第112話 勝つと思うな思えば負けよ

 一通り頼み終わった俺とカリンはネシンさんの家に帰る。


 カン!キィン!ブン!タタタタ!

 おお!やってるやってる!

 もう型終わって手合わせしてるのか?ってマイさんとメリル!?

『マイ殿に手解きをしていたらメリル殿も習いたいと言って来てな。

 一緒に教えてみたらあのとおりだ、天賦の才というのだろうなああいうのは』

 ローズさんが呆れたように言う。

「でもメリルに初めて会った時は牙猪サーベルピッグに怯えるぐらいの子でしたけど?」

 俺が聞くとローズさんは。

『本人が言うには生まれてこの方戦いというものから意図的に遠ざけられていたようだ、ネシン殿の過保護かもしれないな』

 あー、ありうるわー。

 あの人メリルの事溺愛してるからなぁ。

『まぁあの身体能力のマイ殿と渡り合っているのだ、聞けばネシン殿は元騎士、母上はその彼に勝てるほど強い魔法使いだったそうじゃないか?その才覚を受け継いでいるのだろう。

 おいノヤーロ!いつまでも落ち込んでるんじゃない!』

 声をかけられたノヤーロ君はいつぞやのワズマーミさんのように膝を抱えてうずくまっている、負けてしまったのか?

『僕の今までって一体...』

 そう呟くとまた顔を伏せた。

『だから相手は勇者殿と天才だと言っておるだろう?落ち込む暇があったら剣の一つでも振らんか馬鹿者が』

 おお!ローズさん厳しいな、多分今はお姉ちゃんじゃなくて上位の騎士として厳しく言ってるんだろう。

 あ、そうだ。

「ノヤーロ君、柔道覚えてみない?」

 柔道のルーツは柔術、元はと言えば侍の組討ち術だ、ノヤーロ君は身体も大きくないけど男子なので筋力はあるだろうし剣戟の合間に相手の懐に入り込んで投げたり崩したり出来れば自分なりのスタイルが作れるんじゃないかと説明する。

『やってみたいです!お願いします!』


 まずは受身からだな、簡単に後ろ受身と横受身に前回り受身を教えてっと。

 流石騎士様普段から鍛錬しているせいか飲み込みが早い。

 じゃあ軽く投げて実践的な受身、軽く大腰で投げる。

 イイニオイガシマス!

 あれ?今俺が投げたの少年だよね?お姫様じゃ無いよね?

 受身で結構汗ばんでるはずなのになんで部活後みたいな匂いしないのこの子!?

 コロンと転がったまま。

『ふう、やっぱり実際に投げられるとちょっと難しいですね』

 とニッコリ笑う顔がめちゃくちゃ可愛いんですけど男の子だよね?男の娘じゃないよね!?

 妙な視線を感じて視線を向けるとなんか顔を紅潮させて涎垂らしそうになりながら稽古をしているマイさん!貴様!ギャルだけでなく腐の者でもあったのか!?


 そんなこんなで簡単に技を教えたり剣を使うためのアレンジなどくんずほぐれつ(意味深ではない)しながらやっているとまた熱い視線。

 またマイさんか...とみたら目を爛々と輝かせたワズマーミさん!?

『ヨーイチちゃーん!あたしにもそれ教えてー!』

 そう言いながらものすごい勢いで迫ってくる!今にも押し倒されそうだ!

「お、お!お!」

 俺はワズマーミさんに組みつかれながら。

「お断りしまーす!」

 巴投げで後ろに投げ飛ばしたのだった。

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