第76話 あとどれくらい
翌日、相変わらずスライム対策が浮かばず出発しきれずにいる。
「アイさんの魔法でどうにかなりませんか?」
そう聞くとアイさんは。
『ワシの研究のメインは禁呪の研究だったからのう、一撃であたりのスライムを一掃してワシが赤ん坊になるぐらいなら出来るがのう、むしろこの身体で使ってしまえば消滅するかもじゃが』
うわ笑えねぇ。
「それじゃあ流石に頼めませんね」
俺がそういうとアイさんはカラカラと笑い。
『冗談じゃよ、研究職とはいえ初級の攻撃魔法ぐらい使えるわい、じゃが範囲攻撃などは使えんし1匹1匹攻撃しておったらこの子供の身体じゃとあっという間に魔力切れじゃ』
なるほど、緊急時ぐらいしか頼れないのか。
「むう...」
俺は唸りながら気晴らしにカリンとメリルを連れて街を散歩していた。
海でも見て実際に海水に触れれば何か良いアイディアが湧かないか...などと考えながら。
すると嗅ぎ慣れた良い香りが漂ってくる。
「うんこのにおいだぁ!」
俺は某掲示板によく貼られる画像を思い出しながら言う、炊けた飯の匂い嗅いだら言わなきゃならない気がして。
なおカリンの通訳は意味を伝えるのでちゃんと「うん、この匂いだぁ!」って帰ってくるのが面白い。
追いかけてみるとそこは案の定穀物屋だった、早速炊いてみたらしい。
『お、昨日のアンちゃんじゃねぇか!試食用に炊いてみたんだがいちいち料理と一緒に食わせるのも面倒なんだ、何か良いアイデア教えてくれないか?』
アンちゃんって歳でもないがこっちの人から見たら老けたアンちゃんなんだろう、俺は手を洗わせてもらい水と塩を準備してもらう。
水を手につけ飯を取り三角形に握って塩をパラリ。
試食ならこれだろ!THE!塩むすび!
親父さんは一口食べて。
『おお!これなら簡単に試食させられるな!助かるぜアンちゃん!』
米を安く買わせてもらったからな、このくらいお安い御用だ。
そうしていると海の方から子供たちが遊んでいる声が聞こえてきた。
(肉体年齢的に)アイさんと同じくらいの子だな。
と、微笑ましく見ていたら何かを投げ合っている。
1人の子が投げた物がもう1人の子の足元に着弾するとパシャンと弾けた。
ん?まさか?
「カリンすまない、遠いけどあの子たちの声拾えるか?」
そう言ってカリンの手を引いて子供達の方へ。
近づいているうちに1人の子が頭に被弾!そして言った。
『クッソ〜!やられた〜!しょっぱい〜!』
やっぱり水風船!頭には浮かんでいたけどゴムなんてねーよ!と否定していた案がこんなところに!?
俺達は子供達に駆け寄って声をかける。
「おーい!君たちー!」
すると子供達はギョッとした顔でこっちを見る、しまった!メリルに声をかけてもらうべきだったか!?
『なんだ!?頭の中に声がした!気持ち悪い!』
その発言にカリンがビクっとなる。
うわ、子供は遠慮がないな!しかしここで逃すわけにはいかない!
「待ってくれ!俺はこの国の言葉がわからないから彼女に通訳してもらってるんだ!教えてほしい事があるんだ!」
しかし子供達は。
『うわー!気持ち悪い!』
と言った、訳しながらカリンの瞑った目から涙が滲んでくる。
お、このガキども可愛い妹を泣かせたな?
「待て!気持ち悪いとか言わずこのお姉ちゃんの顔をよく見ろ!」
俺の声に逃げ出そうとした子供達が振り向きカリンの顔を見て。
『うわ!このお姉ちゃん可愛い!肌も真っ白だし緑の髪も綺れ...おにいちゃん恥ずかしいよぉ...』
おっといかん、今度はカリンが真っ赤だ。
「そんな綺麗で可愛いお姉ちゃんに気持ち悪いとか言った悪い子は誰だ!?」
というと。
『ごめんなさい』
と謝ってきた。
俺が褒めてるとこはニコニコして恥ずかしがらないのな。
「それで教えてほしいんだけどその投げ合いしてるやつはどこで売ってるんだい?」
そう聞くと。
『アカナツのにいちゃんにもらったんだ!』
アカナツ?誰だろ?
「アカナツさんってどこにいるの?」
と聞くと。
『魚屋のにいちゃんだよ!漁師の!』
と教えてくれた、あの兄ちゃんか!
『ありがとう、これでお菓子でも食べな』
と言ってお礼に小銭を渡すと。
『やったぁ!にいちゃんありがとー!』
と言って駈けて行った。
ふふふ、おやっさんにアンちゃんって言われるより子供ににいちゃんって言われるのは嬉しいな。
一つのヒントを得た俺たちは魚屋に向かって歩き出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます