第87話 昨日の夢から逃げ回ってる
『
例によってマリア専用門から街に入る俺たち。
正直マリアの悪癖は鳴りを潜めているし一般門から入っても構わないのだが順番待ちせずに入れるのは魅力的すぎるからな。
メリルが運転してくれるおかげで俺は鍵の開いた門の開け閉めを手伝いやすくて助かる、おじいちゃんに無理はさせられないからね。
『お父様!只今戻りましたわ!』
アミダラ商会の本社、マリアの実家についた俺たちはアミダラさんを訪ねる。
肝心の塩だが到着してすぐに村へ持って帰る分だけ残して執事さんの指示で売却に回された、この商会が大儲けしてるのってあの人のおかげなんじゃね?
『おお!よくぞご無事で!塩の件は既にセバスチャンから報告を受けています、なかなかの取引ができたようで」
いつの間に報告まで!?っていうかあの人セバスチャンって言うんだ?まさにTHE執事だな。
『それで...』
アミダラさんは俺とラビを連れて部屋の隅に行き。
『私はどれだけの謝罪行脚をすればいいのですかね?ヨーイチさんにも謝罪が必要ですか?』
と、聞いてきた。
ん?なんの話だ?と思ったがよくよく考えたらマリアのアレの話だった。
「大丈夫ですよ、俺が見ていた限り男に手を出す事もありませんでしたし一応思いやりと恥についてはお話もしていますし」
するとアミダラさんはフルフルと震えながら。
『あなたが...神か?』
と言った。
その時。
コンコンッ
『失礼致します』
『旦那様、お客様、塩の利益が確定いたしました』
え?今なんと?
俺がキョトンとしていると。
『おお!ご苦労。
ん?どうしましたヨーイチさん、ポカーンとして?』
「いや早すぎません?セバスチャンさんが有能なのは見ててわかりますけどいくらなんでもありえない」
俺がそういうとアミダラさんははっはっはと笑って。
『これでも私はこの街随一の商会の長なんですよ?手に入る予定の商品の交渉ぐらいとっくに済ませてあります。
塩は納品して代金を受け取るだけで良かったのです』
前言撤回、この主人にしてこの執事ありか、凄腕だな。
そして受け取った金を数えると...元の倍は有る。
マリアの見立てでは3倍、その半分を持ってきているので実質1.5倍のはずなんだが...。
『怪訝な顔ですね、この季節この町では塩は本当に貴重品なのでより高く買ってくれるところと交渉したまでですよ、もちろんうちの投資分の金額はそこから引かせていただきますが手数料は多めにお支払いできそうです。』
よっしゃ!村のみんなにいい報告が出来そうだ!
ちなみに俺の取り分は儲けの1割5分、そう聞くと少なく感じるかもしれないが大商会の投資額の15%に当たる額だ、しばらく遊んで暮らせるほどはある。
マリアを助けた時の謝礼金と追加の金貨10枚を合わせればかなりの金額でマリアに聞いたら一般の街の人の年収の約2年分にはなるそうな。
金銭感覚が良くわからないけど向こうで年収300万未満と計算しても500万近い価値があるのか?
残りは村のみんなの投資分だけどこっちも謝礼はもらえるって言ってたので一儲けどころの話じゃないな。
しかももう一往復すれば同じ量の塩を持ってこれるとかウハウハじゃないか!
俺はアミダラさんとがっちり握手して笑いあう。
よくあるラノベなんかだと貴族を助けて億単位の謝礼もらえたりするけどチート無しの小市民の俺にはこれぐらいがリアルな大儲けでちょうどいい。
『お父様!』
そんなことを考えているとマリアがアミダラさんに声をかける。
『
それを聞いたアミダラさんは。
『うっ、くっ...』
と嗚咽を漏らす。
やっぱりトラブルメーカーとはいえ大事な一人娘がおっさんについて行くっていうんだ、父親としては嫌だろうな...最悪マリアとはここでお別れも覚悟しとかなきゃ、勿論セリスも。
おれがそう思っていると。
『うおおおお!マリア!お前が性的なこと以外でそんなにやる気を出してくれるとは!パパは感動した!そしてヨーイチさんに大感謝している!』
アミダラさんが叫んだ。
いやマリアよ...普段どんだけやる気よりヤる気に力入れてたんだ...。
アミダラさんは俺の手を取って。
『どうか!マリアを!宜しく!お願いします!』
と、ブンブンと揺さぶった。
さっきの大儲けの固い握手よりだいぶん激しいんだけど?
こうしてマリアの同行は継続されることとなった、当然セリスもついてくるだろう。
大金を手に入れた俺たちは屋敷で数日お世話になってから村に戻る事にした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます