第10話 擦れ違いの激情

「ふう、やっと積み終わった」

 助手席のドアを閉めながら俺は一息つく。

 荷馬車に放り出すのと綺麗に積みなおすのでは労力が段違いだ。

 しかしメリルちゃんものすごい勢いで駆けていったけど余程家族に会いたかったんだろうか?助けてあげられて本当に良かった。

 とりあえず戻ってきたらここがどこの国か教えてもらおう、聞いたことのない言語を叫んでいたが地図か何かを見せてもらえばさすがにわかるだろう。

 そういえばあの化け物イノシシ血抜きはしたけど内臓を出していないので臭みとか出ていないだろうか?そもそも安全に食えるのかどうかも聞いてみないとな。

 そう思い荷馬車から化け物イノシシを引っ張り出し振り向くとメリルちゃんと一緒に中年の男性が家から出てきていた。

 丁度いい、食用になるか、捌くための川が近くにあるかなど聞きたいので化け物イノシシを持ち上げて声をかける。

「おーい!」

 ザシュッ!

 瞬間、化け物イノシシに何かが突き刺さり勢いで後ろに落としてしまう、恐る恐る見てみると…牧草用のフォークだった!

 今化け物イノシシ持ち上げてなかったら俺死んでたよね!?

「あわわわわ!」

 情けない声を出しながら振り向くとメリルちゃんの横にいた男性が全力ダッシュで駆けてくる、その眼にはコロス!と書いてある!

 俺はジムニーの運転席に飛び込むとアクセル全開急ハンドル!下が砂の為パワードリフト状態で村から飛び出す!

「なんで人助けして殺されそうにならなきゃいけないんだよ~!」

 漫画やアニメだと顔のところ以外がブラックバックになって『to be continued』と出そうな感じで俺は逃げ出した。

 どこか遠くで「デーデデッ!デッデーデーデー♪」とTwitterやTikTokで流れるあの音とともに笑い声が聞こえた気がした。

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