第31話 最大16.5cm

 所謂板バネサスペンション、リーフ式サスペンションとはトラックや昔の四輪駆動車に用いられていたサスペンションである。

 数枚の金属製にバネを重ねてそこに車軸を受けさせて車体を路面の凹凸から保護するものである。

 いや誰に説明してるんだよ俺は。

 というわけで作っちゃいました!板バネ荷馬車。

 過去に乗っていたジムニーや仕事で使っていたトラックのサスペンションを見様見真似で作ってみたがいい感じに動いて荷台の揺れが軽減されていた。

『よぉ!やってるな』

 テストとして荷馬車を引っ張っていた俺を見ながらやって来たのはフォースさんだった。

「お陰様で良いものが出来上がりましたよ」

 俺がそう答えるとフォースさんはニヤっと笑い。

『じゃあコレで完成だな』

 そう言って謎の部品を取り出してきた。

 木製のバンパー?


 不思議な顔をする俺を置き去りにして謎部品をサクサクと取り付けていくフォースさん。

 

「あの?すみませんフォースさん?」

『なんだ?』

「一体何をしていらっしゃるんですか?」

『何ってネシンに頼まれた部品を取り付けているんだが?』

 なんという事でしょう?無骨だったジムニーのバンパーに柔らかな雰囲気の木製のバンパーが固定されています。

 更に此処から匠の技が光ります、追加バンパーにバネサス荷馬車を近づけると...カチっという音と共に荷馬車が固定されたではないですか、匠の技が光ります。

 こうして、洋一のジムニーは瞬く間に荷馬車仕様へと変化したのでした。

「っておかしいだろ!?」

 抗議の声を上げる俺、そこにメリルちゃんが当たり前のようにやって来て...左側の後部座席の荷物をバンバン荷馬車に載せていく。

 あれ?おかしいな?所有者不在で何か当たり前のように事態が進展していくぞ?

「あの〜、メリルさん?一体何をしていらっしゃるんでしぃうか?」

 俺の問いに答えたのはメリルちゃんではなく丁度やって来たネシンさんだった。

『街にジークの代わりの馬を買いに行かなきゃならないからな』

 そうこうしてるうちにメリルちゃんの手によって片側後部座席が起こされ荷馬車付きジムニーは見事3人乗りへとトランスフォームしたのでした。

 いやいやいや、何ドヤ顔で「ふんす!」ってやり切った感出してるかなメリルちゃんは。

「ま、まぁ事情もわかりますし街まで乗せていくのも断ったりしませんけど...」

 浮かない顔で切りだす俺にネシンさんは不思議そうな顔をする。

「せめて事前に一言頂けたら驚かずに済んだんですが」

『ん?メリルから聞いてないのか?』

 聞いてません。

『おいメリル、ヨーイチに連れてってと言ってないのか?』

『言ってないわ』

 堂々と答えるメリルちゃん。

「え?なんで?」

 そう問う俺に。

『ちょっとしたサプライズよ』

 と答えるメリルちゃん。

 いやいやいやこの子何言ってるの?大事な話は伝えなきゃダメでしょうが!報告・連絡・相談の報連相は社会人の基本でしょう?

 まぁメリルちゃんまだ少女だけど荷馬車で街まで納品や買い物まで出来るんだからある種社会人みたいなもんだろ。

『それに...』

 メリルちゃんはネシンさんから離れ俺たちの方へ来ると小さな声で。

『あんな凶悪なもの見せつけたヨーイチに妹みたいに思ってるピカリンを任せるんだから本当に大丈夫かどうか見極めさせてもらうわ、お父さんの居ないところでね』

 と囁く、通訳してるカリンは顔が真っ赤だ。

 いやなんでそうなる!?確かにカリン抱きしめながら夢精はしたけれども手は出してないぞ?凶悪なもの見せつけたというけど着替えを勝手に見られただけだ。

「元気になったらあんなもんじゃねーよ」

 俺は思わずボソッと呟いてハッとした。

 メリルちゃんは驚いた顔をしてるしカリンは真っ赤なままだ、そこは通訳しなくてもいいんだ妹よ...。

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