救命英雄伝

第19話 奇病！蠱毒融合症(生体研究)

　マツリソウ:人間の皆さんこんばんは、ナレーター兼メイドのマツリソウにございます。蠱毒融合症の原因が虹蛇という事が判明し、治療の糸口を見つけるべく生体研究が始まりました。それにより、ある合併症の危険性が明らかとなるのです。

　魔界時間19:53 帝王都サタンヘイルダム学術特区　ビーストヘッジ工科大学生物学部

　巨大な研究用培養カプセルに移される虹蛇

　研究員:虹蛇の存在は知ってはいましたが、こうして本物を見るのは初めてですよ。

　迅乃助:今んとこ生物学会の発表で確認されとるんはその存在だけで、詳細はまだ明らかになっとらん。一説では神獣ではないかというモンも居るが、この生体研究で全てが明らかになるのではと考えとる。

　瑠空:1人の人間の命がかかった大事な調査です、慎重にいきましょう。

　研究員達:はいっ！

　迅乃助:今回はリヴァイアス国際医科大学との共同研究やさかい、足並み揃えていくで〜♪

　研究開始より1週間後

　瑠空:魔界宇宙の次元工学は凄いですよね〜、外部での1週間はDコーティング内だと１1年と2ヶ月経ってますから。　　

　マツリソウ:Dコーティングとはディメンジョンコーティングの略称で、急ぎの長期研究や建設等に用いられる次元空間加工の事です。

　迅乃助:さ〜て、各々の研究結果を報告してくれ。

　研究員A:先ずは私から。虹蛇は他生物の肉体・霊体の両方に融合し栄養を吸収する形で捕食する様です。その際、獲物の抵抗力を無くすためある毒を肉体と霊体の両方に流し込みます。

　瑠空:毒？

　研究員A:全身を麻痺させてしまうものなのですが、この毒には霊体の方にとんでもない副作用が加わります。

　瑠空:その副作用とは？

　研究員A:霊媒性悪性腫瘍（れいばいせいあくせいしゅよう）、霊体版の癌細胞（がんさいぼう）を発生・活性化させる物質が含まれているのです。

　瑠空:霊媒性悪性腫瘍、またの名を霊障癌（れいしょうがん）。

　研究員B:更に厄介な事に、虹蛇の中には肉体と霊体の遺伝子に絡みつく形で融合する個体もいるようです。今回の患者は遺伝子に融合する個体と見て間違いないかと。

　研究員C:我々が危惧（きぐ）するのはその霊障癌が霊体の遺伝子、スピリットゲノムに発生する事です。

　宙に浮いた液晶モニターに映す研究員C

　研究員C:スピリットゲノムは肉体のDNAと直接繋がっているので、肉体の方に相当な影響を及（およ）ぼします。最新の魔界宇宙医療研究では、人間が妖怪・魔物・怪異化する全ての原因はこのスピリットゲノムが霊障癌に冒された事による変異という事が分かっております。

　研究員A:今回の研究でその事が判明しました。

　瑠空:今回の治療法は霊障癌摘出手術（れいしょうがんてきしゅつしゅじゅつ）に加えて肉体と霊体に融合している虹蛇の細胞摘出手術かぁ。

　迅乃助:霊障癌摘出手術はええけど、その後の細胞摘出手術の方は同時摘出になるから難しいで〜。何方かが早過ぎても遅過ぎてもアカンねんからな。

　瑠空:空間摘出手術のスペシャリストで尚且つ、全く同じタイミングの神業の出来る医師かぁ。

　研究員B:虹蛇を調べているついでに進行を大幅に遅らせる薬を開発したので、投与して効果がある間に医師を見付けた方が良いかと。

　瑠空:そうですね。