第48話 更生労働しよう

『どうか!この通りだ!』

 アミダラさんは頭を下げながら懇願している。

「頭をあげてください、わかりましたから!」

 俺は慌てて止める、大商会の会頭に頭を下げさせるほど偉い人間なんかじゃないよ俺。

『ありがとうございます!貴方様の愛であの子を真っ当な人間に更生させてください!』

 いやそんな大役は無理だよ?

「ま、まぁとりあえず一緒に旅する間にコミュニケーションをとってみます。

 それよりあの男を騎士様に突き出さないと!」

 俺は慌てて話題を変えた。

 その時部屋のドアがノックされた。

『旦那様、騎士様がお見えです』

 と、老人の声がした。

 執事だろうか?

『入ってもらえ』

 アミダラさんはさっきまでの泣き出しそうな声とは正反対の堂々とした声で返事をした、これがこの人の普通なんだろう。

『人攫いを捕まえたとの一報を受けて参上しました、騎士のローズ・クッコと申します』

 入って来たのは凛々しい女騎士だった、20代前半ぐらいだろうか?カリンやメリルちゃんが可愛いならこの人は美人のカテゴリだな。

『ローズ殿か、よろしく頼む。

 うちのマリアと友人のセレスが攫われてな、このお方が助け出してくれたのだよ。

 男は表の荷馬車に縛ってある』

 そう言って俺を紹介してくれる。

「毛利洋一です、この子はカリン。

 私はこの国の言葉がわからない為彼女に通訳してもらっています」

 そう言って手を差し出すとローズさんは握手をしながら。

『ローズです、勇敢な方なのですね、よろしくお願いします』

 そう言ってカリンとも握手していた。

 アミダラさんを交えて話し合ったところ、男は捕縛され、馬と幌馬車は捕まえた俺のもののなるだろうとのこと、しかし手続きが必要と言われたがそこは大商会、すでに執事さんが書類から何から準備しておいてくれてローズさんと一緒に騎士詰め所まで行って済ませてくれるそうだ。

 ついでに商会名義で俺の身分保証書も提出して登録してくれるそうだ、マジで助かる。

 ローズさんの帰りと執事さんのお出かけを見送った俺はふと思い出してアミダラさんに声をかける。

「そういえば街で売れるかなって持って来ているものがあるんですよ、見てもらえます?」

 そう言ってサーベルピッグのベーコンとホットサンドメーカーを取り出す。

『ほう、ベーコンですか。

 それとこの鋳物は何に使うものですかな?』

 おっといかん、これだけじゃ何かわからないな。

 俺は食パンの残りと食べる用のベーコンを取り出しシングルバーナーでホットサンドを作る。

『うむ、これはいい!挟んで焼くだけの手軽さなのに美味い!』

 気に入ってくれたようだ。

『ベーコンもいい塩加減ですな!ふんだんに塩を使ってある』

「でしょう?これを作るときに塩を目一杯使ったらネシンさんって人に勿体ないって言われまして、それで塩の運搬を思いついたんですよ」

 それを聞いたアミダラさんは驚いた顔で。

『ネシン殿とお知り合いなのですか!?』

 と聞いて来た。

「はい、あの馬の世話をしているメリルちゃんのお父さんですよ」

 そう言うとアミダラさんは。

『ネシンさんは昔の...私がまだ親父の商会の若旦那なんて呼ばれていた頃の友人なんですよ...』

 と遠い目をして言った。

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