第78話 We're shouting Oh Yeah Oh Yeah Oh Yeah

「ただいま!」

 そう言って家に入ると俺はアイさんを探す。

『なんじゃ騒々しい、さっきと違って生き生きしとるが解決策を見つけたのか?』

 そう聞かれて。

「ああ、目処がついたけど次の悩みがあるんだ!」

 そう言うとアイさんは。

『なんで悩みが増えとるのに嬉しそうなのじゃ?』

 と、怪訝な顔をしていた。


『なるほどのう、塩を固めるか』

 俺の構想を伝えるとアイさんは頭を捻った。

 計画はこうだ。

 塩釜焼きの手法で空気銃に装填できる弾を作る、圧縮空気で撃ち出す空気銃だからこその発想だ。

 目的は塩を浴びせる事だから弾の形をキープするのは10mもあれば十分、むしろそこでバラけた方が確実に塩を当てることができるはず。

『弾はこれか、小さいのう』

 アイさんは空気銃の正規の弾を摘んで言った。

「それで誰に頼んだら良いかアイさんに相談したかったんですよ」

 窯を持ってる陶器屋さんがいいのかパン屋さんが良いのか判断がつかないのでこの街在住で年の功であるアイさんが頼みの綱だ。

『何を言っておる、この大きさならば家で作れば良いじゃろう?』

 は?ちょっと何言ってるかわかんないですね。

 キョトンとする俺達にアイさんは。

『もしやと思うがお主ら毎日お茶と一緒に出しとるクッキーが手作りと気づいておらんのか?』

 ええー!?マジで?あの高級店レベルのクッキーアイさんの手作りなの!?

『ワシは昔から篭りきりで研究をしておったからな、研究の気晴らしに菓子を作っておったらあのレベルまで行き着いたのじゃ』

 その話を聞いて俺は思った。

 アイさんが小さくなった当時で50歳。

 そんな彼女の手作りスイーツ。

 なんか重いなぁ。

 俺がそんな目で見ているとアイさんは。

『何を哀れみの目で見ておる、別に男に食わせる為に練習したわけじゃ無いぞい。

 研究室から出ずに美味いクッキーが食いたかっただけじゃ』

 それはそれでどうかと思うがあえて口には出すまい。


『出来たぞい』

 そう言ってクッキーを持ってくるアイさん。

 渾身のボケ...ではない。

 焼き上がったクッキー生地には生地を型にした塩釜で出来た弾が多数埋め込まれていた。

 クッキーを割るとポロポロと弾を取り出せる。

『割ったクッキーは捨てるで無いぞ?ちゃんと食えるように作っておるでな』

 そう言われてパクっと一口。

「美味い」

 思わず口をついた。

 塩の弾を埋め込んだおかげか甘みの中に塩気が程よくさながら塩クッキーと言った味わいだ。

 コーヒーか紅茶が欲しくなるところだけど今の本題はそこでは無い。

 俺は家の前の道に出るとみんなに道沿いに3m間隔ぐらいで並んでもらうカリンは通訳として横に居るが。

 相棒1号シモンに塩弾を込めてポンピング、構えて...パンッ!

 弾はまっすぐ飛んで...砕けた。

「どこで砕けたー?」

 俺が聞くと。

『ここですわー!』

 と、マリアが答える。

 4人目って事はおよそ12mか。

 その後何度か試射するが大体10〜12mぐらいで砕けるようだ、砕けた後も4〜5メートル飛ぶみたい。

 その後は全員で楽しくクッキー作り、もちろん塩弾入りだ。


「これであとは水風船を受け取れば準備は完璧だな、レディ、パー『何かお兄ちゃんが悪ふざけしてる気がする』リー」


 よし!これで明後日には出発できるな!待ってろよスライム!

 ...いや待ってない方が助かるんだけどね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る