第22話 魔法少女ぴかりん

木々の間を抜けようやく村が見えてきた。

「今ちょうど角の家の裏あたりだけど大丈夫か?」

村に顔を出したくない俺はここで待つことにしてカリン一人で呼んできてもらうように頼んだ。

『大丈夫!お兄ちゃんはここで待っててね!』

カリンはそう言って木伝いに村に向かう、目が不自由とは言え幼い頃から住んでいた村なのでスイスイと歩いているのを見守っていると...。

『ピメリー!』

「ピカリン!」

カリンの魔法と声が呼び合った。

ピメリはわかるけどピカリンってなんぞや?

と思っていると目の前に大きな影!

あの時牧草用のフォークを投げてきた男が目の前に立ち塞がっていた!

「ま、まぁ待て」

通じないのがわかっていながらつい言ってしまう。

「うぉぉぉぉぉ!」

男は声を上げて掴みかかってきた!

最悪だ!でもいきなり殴りかかって来られなくて助かる。

俺は右手で男の左襟を掴むと左手は引き手が取れないので右手首を掴む。

良い形で組めた、これなら振り回されずに済む。

欧米人のような体格をした男だがこちらを振り回そうとする度に腕を引いたり襟を下げる事で動きの初動を殺していく。

どれだけ力があっても初動さえ殺せば十分な力は発揮できまい。

男は右手がうまく使えない為か左手で殴ってこようとするが右肘をちょっと張ってやれば左手で殴る動きは取りようがない。

完璧にコントロールしているが蹴りまで使われると厄介なので相手の動きに合わせて左手を引き襟を上に突き上げる!!

隅落とし!別名空気投げである。

男の体が宙を舞う!が、ゴブリンと違って人間を傷付ける気は無い為浮いた勢いを利用して少しコントロールし土の上に落とす、襟もちゃんと引いているので頭も打たせなかった。

あまりにドタバタしていたので心配になったのだろう、カリンがやってきて言った。

『お義父とうさん!』

そして嫌な予感はしていたがやはり一緒について来ていたのはメリルちゃんだった。

「ゴブリンヨーイチ!」

ちょっと待て言葉はわからないが今のは聞き取れたぞ?

ヨーイチってなんだよ!

カリンの義父...ネシンさん?の動きを止めた為その隙にカリンが話を聞いてくれる。

どうやら俺が断り無しにシートベルトを着けた上にメリルちゃんが引っ張ってロックがかかったせいで拘束して拉致されると思ったとの事。

そのまま村に行ったのも更なる獲物を求めてだと思われていた事。

なるほど、それでヨーイチね。

名前を覚えてくれていたのは嬉しいがとんでもない覚え方をされていたもんである。

そしてその過程でカリンの通訳能力の万能さに驚かされた。

カリンがやっている事は発言者の言ったことをそのまま真似するだけなのだがカリンの魔法の声はお互いに理解できる為おかしな意訳や伝え間違いが無いかどうか本人が聞き取れるのだ。

ネシンさんからは誤解で殺そうとしたことを謝罪され(気持ちはわかるけど)メリルちゃんからは改めてサーベルピッグから助けたことを感謝された。

そして謎のピメリという名前だが頭のというのは子供同士や子供を呼ぶ時につけるもので日本語でいう中国語で言うみたいなものらしい、ピメリルだと語呂が悪いのでピメリ、つまりメリちゃんでピカリンはカリンちゃんなんだと。

「んじゃぁカリンは今から魔法少女ぴかりんな」

と冗談で言ってみたが

『お兄ちゃんが呼んでくれるならカリンはどっちでも良いよ』

と言われてその可愛さにまた俺は撃沈した。

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