第47話 奇跡の価値は
「ようやく見えて来たな」
メリルちゃんの乗る馬に合わせたのであれから二日、俺達一行はようやくセイゴの街が見えるところまでやって来た。
交通の要所ということで石造りの立派な外壁に囲まれている。
ここ二日間は特に獣や魔獣に襲われることもなく男も含めて全員健康状態も悪くはない。
そういえば途中で助けた二人のうち若干吊り目の金髪ロングお嬢様(巨乳18歳)がマリア・アミダラ、銀髪ショート町娘(17歳)がセレスという名前だと聞いた。
この世界では苗字持ちは貴族か大商人など社会的地位が無いと名乗れないらしいのでマリアの家は結構な商人らしい。
セレスは使用人というわけでは無いが父親がアミダラ商会で働いてる関係で従者のような振舞いをしているがあくまで二人の関係は友人で対等なんだとか。
攫われるほどなので当然二人とも美少女だ。
やがて門の前に到着した俺達は街に入るための審査の列に並ぶ事なく横付けしてジムニーから降りる。
マリアさんが言うには商会用の出入り口があるので自分がいれば待たなくていいとの事だった。
しかし不思議な街だな、一般用の出入り口は騎士?だろうか、若い男が審査しているのだが商会用の出入り口は枯れたイメージの俺より2〜30は年上の老いた騎士しか居なかった。
『
マリアさんがそう言うと老騎士が門を開けようと手をかけるがどうにも重そうだ。
俺はカリンの通訳で話しかける。
「申し訳ありません、お手伝いしても大丈夫でしょうか?」
嬉しそうに許可を出す老騎士、一緒に押すと門が開きジムニーと馬車を中に入れる。
門扉を戻しながら、なんでこんな老人にこんな過酷な仕事を?一般入り口と分担すればいいのに、などと考えた。
無事街へ入れた俺達は一路アミダラ商会へ向かう、男を騎士に突き出そうかと思ったが何せ身分的には俺も身分証明のない不審者、マリアからまずはうちに来てくださいと言われれば断る理由はない。
売れる恩は売って損はないだろう。
「でっけえな」
俺は思わず呟いた。
石造りながら3階建の大きな屋敷、そこがマリアの家だった。
来る途中の街並みがほぼ2階建だった事を考えたら相当な屋敷なんだろう。
...
「ただいま帰りましたわ!」
「おかえりなさいませ、お嬢様」
私の声を聞き使用人達が声をかけてくる。
「お父様を呼んでくださる?大事なお客様をお連れしましたの」
...
しばらくするとお父様が玄関にやって来ました。
「おお、マリア!無事帰ったのか」
お父様は金袋を持って私を出迎えてくれましたわ。
いくら商売道具とはいえ娘を出迎えるのに些か不粋ではありません事?
「会って欲しい男性が居るのです、お呼びしても宜しくて?」
私がそう言うとお父様はコックリ頷いた、金袋を握りしめながら。
...
「こんにちは、貴方がアミダラさんですか?」
俺はニッコリと笑いかける。
マリアさんが言うには外国人で(異世界人だけど)身分証明がない俺が手っ取り早く手に入れるならアミダラ商会の紹介状が良いだろうとの事だった。
それさえあれば街の出入りも塩の仕入れも問題なく出来るだろうと。
どうやって話を切り出そうかと考えていると。
『これで...なんとか無かったことにしてくれまいか?』
と、袋を渡された、中を見ると数枚の金貨と沢山の銀貨が入っている。
「え?何ですこれ?」
助けた礼としてなら納得する金額だがまだそう言う話もしていない。
『わかっている、わかっているんだ。
うちのマリアは美人だしスタイルも良いが女から無理やり精根尽きるまでなど辛かったよな?どうかこの金で無かったことにしてほしいって...え!?お兄ちゃんマリアさんといつの間にそんな事を!?』
いやいやいや俺はそんな事してないぞー。
というかなんだこのアミダラさんの手慣れた感じは!?
「いやいや、俺はマリアさんとそういう事なんかしてませんから」
俺は身の潔白を宣言する。
『そんなバカな!?うちのマリアのキャッチフレーズは出会って3分で××だぞ!?そのせいで商会用の警備騎士は枯れた老人しか派遣してもらえないというのに!』
おい父親、何だそのエッチなビデオのタイトルみたいなキャッチフレーズは?
門のところのお爺ちゃんはそんな理由で重労働させられてたのか...。
しかしこの2日間一緒にいたが別に襲われるような素振りは無かったんだがなぁ...。
【あたしが抑えてんのよ!感覚リンクしてんのに易々とやられてたまるもんですか!】
またなんか遠くの方で魔法の声がしたような気がする、なんだろう?旅の疲れかな?
確かに顔を赤くしてはぁはぁしてることも多かったがこんなおっさんには流石に手を出そうとしなかったって事かな?ちょっと凹むなぁ...。
【何言ってんのよ!あんたあの子のドストライクで隙あらば××を狙われてたのよ!】
まぁ誤解されているのも宜しくないという事で俺はアミダラさんに状況を説明する。
『なるほど...そうでしたか、マリアを助けていただいて本当にありがとうございます。
あ、その金袋はそのままお納め下さい、助けていただいたお礼と言うことで』
そう言われれば遠慮する事もないのでありがたくいただく。
塩の買い付けの話をするとアミダラさんの目の色が変わった。
『ほほう、そんな便利な乗り物をお持ちという事ですか...いいですね、私も一つかませていただけませんか?』
流石は大商人、機を見て敏なりか。
『紹介状はもちろん資金も援助致します。
男の使っていた幌馬車と馬も騎士様に言えば報酬としていただけると思いますがそうでなければ私が買い取ってプレゼント致しましょう、貴方が改造した荷馬車に幌も付けさせます』
至れり尽くせりで若干怖くなって来たな、何か企んでる?
『いえいえ!この街で塩は貴重品ですし貴方の作ったサスペンション?も素晴らしい!塩はこの地方だけかもしれませんがあの荷馬車は世界中で売れるでしょう!是非とも量産の際は我が商会で売り出したいのです!』
なるほどね、WIN-WINの関係ってやつか。
『更に金銭管理と事務仕事のためにマリアを同行させましょう!この子は聡明でなんでもそつなくこなせます!...あの悪癖さえなければ...あの悪癖さえなければ!!!』
いや、流石に大商会の一人娘を連れ歩くのは気がひけるな、というか苦労してるんだなパパン。
「流石にお嬢さんまでつけていただくわけに...」
『お願いします!娘と同行して無事だったのは貴方様だけなのです!これはもう奇跡!ここは私を助けると思って!ね!金貨10枚足させていただきますから!』
いやどんだけ必死なんだよアミダラさん!
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