第8話 幼馴染

はい!

ログアウトして現実世界に戻ってきました!


ちょっと疲れたけど、すっごい楽しかったなぁ。


ゲームを始めてから数時間しか経ってないけど、ハマっちゃった。

さすが、発売前から話題になってただけあるね!


運に全て振ってるけど、まだあんまり実感無いなぁ。

あっ、でも変なことは起きなかったし、現実よりは運が良かったと思う!


今の時間は…3時ぐらいかぁ〜。

あれ?思ってたより時間経っていないじゃん。

かなり楽しくて時間忘れてやってたのに、なんでだろ?


・・・・・・あっ!


そう言えば、『Seek Freedom』には体感時間が長くなる?って言う感じの特殊な技術が使われていて、仕事してる人や忙しい人でも少しでも長く楽しめる様にしてある。

って聞いたことがあったわ。


だから思ってるより時間が経って無かったんだね。

今日は普段しない早起きして、眠たいし明日は学校あるから、丁度いいけどね。


それにしても、今日1日で色々起きた気がするなぁ

朝4時に起きて、準備してGAOで並んで…

ゲーム買って出来るだけ直ぐに始めたけど…。


ジークに出会って驚いて、森に行って驚いて、さらに奥に行って驚いて、帰る時も驚いて・・・


あれ?私、あの世界で驚いていただけだったんじゃない!?


いい事なのかな?良くない事なのかな?

ちょっと幸運さん!

ちゃんと仕事してよーー!!!


そう感慨に耽けること数分・・・

ようやく落ち着きを取り戻す。


さぁ、明日も学校あるし、準備しないとね。


そうして準備を始める。


「げっ、数学の宿題あるじゃん…。」

「はぁ。まぁすぐに終わる問題だしやるか。」


宿題も終わらせて学校の準備も終わらせる。


「んーー、やっと終わった〜!」

「今は…4時過ぎぐらいかぁ。ちょっと早いけどお風呂入ろ〜。」


そして湯船にお湯を張りのんびりと風呂で過ごす。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


風呂から出た頃には18時を回っていた。


「ふぅー。気持ちよかった〜」

「やっぱり風呂上がりにはコーヒー牛乳だよね!」


そして大好きな氷印のコーヒー牛乳をグイッと飲む。


「冬華、もうすぐご飯できるから座ってなさい。」


「はーい。」



ご飯を食べ、テレビを見てのんびり過ごしているうちに21時を回っていた。


ちょっと早いけど、今日は眠たいし、もう寝よう。


そうして部屋に戻りベッドに入り込む。


「ちゃんと7時にアラームをセットして…。」

「おやすみなさい。」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ジリジリジリジリジリジリジリジリジリジリ


「んっ、んー、うるさいなぁ…」


ベッドから手を出してガサガサと目覚まし時計を探す。

ばしっと目覚まし時計を止めようとするが上手いこと止められず、手が当たったと思ったら目覚まし時計が顔に落ちてきた。

おでこに直撃である。


「いたっ!!」

「もう!最悪!いったいなー」


朝の目覚めは最悪である。

そして目が覚めたトウカは洗面所に行き、顔を洗い、歯を磨き、身だしなみを整える。

そして朝食を食べ終わった頃には8時頃になっていた。


「あっ、そろそろ時間だし行かないと。」


急いで準備をして学校へ行く。


「行ってきまーす!」


電線の下は通らないようにして…

少し早足で学校に行く。


道が交差する所で横から犬の散歩をしてる人が出てきた。

その瞬間、犬が急に吠える。

トウカはびっくりして少し後ずさると…道端の溝に片足を突っ込んでしまう。


「いてっ。」


「ごめんなさい、大丈夫ですか?」

そう心配かけられるが

「大丈夫です!よくある事なので…ぼそっ」


冬華にとってはよくある事だ。

あっ、いけない急がないと!


