第10話 石化白内障(眼底検査)

 マツリソウ:人間の皆さんこんばんは、ナレーター兼メイドのマツリソウでございます。さて、石化白内障の治療をする事になった瑠空総合病院。診察の次は眼底検査を行うのですが、人の眼とは違い無数の蛇の眼を検査するのですから眼科医は一苦労でございます。


 魔界時時間18:17 瑠空総合病院 眼科エリア検査室


 静佳:よ、宜しくお願いします!


 医師:緑川さんの眼底検査ですが、検査の対象となるのは顔の眼ではなく頭の蛇の眼を検査します。メデューサ族の様な多頭多眼種たとうたがんしゅの種族は主に眼球の大きい顔の眼が主体となるので、その眼球の筋肉が発達しており、頭の蛇の眼は元々視覚に対応していないのは説明しましたね?


 静佳:はい。


 レントゲンの画像を見せる眼科医


 医師:蛇の頭と本体である脳とこうして神経が繋がっているのですが、ご覧の通り視覚を司る神経は顔の眼球の神経より発達はしていません。そのため視覚目的で酷使すると負荷がかかり白内障の原因となるのですが、石化白内障の場合は石化水晶体に大きな負荷がかかる事で発症します。


 画面を切り替える眼科医


 医師:そこで今日は頭の蛇の眼を一つ一つ眼底検査致します。眼底検査はご存知ですか?


 静佳:いえ、知りません。


 医師:眼底検査とは、白内障治療の過程で眼の奥を見る事です。術後どのくらい視力が出るか、そして白内障以外に悪い病気がないかを調べます。この検査の日は目が眩しくなるので視覚を必要とする作業は出来ません。緑川さんの場合はお仕事をお休みしてもらいます。


 静佳:病欠で会社には届出を出して上司の許可は取ってあります。


 医師:それを聞いて安心しました。なお、今回は当院の院長肝入りの治療です。新しい治療と新薬開発のため院長もこの治療に加わります。


 静佳:は、はい!


 看護師:先生、院長先生がお見えになられました。それと、検査の準備の方も整いました。


 医師:分かった。では緑川さん、そろそろ始めましょう。


 静佳:はい。


 10人体制で頭の蛇を持つ看護師


 瑠空:私、メデューサとは何回か戦った事あるけど、傷付ける立場から治療する立場になるとは思ってもみなかった。


 秘書:複雑・・・ですか?


 瑠空:ううん、今は傷付けたり殺したりするより治療して元気になってもらうって感じの方が嬉しい♪


 秘書:そうですか♪


 瑠空:先ずは散瞳さんどうするんだよね?  


 秘書:はい。


 マツリソウ:散瞳とは、眼底検査の時にお薬を点眼して検査し易いように瞳を開く事でございます。


 看護師:それではお薬点眼しますね〜。


 蛇の眼一つ一つに点眼していき検査する眼科医


 医師:ふむふむ、やはり石化白内障で間違いない様だ。他の眼病は無しっと、眼軸長測定がんじくちょうそくていの準備を。 


 看護師:はい。


 マツリソウ:眼軸長測定とは人間の場合、手術の時に濁った水晶体を取り除いてしまうため、その代わりに眼内レンズを入れます。その眼内レンズの度を決める大切な検査、それが眼の奥行きを計る眼軸長測定です。しかしながら、メデューサ族は濁った水晶体を取り除くだけの手術になるので術後に後遺症にならないかを検査するものでございます。


 蛇の眼一つ一つ測定する眼科医


 医師:はい、検査は以上です。お疲れ様でした、手術の日取りが決まりましたらお知らせします。その1週間前から10日前には緑川さんとご家族の方へ説明会を開きますのでその日は予定を入れないようお願いします。


 静佳:分かりました。


 家に帰る静佳


『院長室』


 瑠空:メデューサ族の頭にある蛇の眼って普通の蛇の眼とは少し違うんだね。


 医師:ええ、元々蛇は熱感知で獲物を獲る動物ですからね。ましてやメデューサ族の頭にある蛇の眼には石化水晶体で覆われているので普通の蛇より視力が弱いのです。そのため、殆ど石化能力のためだけの眼と言っても過言ではありません。


 瑠空:一般的な石化白内障の治療法は?


 医師:現在魔界で行われているメデューサ族の石化白内障治療は、白く濁った石化水晶体を取り除くだけのものとなっております。というのも、現代の魔界医学では石化水晶体の再生または人工石化水晶体の開発の研究は進んでいないのです。


 瑠空:研究開発自体はしてるんでしょう?


 医師:はい。ですが、石化水晶体は謎が多く生態サンプルがあっても分からない事だらけでして。


 瑠空:研究を始めてから今現在までのデータと生態サンプルを借りられるかな?


 医師:研究データも生態サンプルもリバイアス国際医科大学にあるので、許可さえ出れば借りられるかと。


 瑠空:直ぐに手配してくれる?眼底検査の過程で思い付いた仮説があるんだけど、研究データと生態サンプルが私の仮説と合致すればもしかしたら再生も人工石化水晶体の開発も成功するかもしれないの。


 秘書:分かりました、直ちに手配致します。 


 瑠空:それと、仮説の検証が終わり次第もう一度来てもらうように緑川さんに連絡お願い出来る?私自身で確認したい事があるの。


 秘書:承知致しました。


 瑠空:それと、バジリスク族の水晶体の研究データもお願い。


 秘書:バジリスク族のですか?


 瑠空:もしかしたらメデューサ族とバジリスク族にはがあるかもしれないから。


 秘書:承知致しました、そちらも手配しておきます。


 次回へ続く・・・











  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る