第92話 昔アラブの偉いお坊さんが

「美味いな」

 俺は呟いた。

 セリスオススメの食堂兼バーのようなお店、昼時はランチ営業で賑わっている。

 俺が頼んだのはクリームパスタ、あっちで言えばカルボナーラのような感じだろうか?

 まろやかなクリームにベーコンの塩気がベストマッチしている。

 他のみんなも色々なメニューを頼んでいるので小皿にシェアしたりマリアがあーんして来たりと楽しく食事を終えたところ、出て来たのは...コーヒー!

 やった!こっちにもコーヒーあるんだ!

 是非とも仕入れ先を聞かねば!と思っているとテーブルに一人の男性が近づいて来た、服装から見るにここのシェフ兼店長ってところかな?

『皆様本日のお食事は如何でしたか?かのアミダラ商会のご令嬢と騎士様であられるクッコ様がおいでとの事でご挨拶に伺いました、この店のオーナーのキッツと申します』

 キッツさんは恭しく頭を下げる。

『大変美味しゅうございましたわ、以前お伺いした時よりも腕を上げられたのではなくて?』

 マリアが珍しくお嬢様っぽい会話をしている、うーん違和感。

『マリア殿の言う通りです、私も時折利用させてもらっていますがいつもより美味しく感じました』

 ローズさんも同意見のようだ、俺は初めてなので違いがわからないんだけどな。

『それはそれはありがたいお言葉、ですがお見受けするに本日のお食事は皆様とても楽しそうに摂っていらっしゃいましたのでそれが良いスパイスになったのでしょう、もう一つは最近良質なベーコンと不足しがちだった塩が手に入るようになりましてそのせいもあるのでしょう』

 そう言われて気付く、俺は金儲けの為とやった事だったが結果として街の塩事情やこの店の味事情も良くなっているんだな、と。

 俺は嬉しくなりながらも忘れずに聞かなきゃならない事があると思い出す。

「とても美味しかったですよ、それにこのコーヒー、まさかこっちでコーヒーが飲める店があるとは思っていなかったのですがどこで仕入れられているのかお聞きしても構わないですか?」

 と俺が聞くとビックリした感じのキッツさん、ヤベェ通訳の説明忘れてた。

『こっちのおにいちゃ...ヨーイチさんは外国の方で言葉がわからない為私が魔法で通訳しています、カリンと申します、どうぞよろしく』

 おお!カリンナイスフォロー!そして久々にカリンのよそ行きの喋りを聞いた気がする、出だしはお兄ちゃんって言いかけてたけどな。

『おお、そうでしたか。

 コレは珍しい魔法ですね。

 コーヒーですが私が料理の修行で行った南方の知り合いから送って貰っているのですよウチの一番の売りになります。

 流石は外国の方ですね、コーヒーをご存知とは』

 うーん、偽の外国人設定がここでは功を奏したか。

「ええ、コーヒー好きなんですが手持ちの炒り豆が心許ないのでどこかで買えないか探していたところなんです」

 と言う俺にキッツさんは。

『でしたら少しで良ければお譲り致しましょう、豆ということはミルはお持ちのようですので炒り豆でよろしいですか?』

「助かります!おいくらお支払いすればよろしいですか?」

 と聞くと。

『いえいえ、アミダラ商会のご令嬢のお知り合いですからここはサービスで』

 そう言われたけどお礼がしたいしまた分けてもらう事も考えて...。

「ありがとうございます、それではいただいていきますね」

 そう言って店を出た。


 店を出た俺たちだったが色々トラブル多すぎるのと若干疲れたので散策を切り上げアミダラ邸へと向かったのだった。

 なんか普通に着いてくるローズさんと共に...。


 後日談になるが代金の代わりにと塩の小袋を持っていった俺にキッツさんはたいそう喜んでいつでもコーヒー豆を譲りますと言ってくれたのだ、やったぜ!

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