第2話 急患を救命せよ!(前編)

 満:は〜い、今回もナレーター代行をやってますよ〜。賞を取ったご褒美にリバイアス学長から新築の大病院丸ごとプレゼントされた瑠空なんだけど、世の中そんなに甘くないというか。開業1日目にして瑠空総合病院るあそうごうびょういんにぶち当たった問題が病院開業の基本中の基本的なものだったのよ。


 魔界時間13:00 帝王都サタンヘイルダム医療特区 瑠空総合病院院長室


 瑠空:豊富な最新鋭医療機器と薬のストックに1000万人の受け入れ可能な病室の数、あらゆる手術にも対応出来る手術室。恵まれ過ぎるほどの大病院・・・だけど。


 満:まさか、こんながあったなんて。


 秘書:そう、この病院が抱えるそれは・・・


 瑠空:お医者さんが1人もいなーーーーい‼︎


 満:看護師・医療秘書・事務員総勢500万人居るけどねぇ、肝心の医師が居ないなんて。


 秘書:一応ネットでも医師を募集しておりますが・・・


 満:リバイアス国際医科大学学長肝入りで建設された最新鋭の新築大病院って言っても、何の実績もなければ来ようとは思わないわよねぇ。


 秘書:いえ、です。


 満:へ?逆?


 秘書:人間で、しかもバアル医学平和賞受賞者で更にリバイアス国際医科大学学長肝入りで建設された病院という謳い文句に医師が殺到して募集定員をオーバーしてなかなか決まらないんです。


 満:そっちか〜。


 秘書:開業1日目で医師が1人も居ないのは問題なので取り敢えず1人採用した方が夕方には来る事になってるのですが、どうも次元航宙機が遅れている様でして。


 院長室に血相を変えて入る看護師


 満:ちょっと、今大事な話ししてるところなんだけど。


 看護師:それどころじゃないですよ!当院の敷地内に次元転移反応が出て中から重体の男性がゲートアウトして来ました‼︎


 満:なんですって⁉︎それで、患者の容体は?


 看護師:打撲の跡が25箇所、心臓付近に銃弾を受けた痕跡があり意識不明の重体!尚、患者の体内から微量のカオス反応があるため隔離治療病棟へ緊急搬送してあります‼︎


 満:カ、カオス反応⁉︎


 秘書:感染型精神汚染物質かんせんがたせいしんおせんぶっしつカオスは人間には全く効きませんが、天界の天族や我々魔界の魔族にとっては極めて危険な物質。飛沫や接触とあらゆる形で感染してしまいますからね。


 満:カオスの進行率が50%超えたら初期症状で発狂して暴れだすけど、カオス進行率は?


 看護師:それが計測の結果、62%でして。


 満:62⁉︎それって意識失っても肉体が暴れるレベルじゃない!


 瑠空:とにかくその人調べてみる!この中で濃厚接触しても平気で身体を調べられるのは私だけだから。あと秘書さん!


 秘書:はい。


 瑠空:その医師の人の種族は?


 秘書:ダークエルフ族です。


 瑠空:ならが使える!


 秘書:院長が試験的に開発した体内でカオスを瞬時に消滅させる抗カオス剤ですね?


 満:アンタ、いつの間にそんなの作ってたのよ。


 瑠空:まだ試作段階だけど、エルフ族やダークエルフ族と相性が良いの。


 秘書:畏まりました、到着次第投与させてそちらに向かわせます。


 瑠空:お願いね!


 隔離治療病棟へ空間転移する瑠空


『隔離治療病棟 集中治療室』


 男性の身体をスキャンする瑠空


 瑠空:あれ?カオス反応はちゃんとあるのに


 モニターに映る満と秘書


 満:どう?見付かった?


 瑠空:それが反応はちゃんとあるんだけど、どの臓器にも見当たらないの。


 満:細胞は?骨や皮膚は?


 瑠空:それもスキャンしてみたけど、やっぱり無いの。


 秘書:・・・院長、は調べてみましたか?


 瑠空:そうか!そもそもカオスの発症率は純血種族より天族と魔族といったハーフの方がかなり高い。特に神族と魔王のハーフの方が凄く高い!


 遺伝子情報を調べる瑠空


 瑠空:女神の遺伝子49.5%そして魔王の遺伝子は48.5%だわ・・・ん?


 満:どうしたの?何かあったの?


 瑠空:この遺伝子の配列、ここんトコだけ何か違う。  


 最大限まで拡大させる瑠空


 瑠空:そ、そんなあり得ない!するなんて‼︎


 満:見付けたの!


 瑠空:うん、あった。DNAあった。しかも生命の根幹に関わる細胞核に。


 満:な、なんですって⁉︎


 瑠空:対カオス抗生ワクチンを何回か投与した痕跡があるから多分進行率62%でも症状が出なかったんだ。それに、カオス発生の原因は神族と魔王のハーフによる光魔融合性症候群こうまゆうごうせいしょうこうぐんね。このアレルギー反応である発疹がその証拠。


 満:つまりはどゆ事?


 ???:光魔融合性症候群の末期症状はカオスの発生。本来なら皮膚や臓器といった肉眼で確認出来る癌細胞がんさいぼうによく似た腫瘍しゅようが現れる筈なんだけど、対カオス抗生ワクチンの影響で逃げ場を失い神族でも魔王でもないDNA細胞の中間にして心臓部でもある細胞核に発生したという事よ。


 秘書:お待ちしておりました


 後編へ続く・・・












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