第67話 ドッキリドッキリドンドン

『お兄ちゃん!お兄ちゃん!うわぁぁぁぁん!』

 そう言ってカリンが泣きついて来た。

『まったく!アンタ心臓が止まって息もしてなかったのよ!心配させんじゃないわよ...』

 カリンが泣きっぱなしなのでラビが通訳してくれる。

 そんな憎まれ口を叩きながら身体をガクガクと震わせているメリル。

『ヨーイチ様、ご無事で何よりです』

 と、セリスは落ち着きを取り戻した様子だった。

 そして...。

「あれ?あんたどこかで...?」

 見知った顔じゃないのにどこか覚えのある女性が...ん?

 パチパチと瞬きをしてよく見ると...。

『ヨーイチ様...良かった...』

 そこに居たのはマリアだった。

 あれ?幻覚でも見たのか?


 どうやら俺は一瞬死んで?いたらしい。

 しかし何故だ?毎年の健康診断でも年相応に数値は悪くなっては来ていたけど再検査や精密検査を受けるような結果は出ていない、もちろん今年もだ。

 そもそも病気で死んで心肺蘇生されたなら今現在体が重いだけで済んでるわけはないしショック死?

 街について安堵しただけで?

 いやいや自分で言うのもなんだけどそんな繊細な精神はしてないと思う。

 何にせよ若干身体は重いけど運転もできそうだしとりあえず宿に向かおう。

 俺はその旨をみんなに伝えて車を出す。


『ふむ、これは魔力切れじゃな』

 宿にチェックインを済ませ荷物を降した俺は街の診療所で診察を受けていた、付き添いはメリルとカリン。

 大勢で押しかけても仕方ないのでマリアとセリスは一足先に塩の買い付けに行ってもらった。

『仕入れ交渉はわたくしにお任せくださいませ!

 私無しでは生きられないと思うくらいの有能さをご覧にいれて見せますわ!』

 そう言って高笑いしながら出て行くマリアとペコリと頭を下げて静々とついて行くセリスの対比が面白かった。

 あ!やべ!マリアに釘を刺すの忘れてた!

 もちろん悪癖...男関係である。

 ...まぁセリスがついて行ってくれてるしそもそも講義自体セリスの要望だから真面目に聞いていてくれたから万が一暴走してもセリスが止めてくれると信じて...信じて...信じたい!

 ちなみにあと1人足りないラビだが。

『じゃー荷物もあるしボクはお留守番してるねー!』

 と言ってさっさとベッドに飛び込んでいた。

 お留守番はしても荷物番をするつもりではないらしい。

 まぁ元々野生動物でカンは鋭いので泥棒が来たらウサギに戻って逃げたあとフロントに駆け込めと言ってあるので大丈夫だろう。

 そもそも病院代と仕入れで現金は残して来てないからな。

 しかし魔力切れか...なんでだ?

 疑問に思った俺は診療所の先生に問いかける。

「魔封石に封じ込めた魔法を使っても魔力って消費される物なのですか?」

 俺が使ったのは試し打ちとスライムで閃光が2発と休憩ごとの穴掘りぐらい、それで魔力切れで死にかけるのならば魔法銃士の夢もここで潰えてしまう。

『いんやぁ、魔封石の魔法はあくまで封じた時にしか魔力は使わんよ、ましてや使用者の魔力を吸うなんぞ...出来ないとは言わんがそんな高度な魔術は王宮魔道士でも難しいじゃろうな』

 そう言われてちょっと安心する。

『そもそも外的要因で生命維持を脅かすほどの魔力は吸えんじゃろ、そんなの魔族の吸精攻撃ぐらいな物じゃ』

 お?新しい単語が出て来たぞ?魔族も居るのか?

「あのー、魔族って?」

 俺が聞くと先生は。

『なんじゃ魔族を知らんのか?魔族は人型をした魔物とか魔物化した人間やエルフとも言われているが要するに人族の敵じゃ』

 ほほう、正に所謂魔族ってことか、しかし魔族で吸精とか聞くとサキュバスが思い浮かぶなぁ...。

 俺が妄想に耽って惚けていると。

『まぁ魔族のことを詳しく知りたいならこの街の魔女ババアに聞くといいぞ、お主の魔力切れの事も相談してみると良い』

 そう言って先生は紹介状を書いてくれた。

 俺たちは診療代金を払ってお礼を言うと教えられた魔法屋にお邪魔するのだった。

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