そして再び学校へ向かう。


学校へ着いたのは8時25分ぐらい。あと5分ほど遅ければ遅刻にされていた。


「ギリギリセーフ!」


「もう冬華。いつもギリギリなんだから、もう少し早く家出なよって言ってるでしょ。」



そうやってお母さんみたいな事を言ってるのは私の近所に住んでいて、幼稚園の頃からの幼なじみである朝倉 紗希だ。

紗希は冬華とは違って身長は170cmと高く足はすらっと長い。出る所は出て引っ込むところは引っ込んでいて、まるでモデルのような女性なら誰もが羨む理想的な体型である。

偶にスカウトされる事もあるらしい。

こんなに整った見た目をしているが、海外の血は少しも入っておらず、黒髪黒目の生粋の日本人である。

冬華と並んで歩くと親子に間違われる事もあり、その時冬華はかなり怒るようだ。



「間に合ってるんだからいいじゃん〜」


「時々間に合ってないから言ってるんでしょ。」


「はーい。」


いつも同じような会話をしてるふたりである。


「ところで冬華。『Seek Freedom』は買った?」


そう、今日は学校のそこかしこで『Seek Freedom』の話題で持ち切りだ。

クラスメイトの大半はその話をしている。


「買ったよ!5時間並んでギリギリだった!」


「やっぱり?買えた人は大体それぐらい並んでたらしいよ。まぁ私はベータやってたから必要ないんだけどね。どや」


「むー、ずるいよ!!」


「はははははー」


そんな事を話していると、朝のホームルームが始まる。

そして出席確認など色々行い授業が始まる。


そして昼休み・・・・・・


冬華と紗希は『Seek Freedom』の話題で盛り上がっている。


「はぁ!?住人とパーティー組んだって!?」


突然大声を上げた紗希にびっくりして何事だろうと周りの注目を浴びる。


「っと、急に大声出してごめんなさい。」


そしてヒソヒソと話しだす。


「それで、住人とパーティーを組んだってどういうこと?」


「えっ、そのままの事なんだけど、ジークって名前なんだけど、肉を焼いてる屋台のおっちゃんだよ。あそこの肉めっちゃ美味しいよね!」


「あぁ、あの肉ね。美味しいよね。ってそうじゃなくて!なんで組めたって話だよ!」


「えっ?なんかおかしいの?外行きたいって言ったら俺も用事あるから一緒に行くか?って聞かれてパーティー組んだんだけど・・・」


冬華は突然の事であたふたしながら答える。

紗希は何かを考えてる顔をしている。


「それって誰かに伝えたりした?」


「してないよ?」


「そう、よかった。その話し、他の人には言っちゃダメだからね。」

「プレイヤーの中にはNPCNPC言って住人を蔑む人もいるし、そういう人たちが知ると無理やりパーティーに入れようとして対立が出来る可能性あるから。」


「へ?そうなの?じゃあ誰にも言わないでおくね!」


「うんうん。それで、今はレベルとかどんな感じ?うちはね、10まで上げたよ。すごいでしょ?」


「10?それってすごいの?私は12あるんだけど。」


「へ?それほんと?昨日の時点で大体の人は高くてもレベル7とかなんだよ?」


「まじ?」


そう、本来なら『Seek Freedom』の世界ではレベル差により与えるダメージがカットされるため、格上とはほとんど戦えないのである。そのため、レベルの低い敵を選ぶ必要もあるため効率よく狩ることは出来ないのだ。

さらに、冬華の場合はレベル差5以上の敵ばかりだったため、ほとんどの敵に経験値ボーナスが50%ついていたのだ。


紗希の場合はプレイヤースキルも高いため多少のレベル差は問題なく狩ることが出来ていた為、自慢げにレベルを言っていたのである。


「とりあえず、もうすぐ昼放課終わるし、帰ってから一緒に『Seek Freedom』の世界で話そう。」


「了解!」

冬華はびしっと敬礼の真似をする。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


学校が終わり、冬華と紗希は帰り道ほとんど同じのため、一緒に帰る。


「帰ったらフレンドコードを送るから、メニューのフレンドから追加しておいてね。そしたら私も追加するから。」


「わかったー!」


「冬華は色々分かってないこと多そうだから、ゲームの世界でステータスについてとか、色々と話そうね。」

「じゃあ私はこっちだから、また後でね。」


「はーい!またね〜」



そして2人は別れてそれぞれの家へまっすぐ帰る。



「ただいまー!」


冬華はまず手洗いうがいをしてから部屋へ向かう。

そして部屋に着くと荷物を机に乗せて、次の日の準備だけをする。


「今日は宿題ないから沢山出来そうだね!」

「よーし、明日の準備も終わったし早速始めますか!」


ピロリロリン

ケータイが鳴る


メールが来たようだ。

中身を確認してみると、紗希からフレンドコードが届いていた。


「あっ、忘れてた、危ない危ない。」


数字の数は6文字だけだし、これなら覚えていけるね。


じゃあ今日もあの世界へ行きますか!




『Dive In』

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