第37話 運転手は運転がお仕事
冒険者への最短の道が早々に断たれて困った俺はもう一つの道、塩の運搬を仕事にできないか相談してみた。
燃料が尽きるまでの期間限定だが海の街から塩を買い付け街で高値で売る、さらに村には安値で卸すという作戦だ。
『そいつは良い、だがお前異世界から来たなら身分を証明する物がないだろう?はっはっは!そんな落ち込んだ顔すんなよ、俺に良い考えがある』
ネシンさんはそう言うとメリルちゃんを呼び寄せる。
『うちのお姫様に任せろ、どうせ街で馬を買う予定だったんだ。その資金と村に卸す塩の代金を先払いしてもらうからそれで目一杯塩を仕入れて来い!メリルは街での取引も出来るしうちの報酬は街で塩を売った資金で予定よりワンランク上の馬を買ってくれればそれでいい』
サーベルピッグに殺されたジークはかなり良い馬だったらしく今回買う馬はそれより落ちるものを仕方なく買うつもりだったらしい。
「流石元騎士様ですね、その案乗らせていただきます!」
儲け話に嬉しくなった俺たちは乾杯して酒を飲む。
フォースさんとイアンさん、ワズマーミさんも出資するから儲けの折半を寄越せと言ってきたので更にみんなとも乾杯、ダメな大人と比喩していたが夜更には本当にダメな大人が転がる事態となっていた。
翌朝、二日酔いに苦しみながら起きた俺は乾燥が終わったベーコンを自家製燻製機に吊るしチップで燻す。
選んだチップは桜、この世界に桜があるかどうかはまだわからないが近場に無いっぽいので「THE異世界の風味」に出来ないかな?との考えだ。
隙間にラレションの笹身も吊っていく、これはクレイジーソルトを揉み込んだだけの簡易燻製だ、出資者のみんなへのサービスとして村に寄贈しようと思う。
どうせあのメンツだったら痛む前に食べ切ってしまうだろうと思うしな。
正直塩を売買するならベーコンは身内で食べてしまっても良い気がするが商材は多くて困らないから気合を入れて作る。
夜には燻製が終わり荷造りをして連夜の宴会。
明日には街へ向けて出発だ、運転があるので深酒はしないように気をつけながらとりあえずだが村の最後の夜は更けていった...。
翌朝、目を覚まし身支度した俺は塩の購入資金を受け取り助手席にカリン、後部座席にメリルちゃんを乗せ村を旅立った。
ネシンさんは自分でメリルちゃんを馬の購入や塩の売買に送り出したくせに泣きながら見送っている。
事故がないようにきっちり運転しなきゃな、今のところ俺が出来るのは運転手だけなんだから。
そう思いながら森の中の道を軽快に走っていると...。
またしても白い塊が道に飛び出してくる、というよりヨタヨタと道の真ん中に出てくる。
また出たな
しかし今までと違い可愛いというよりなんというか...老いぼれてる?
そんな感じの
『お兄ちゃん大変!あの子私に語りかけてる!』
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