第23話 贖罪の新鮮な食材

 やっとのことで誤解が解け、俺は村の入り口にジムニーを廻す。

 報告をしたらすぐに街に向かうつもりだったがネシンさんがしばらくゆっくりして行けと言うのだ。

 別に急ぐ旅でも無いしメリルとカリンが久々に会ったんだからと言われれば俺も無理に出発しようとは思わない。

『改めて謝罪させてくれ、メリルの命を救ってくれたのとジーク...うちの馬を村まで連れて来てくれたのに誤解したとはいえフォークを投げて殺そうとした』

 ネシンさんは深々と頭を下げる。

「頭を上げてください、誰でも娘さんが危ないと思ったら必死になりますよ。

 俺も昨日会ったばかりですがカリンに危害を加える奴がいたら容赦しませんし実際カリンを襲おうとしたゴブリンには倒されるより辛い死に方になった事でしょう」

 そう言ってゴブリンとアルミラージの顛末を話す。

『なるほど、機転が効くんだな。

 それでカリンを雇ったって言っていたがお前たちどこまでの関け...ってお義父とうさん何聞いてるの!』

 もちろん会話はカリンの通訳で話しているが通訳に慣れて来たカリンは発言者の言葉を追いかけながら話していたので途中で気づき怒りだす。

『でも頑なに災いが降りかかるって人から離れていたのに?ってお義父とうさんには関係ないでしょ!』

「まってカリン、ちゃんと説明するから通訳して。

 お義父とうさん、俺は異世界から来ました、勇者でもなんでもないいですから勝手に言葉が解るようになったりもしないしなんか凄い力とかもありません。

 だからカリンの通訳がないとこの先野垂れ死ぬ自信があると彼女にも言っています、ただ異世界人故にエルフの言い伝えの災いも気になりませんしそもそも彼女がいなければ死ぬので災いなんて言ってられません」

 ネシンさんはコクコクと頷いた。

「そしてカリンは見えていないけれど俺はいい歳したおっさんです、もう44歳になります」

 ネシンさんは目を見開いて言った。

『驚いたな同い年かよ!30代前半ぐらいと思っていたよ!ってお兄ちゃんお義父とうさんと同い年なの!?』

 ネシンさん同い年かよ、そしてちょいちょい参加してくるなこの子は、そこも可愛いけど。

「まぁ肉体労働をしているおかげで歳よりは若く見られることが多いですけど俺の人種自体が若く見られやすいんですよ」

 ネシンさんもメリルちゃんも見た目はヨーロッパ系ぽいので日本人を見たらそうなるだろうと思う。

「それでご心配の件ですがカリンの事は妹のように思っています、実年齢で言えば娘みたいな感じでしょうが俺には子供がいないので娘と言っても実感が湧かないので妹、と。

 なので手を出そうなどと考えていません」

 ここでとか言うと笑えるけど笑えないからやめておこう。

『なるほど、それでカリンがお兄ちゃんって呼んでる訳か』

「はい、カリンからそう呼んで良いかと聞かれましたので良いと言いました、俺も悪い気はしませんし」

『わかった、とりあえずうちに泊まってくれ、酒もあるし肉もたくさんあるんだ。』

 不本意とはどう言う事だろうと考えていると

『それからサーベルピッグだがフォークは内臓を傷つけてなかったので捌いておいたよ、血抜きが完璧だったからクセも少ないと思う』

 おお!無事だったか俺の獲物!というか命の恩人じゃなく恩豚だな、倒したの俺だけど。

 そこまでの大物では無いけれど一頭分の肉の量は結構な物がある、半分はこの家にあげて半分頂こう。

 村には氷の魔法を使える人がいるらしく氷漬けでの保存は出来るそうなのだがクーラーボックスはあっても一度解凍すると痛むのでもらった肉を小分けにして冷凍してもらう。

 バラ肉の部分はブロックのまま保存用にベーコンにする事にした!後に後悔することも知らずに...。

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