第4話 祝杯と睡眠…そして
出来上がった鳥ハムを一斗缶に放り込み炭火にチップ皿を乗せた焚火台の上に置く。
この一斗缶は自作した燻製機になっている、簡単に作れて長持ちするので過去何度も燻製を作ってきた愛着のあるギアである。
最初は一斗缶に穴をあけてビスを刺しただけの簡易な作りだったがその都度不満点を解消していき今ではそこらのホームセンターで売っているものより使い勝手がいい。
電源キャンプ場などでは電熱器任せでラクチンなのだがこうやって炭火で燻すのも趣があって良いものだ、今回熱燻をしたかったのでスモークウッドは使わない。
軽自動車の四駆であるジムニーにこれだけの機材や食料等を積んでこれるのもルーフキャリアのおかげだな…と思った、あとソロだから助手席も使えるしな…とも。
夜の森は静かだ、しかし風の音や生き物の立てる音、水場の音などで全くの無音ではない、俺は焚火を見つめながら感傷に浸っていた。
『もういいから!あたしの人生にこれ以上かかわらないで!』
それが彼女と交わした最後の言葉だった。
俺と彼女の相性は悪くなかったはずだ、結婚するまでは。
いざ結婚して長時間一緒に生活をしていると色々な部分でタイミングがかぶったり外れたり、よくあることだと思う、しかし何故だろうかお互いが気を遣えば使うほどすれ違いや衝突は増えていき、どちらが悪いというわけでもなく最後はあのセリフで別れたのだ…似たもの夫婦とはよく言われていたが似すぎて同族嫌悪レベルまで行ってしまっていたのだから笑えない。
あー!だめだだめだ!せっかくの山籠もりなのに暗いこと考えてどうする!?俺は入山時に山の神様に振る舞うために使った日本酒の残りを手に取る。
「初の獲物に乾杯!」
俺は一人狩猟記録をつけながら酒を飲み、夜は更に濃さを増していく…。
「ん…、もう朝か…。」
テント越しに射す光に目が覚める。
どうやら昨日は飲んだまま寝てしまったらしい、飲み始める前に変なことを考えていたからだろうか?
シュラフから這い出してふと気づく、明るすぎないか?と。
ベースキャンプに選んだのは山間の森の中、開けているとはいえテント全体に朝日が射すはずがない、急ぎテントから飛び出した俺の目に入ったのは…、愛車のジムニー、テーブルセットと燻製機が乗った焚火台、それと見渡す限りに広がる大平原だった…。
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