第2話


 目を覚ますと白い天井が目に入った。

 知ってる天井だ。

 僕が天井を見つめていると、隣から甲高い声が聞こえてくる。


「お目覚めになられたのですね! 申しわけございません! まだ本調子ではなかったのにご無理をさせてしまいました……」


 ああ、そうだ。確かドドド姫の話の途中で意識を失ったんだ。


 僕は体を起こし、ドドド姫の方へ向き直る。

 まだ少し頭は痛んだが大分マシになっている。


「いえ、僕の理解力のなさが原因だと思うので。それに今はさっきよりも調子もいいですし、もう大丈夫です」


 本当にさっきよりも調子がいい。寝ている間に回復したのだろうか。そういえばどれだけ寝ていたんだろう。


「あの、僕どれだけ寝てました?」


「ほんの一時間程度ですよ。元気になられたのなら良かったです」


 ドドド姫はほっと一息ため息をつき、そう言った。


 一時間した寝ていないのに、本当に調子がいい。体が軽い。一時間でこんなに変わるものだろうか。

 まあ調子はいいに越したことはない。


 あ、そういえば話の続きで意識が落ちたんだったな。


「えーと、ドドド姫。良ければ先程の話の続きを聞かせて頂いても?」


 確か、僕が五百年眠っていて、この国で起こされた。それで、僕になにか手伝ってほしい、そんな話だったはずだ。


 ドドド姫は僕の言葉を聞いてパァァっと顔を明るくさせた。


「はい! ぜひ! えと、確からら様にお力添えをお願いしたい、というところでしたよね。あ! せっかくですし、城内を案内しながら説明致します! お立ちになれますか?」


 ドドド姫はそう言って手を差し出してきた。僕はその手を掴んで立つ。


「あ! その前にお召し物をお着替えになられますか? 随分と質素なものですし……」


 言われてみれば僕の着ている真っ白の服は少し質素な感じがするかもしれない。

 今回はお言葉に甘えようかな。


「じゃあお言葉に甘えて。せっかくですし着替えることにします」


「分かりました。えーと、あれ? ああ、では新しいお召し物を用意させます」


 ドドド姫は一瞬よく分からない動作をしたが、用意してくれるらしいので気にしないでおこう。






 着替えた後、僕はドドド姫に連れられ城内を見て回る。

 この城はなかなか、いやかなり広かった。いや、城なのだから広いのは当たり前なのだが、それにしても広すぎだと思う。

 これだけで一つの街と言っても過言ではない広さだった。


 どうやらこの城は大きく六つに別れているらしい。真ん中に大きく一つ。周りに五つの離宮といった感じに。

 今はその離宮うちの一つ、比較的大きな場所を見て回っている。


 ドドド姫は楽しそうに案内する。

「こちらがらら様のお部屋になります! この宮のなかでは一番広い部屋になりますが、ご不満がありましたらなんなりとお申し付けください」

 

「うわ……! ひろっ……!」


 そう言って紹介された部屋は、本当に広かった。

 絶対一人用の部屋じゃないだろ。確実に五人分くらいある。


「それで、この宮は使用人達が暮らしている宮とも近いので利便性にも優れていると思います! えと、では次にこの下をご案内しますね!」


 ドドド姫は俺の反応を待たず、次の説明に移ろうとする。どうやら俺に紹介したい訳じゃなく、ただ誰かにものを教えたいだけらしかった。


 僕は大人しくドドド姫について行った。




 そうして連れられたのは地下。


 今、僕の前にはやけに近未来的な機械がたくさんある。

 今までは中世くらいの造りだったのにここだけ異彩を放っている。


「…………」


 突然現れた近未来的なものに僕が言葉を失っていると、ドドド姫が明るい声で言う。


「ふふん。いかがでしょう! 我が国の科学力は世界一と言っても過言ではないのですよ!」


 そう言って胸を張る姿はとてもかわいらしかった。


 どうやらドドド姫は基本子どもっぽいらしい。少し自分勝手なところがあったり、自分のものを自慢したがったり。その明るい笑顔も相まって余計にそう見える。


 そんなドドド姫はまたも僕の言葉を待たず、どんどん奥の方へ歩いて行った、

 僕はそれに大人しくついて行く。


 一番奥まで行ったところで止まり、振り返る。

 そして、あるものを指さし、ゆっくりと言う。


「こちらにご覧下さい。……これがらら様の眠っていたカプセルです」


 そう言って指さしたのは、棺桶のような形をした透明な箱だった。

 その箱はかなり崩れていて、言ってしまえばゴミにも見える。

 僕が眠っていた、ということは五百年前に作られたものなのだろう。

 それならばこれだけ崩れていても納得……いや、これだけしか崩れていていないことに驚くべきだろうか。


 ──ふと気になった。ここは何の研究をしているのだろう?

 聞いてみた方が早いか。と、僕は口を開く。


「……どうして、これを取ってあるんですか? というか、ここでは何の研究をしているんですか?」


 僕が聞くとドドド姫は真剣な顔持ちになり、言葉を発する。


「はい。では、ここで何の研究をしているのか、私たちがらら様にご協力をお願いしたい理由、その他諸々、お話させていただきます」


 その真剣な様に僕は息を呑んだ。

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