」
夜中に警報が鳴り響いた。
というかマイさんも見てたんだなあのアニメ、最後の最後を見ずに転移してしまったのが悔やまれる。
じゃなくて!
俺は飛び起きるとあたりを警戒する!
するとヒョコヒョコ半透明の物体が視界に入った、スライムだ!
俺はポンピングをして塩弾を...っておいおいマイさんダメだって!そいつ物理効きにくい...。
と声をかける前に。
「ヤーっ!」
と一閃するマイさん!
そうそう、切れはするんだよな、俺もやった。
ドロリと溶けるスライム。
え?なんで?
『ふむ、マイ殿の成長も順調だな』
いつのまにか横に来てしたり顔で解説してくれるローズさん。
どう言う事?
『簡単な話ですよ、マイ殿はスライムの核を斬った、それだけの話なのですがこの薄明かりのなか的確に斬れたのはアイ殿との魔法訓練の賜物でもあるでしょう』
あ、そうか。
警報にも使われている感知魔法と剣術の組み合わせなのか。
うーん、あの走り方さえ知らなかったマイさんがそこまで...勇者ってすげーな。
その後一応あたりを警戒してみたが他に襲ってくる物も無いようなのでみんな再び眠りにつくが俺は目が冴えてしまったので警戒ついでに少し起きておく事にする。
焚き火は良い、ただ火を眺めてるだけなのになんか落ち着くんだよな。
「何黄昏てんの?ヨッチ?」
ボーッと焚き火を眺めていると寝ていなかったのかマイさんが声をかけてきた。
「いや、特に何か考えてたわけじゃないんだけどこうしてるとキャンプ感があって良いなと思ってね、マイさんはどうしたの?眠れないの?」
俺がそう聞くとマイさんは焚き火を見ながら。
「そっか、こういうのがキャンプなんだね、あたしやった事無かったから新鮮でさ。
ちょっと気になったから見てたんだ」
お、夜中なので割と素のマイさんだな、せっかくだしちょっとおしゃべりしてみるか。
「そういえばあの警報、あのアニメでしょ?マイさんアニメとか見るんだ?」
俺がそう聞くとマイさんは。
「あー、アニメは良く見るよー。
病室だと暇で暇で」
マイさんはそう言うとしまった!って顔をした。
んーこれは突っ込んで聞いて良い事なんだろうか?
「病室...って細かく聞いても良い話なのかな?」
俺がそう言うとマイさんは。
「あー、まぁヨッチは地球人だし隠す事でも無いから言っていいかな?
あたしさ、本当は生まれた時から病気で小学校もろくに行けてないの。
一応義務教育は卒業してるし病院でも学習会みたいなのはあったから普通だったら高校も余裕で行ける成績だったんだけど...あたし身体が普通じゃ無かったから」
そう言ってマイさんは頭をポリポリと搔く。
「で、同級生が高校生活をエンジョイしてる間あたしはだんだん悪くなっていく身体をベッドの上で騙し騙しもたせてたんだけどこの前急に息苦しくなって『もう終わりかな?』って覚悟したら女神様に会ってこの世界にやってきたって訳、面白い話じゃないでしょ?」
そう言って笑うマイさんだったけどその笑顔は満面の笑みではなく影のある笑い方だった。
俺は咄嗟にマイさんを抱きしめて泣いていた。
抱きしめながら頭を撫ぜて。
「辛かったねぇ、頑張ったんだねぇ」
なんの慰めにもならないかもしれないけど我慢できずそう言っていた。
マイさんは。
「うん...頑張ったんだ...でもママには悪い事しちゃったかな?あっちであたしの身体がどうなったかわかんないけど死体だけ残してこっちに来てるんだったらやだな...」
そう言って顔を伏せた。
俺はマイさんの両肩を持って正面から見つめると。
「じゃあさ、魔王を倒してお母さんに元気になった姿を見てもらおうよ、女神様直々のオーダーなら帰る時はどうにかしてくれるだろ?」
俺がそう言うとマイさんは。
「うんっ!」
と笑顔で頷いた。
そっか、マイさんが時々二十歳に見えないくらい子供っぽい時があるけど思春期が全て療養に充てられていたからかもしれないな。
「それにさ、あっちで青春的な事できなかった分こっちでやってみればいいさ、ちょうど周りの子達もそのくらいの年代だし」
俺がそう言うとマイさんは。
「そうだね、恋とかしてみたかったもんね」
そう言って笑った。
「今のところノヤーロ君ぐらいしかいないしちょっと若いと思うけどあの歳で騎士になってるし将来も有能そうだよ」
そう俺が勧めると。
「言っとくけどヨッチも恋愛対象だからね?おやすみ」
そう言って小悪魔的な笑顔で馬車に戻っていった。
俺はちょっとドキッとしながらも。
「あー、俺もそろそろ寝たいんだけど馬車に戻り辛れー」
そう思ってキャンプ道具からコットと寝袋を...あ、荷物類全部マイさんのポーチの中だわ...。
この後無茶苦茶焚き火した。
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