第35話 さぁ、お前の罪を...数えろ!
俺の初狩猟(実際はサーベルピッグを轢いてはいるけど)と順調にいけば明後日出発、更に
『やっぱりブージェネは美味いな!』
ネシンさんは切り分けた肉を口に放り込みながら言う。
調理が終わったブージェネは臭みもなくジューシーで程よく脂が乗っていて何もつけなくても濃厚な旨味が強い。
何より驚いたのはその調理法だ。
首を落としハラワタを出したブージェネは中に香草やスパイス、葉物野菜を詰めた後...焚き火に放り込まれた、羽根も毟らずに。
どうやらこの鳥羽根に強い火の耐性があるらしく、いくら火にかざしても燃えないのだそうだ。
燃えないとはいえ長時間火にかければ内部の温度はじっくり上がるわけで開いた腹を上にして焚き火に放り込むだけで肉汁は皮の中に溜まりジューシーに煮あげたようなホクホクの鳥肉が出来上がると言うことだ。
焼き上がりの目安は皮から羽根が抜け始める頃ということで火から上げ軽く毟ると面白いように羽根が抜ける。
腹に溜まっている肉汁は中に詰めた野菜の水分と骨ごと煮込んだ鳥がらダシ、スパイスや香草と相まって極上のスープになっているので鍋に全て出す。
その後各部位に切り分けてスープと肉を楽しむのである。
切り分けた後に鍋に肉を入れて作るシチューも絶品なんだそうだ。
ラレションのほうは鳥と言うより鶏っぽい感じなので各部位に切り分けた後下味をつけて唐揚げにしてみた。
してみたと言ったが使ったのは全体の3割ぐらいだろうか?
首をを外してもサイズは80センチほどあり飛ぶ鳥では無いため圧倒的な量の肉が取れるのだ。
ブツ切りにした胸肉ともも肉をビニールに入れてニンニクチューブと生姜チューブを適量。
小麦粉と少しの片栗粉を加えて揉む。
折角なのでカリンに揉み込んでおいてって頼んだら。
『わぁ!お肉の感触なのに手が汚れない!』
って言いながら揉み揉みしてたな。
今日もうちの妹は可愛いです。
下ごしらえした唐揚げをたっぷりの油へダイブ!
と行きたいところをグッと堪えて多めの油でフライパンで揚げ焼きにしていく。
なんせ物資に限りがあるので節約しなければ。
ベーコンの塩で学んだ異世界の常識だ、村の油を大量に使うのもどうかと思うので自前のオリーブオイルを使う。
オリーブオイルは揚げ油としてもなかなかに優秀なのだ。
カラっとあがったそばから新聞紙の上に載せたバーベキュー網にあげて余分な油を切り皿に出していく。
『カリっとジューシーで美味いな!』
イアンさんも気に入ってくれたようだ。
『料理もできるのね、素敵だわぁ』
ワズマーミさんが舌舐めずりしてるのは唇についた油を拭ってるだけだと思いたい!切に!
『こいつはラガーに合うな!』
と俺の出した缶ビールを飲みながら言うフォースさん。
『ヨーイチ、代わるからお酒飲んだら?』
ずいぶん熱心に作り方を見ていたメリルちゃんがそう言ってくれた。
「ありがと、準備した分を揚げたらここを捻って火を消してね」
気遣いに感謝しながらシングルバーナーの使い方を教える。
美味い食い物は人を幸せにさせるものだ。
決してリアクション芸(味○様みたいに)が出るような衝撃では無いけどね、むしろブージェネの調理法でこっちが驚かされた。
地球の料理で異世界人を感動させる...ラノベでよくある展開だけど俺は料理人じゃ無いから感動まではいらないな、美味いの一言で十分だ。
なんというかソロキャンでお隣さんと料理のお裾分けし合った時の「美味い」ぐらいでいいんだよな。
ただ唐揚げにタルタルソースをかけた時はメリルちゃんに作り方を詳しく聞かれた。
チキン南蛮を作る時以外でも唐揚げタルタルは絶対的正義なのである。
『この美味しさはもう罪ね!』
『本当!』
そう言いながらタルタル唐揚げを味わう義姉妹見て俺は心がほっこりするのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます