第33話 技の1号力の2号

『しかしもったいないな、魔封石があればもっと威力が上げられるのに』

 ワズマーミさんはそう言った。

「魔封石ってなんですか?」

 と問う俺。

『魔封石って言うのは魔石を加工した魔法を封じ込めるための石よ、大きさによって込められる魔法の強さは変わるんだけどほら、ヨーイチちゃんが考えてくれた魔法があるでしょ?あれなら細ければ細いほど威力があるから豆粒大でも書き込めるのよ」

 いや、だから俺にだけ口調変えるのはやめてもらえませんかね?とは思うのだがいまいち口には出せない。

『魔法は書き込む時に発動条件を決められるから魔封石で矢尻を作ってぶつかった時に発動させれば矢が当たった対象を切り裂くことができるわ』

 おお!すごい!それならどんな敵でも一撃じゃないか!

『ただねぇ...』

 ワズマーミさんは浮かない顔で呟く。

『この前井戸の修理した時に村にある魔封石は全部使っちゃったのよ、村には魔封石の加工職人も居ないしねぇ』

 意外だな?と俺は思った。

 エルフの血を引く魔法村と言ってもいいこの村に魔封石の職人がいないとは。

『だってみんな石を使わなくても最低限の魔法は自分で使えちゃうもの、必要があるのは井戸の壺みたいな魔道具を作る時だけなのよ』

 確かに、心底納得させられた。

『そうだ!ヨーイチちゃん!街に行ったら魔封石を仕入れて一度村に帰ってらっしゃいな、ヨーイチちゃんのためならアタシが入・れ・て・あ・げ・る❤︎』

 魔法だよな!?入れるのは魔法だよな!?おい!

 心底不安になったが。

「ありがとうございます、その方向で善処します」

 と曖昧ながら返事をしておいた。

 そんなこんなで村を出る準備が整ってきたので俺はベーコンの塩抜きを始める。

 今日塩を抜いて明日燻せば明後日の朝には出発できるだろう。

 塩が貴重と言うことなので塩抜きした水も天日干ししたら少しは塩を回収出来はしないだろうか?

 試しにやってみよう。

 塩抜きの水を替えるたびに煮詰めて水分を減らし塩分濃度が上がった水を広めの器に入れて天日干しするとそこそこの量の塩の結晶が取り出せた。

 ふんだんに使ったからなぁ...。

 俺は回収した塩を村に寄付した、色々お世話になったからな。

 海の近くに住処を構えて塩田でもやってみたら面白いかもしれない、ガソリンが続くうちは村に持ってこれるしどこかに化石燃料の代わりのものもあるかも知れない。

 それとも岩塩でも探してみるか?うん、なんか生きていくだけの金を稼ぐ術はなんとかなりそうだ。

 カリンににも給金をあげなきゃいけないしな、しっかり稼がないと可愛い顔で『おちんぎんほしいのぉ』とか言われたらきっと俺のなにかが崩壊するからな、うん。

 塩抜きが粗方終わり乾燥待ちの間俺は村に近い森へ入ってみることにした。

 相棒2号ヘイズの練習と実益を兼ねて狩りをしようと考えたのだ。

 村の周りには小さな獣や鳥も居るとのことなので相棒1号シモンも持っていく。

 1号2号そろい踏みとか昭和ライダー世代にはたまらない展開だ!

 ...アホなこと言ってないで狩りしよう。

 しかしまさかの狩り篭りするつもりが異世界で狩りをすることになろうとは夢にも思わなかったな。

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