第110話 嗚呼歌う事は難しい事じゃない
「う、うーん」
明け方、うなされるような声で目が覚めた。
朝目が覚めたら知らない女が横に寝ていた、なんて言うと小説なんかでよく見る話だが見慣れない顔だけどマイさんなのでホッと一息つく。
「マ...マぁ...」
と、母親を呼ぶ様な声、マイさんってお母さんっ子なのかな?
眉間に皺を寄せてうなされているので頭をなぜてあげると落ち着いたのかすぅすぅと寝始めたので俺も再び目を瞑った。
チュン、チュン。
鳥の囀りに目を覚ます、頭を撫ぜながら二度寝したみたいだな...と手元に目をやって。
「ぬわぁ!」
思わず声をあげてしまった。
なぜ横にガングロが寝ている!?
「ん?あ、おはよーヨッチ」
俺の声でマイさんも目覚めたようだ。
「マ、マママママイさん!?いつのまにかメイクを!?」
俺が聞くと。
「あー、さっき夢でなんか魔王?みたいなので出てきたからそれでかなー?」
夢で見たからそれで?
「あのー、マイさん?それってメイクですよね?」
俺が聞くと。
「そーだよ!あーしのこだわり」
と胸を張る。
「それってどうやってメイクしてるんです?」
疑問をぶつけてみる。
「んー?よくわかんない。
何って言うかこの格好になりたい!って念じると一瞬でなれるよ!この格好だと身体も動かしやすいし心も強くなれるんだ」
そう聞いて頭を抱える。
それってヒーローとか魔法少女の【変身】じゃないか!
変身解除の方法がクレンジングのスーパーヒロインってなんなんだよ...ってこの世界の勇者様なんですけどね!
俺は一つため息をついた後。
「まぁこだわりなら良いんですけどね、昨日のスッピンも可愛くて良かったですよ。
昨日はよく眠れました?」
そう聞くと。
「うん...あったかかった」
と、頬を染めながら答えた。
くっ!ガングロのくせに可愛いじゃないか!
さてのんびりしてる暇もない、もう村に来て3日目、アミダラさんの休暇を考えると長居も出来ないので今日も勇者強化合宿だ!
『それでは今日は禁呪を教える事にするぞい』
アイさんの指導が始まる!と思ったら始まったのは...お歌の稽古?
『黄昏よりも〜♪』
「黄昏よりも〜♪」
『いいぞ!その調子じゃ!』
二人は一節ずつ区切って練習してる。
『...レイブ!』
「...レイブ!」
『それで良い!それを忘れるでないぞ!』
どうやら一通り教え終わったらしい。
「上手く教えれたみたいだな、でもなんでぶつ切りで教えてるんだ?通しで練習した方が楽だろ?こんな感じで。
黄昏よりも〜暗き♪」
スパーン!
いきなりアイさんに引っ叩かれた?
「いったー!なんで叩くんすかアイさん!?」
俺は抗議の声を上げる。
『アホかお主は!村を滅ぼしたいのか?』
アイさんは激昂している。
「だって俺魔法使えないんですよ?ちょっと真似しただけじゃないですか?」
俺が言うとアイさんは。
『禁呪は呪文と音階があっておれば勝手に発動するんじゃぞ?お主ジムニーで歌っておったじゃろう!?あの精度で歌われると禁呪が発動して村が消し飛ぶわい!』
え?マジデスカ!?
『それにお主も寿命がごっそり削られるんじゃぞ?迂闊なことをするでない!』
おお...無知でやるもんじゃないな。
『故に禁呪を唱えることを歌うとも言うのじゃ、禁呪とは破滅の歌のことなのじゃ』
なるほど、だから区切って教えていたのか!
そう聞かされて怖いと思ったが疑問が一つ。
「じゃあ時間を使う方の呪文も歌うんですか?」
俺の疑問にアイさんは。
『いや、改良型の禁呪は呪文にアレンジをかけておる、その場合は逆に一定のリズムでアレンジした文言を読み上げるのじゃ、故に詠むという』
なるほど、気をつけないとな。
その後はローズさんとノヤーロ君の剣術指南が始まるようなので俺はフォースさんのに所に向かいあるものを作ってもらう事にする、あ!ついでにイアンさんに可愛いサングラスフレームも作ってもらう事にしよう。
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