第79話 雨を避けたロッカールームで

「よいしょっと」

 俺は馬車に塩を積み込んでいた。

 懸念していた塩弾が1日で完成したので翌日はアイさんに量産をお願いして俺は幌馬車の座席を3人用に改造した。

 さらに背もたれの部分に棚を作りキャンプグッズを収納したので積める塩の量もMAXだ。

 それに伴い移動速度は格段に落ちる為行きのようにジムニーで逃げるのは難しくなる、これがあるのでスライム対策は万全にしたかったんだ。

「それでもやっぱ半分だなぁ...」

 無理のない量を積み終わったがそれでも魔法屋の中には全量の半分の塩が残っている。

 これは早いうちに戻って運ばないといけないなと思っていたら。

『ヨーイチ様ー、頂いてきましたわー」

 と、水風船をもらいに行っていたマリアとセリスさんが帰ってきた。

「ありがとうマリア、セリスさん」

 そう言うとセリスさんがずずずいっと寄ってきて。

『ヨーイチ様、わたくしの事もセリスと呼び捨てにしていただけませんか?』

 などと言ってくる。

 やっぱり1人だけさん付けなのは疎外感なのかな?

 などと思っていいですよって言おうとしたら何かをバサリと落とすセリス。

 何の気なしに拾って手渡そうとした瞬間中が見えた。

 文字は読めないが図解が書いてありそれは裸で縛られた女の人の絵だった。


「...セリス?」

 俺が声をかけると顔を真っ赤にしてビクっとするとセリス。

 あー、やっぱこれSMのエロ本なわけね、エロスは世界共通というけど異世界も共通なのかよ。

 まぁこの世界に同じようなが存在していておそらくマリアの世話で服従体質になってる彼女の琴線に触れたんだろうな。

「まあいいや、セリス」

『はい...』

 なんか目を潤ませてこっちを見るセリス、いや今までそんな目してなかっただろ!


「お前のご主人様はマリアだから俺のことご主人様って呼ぶのは禁止な」


 俺がそういうと若干がっかりした風だったがきっと顔を引き締め。

『了解いたしました、ヨーイチ様』

 と言ってきた。

 今君までポンコツになられるとマリアの抑えが効かなくなるかもだからね。

『そういえばヨーイチ様、アカナツ様からお魚と伝言をいただきましたわ』

 お、餞別に魚くれたのか!ラッキー!で?伝言って?

『今の季節だと大丈夫だろうけど私達が出発したら水風船をスライム避けとして売り出す、一般の商人達の動きが例年より早くなるだろうから塩の行商は早めに済ましときな、という事ですわ』

 おお!ありがたい、事前に忠告してくれたんだな。

 残りの塩取りに来るときイアンさんに頼んで包丁作ってもらってくるか。

 マリア達にはもらった風船に20個ほど海水を詰めてきてもらっているので準備は万端、風船自体は100個ほどあるが消費したら手持ちの塩で足すようにしないと場所を取ってしまうからな。


『戸締りも完了じゃ』

 魔法屋の鍵を閉めながらアイさんが言った。

 そして各々座席について...いざセイゴの街へ!


 俺たちの冒険はまだ始まったばかりだ!

 と言おうとしたがなんかフラグっぽいのでやめておく事にする。


「んじゃいくぞー!しゅっぱーつ!」


 俺はカッコよくアクセルを踏み込んだがすぐに緩めて安全運転に切り替える。

 あ、そもそも門番さんに出入りの料金払ったりしなきゃだから止まらなきゃじゃないか。


 こうして締まらない感じが俺達らしいなぁって思いながらソマリンを後にしセイゴの街へ走る俺たち。

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