病室にて
「・・・それで皆無事に戻れたんだな?」
能力課の治療室にて包帯が巻かれまくっている体を起こして、ベットに腰かけながらユッカに問いかける。右手は勿論の事、顔などの皮膚は溶岩のすぐそばにいたことにより、火傷があったらしく顔も包帯がまかれている。また足も重度の火傷が起きているそうで全身を水をかけて冷やした後に着ている服ごとまとめて包帯にまかれた。戻ってすぐ能力課に行ったのだが、まずは診察が終わって明日治療が始まるので、病室に行くことになるのだが右手以外がジンジンと痛むので寝るに寝れずベットに横になっていると、ユッカが見舞いにやってきて持ってきたリンゴの皮を剥き始めたので、こうして話し相手になってけれている。
けれど、そのリンゴも三個目になるからそろそろ帰ってほしいと思う。ここは私の部屋じゃないから、ゲームも何もないからこれ以上いられると気まずくて、とてもつらい。
「そうっスよ。俺が気絶させた人を向こうから持ってきて、首に刃物突きつけながら脅したら皆あっさりと攻撃を辞めてくれたっス。それで俺が脅している間に他が帰って、最後に俺が転移する直前に人質を離して逃げたって訳っス」
ベットの右側に置かれている椅子に座って、三個目のリンゴの皮をナイフでむきながらユッカが答える。
「そうか」
少しの間目を伏せる。
「本当は自分がやりたかったっスか?」
私の顔を見ずに、リンゴの皮を剥きながらユッカが問う
「・・・そうだな、そう言う気持ちも少なからずある。私がやるべきことだと考えている」
汚いことや皆があまり進んでやりたくなさそうなことは私がやるべき仕事だと思っているし、それが正しいことだとも思っている。皆からはあまり理解されないけどな。
「そうっスか・・・少しくらい分けてきても、隊長を嫌いにはならないっスよ」
「ん」
短く答えて左手で髪を弄る。分かってはいるが、それでもやりたいと思うと自分でやりたくなる
「・・・よしリンゴ出来たっスよ」
ユッカが皿の上に切ったリンゴに爪楊枝を全てに刺してから皿にのせて渡してくれたので、左手で受け取りながら礼を言う
「ありがとう」
一旦ベットの上に置いて、横に収納されている机を出して設置した後に再び皿持って机の上に置く。そのまま皿の上に載っているカットされたリンゴを一つ取って頬張る。正直リンゴは好きだが三つ連続で出されると違うものが食べたくなる
「・・・それで、右手はどうっスか?」
そう言ってユッカは包帯でぐるぐる巻きになっている右手を見る。話を聞けば右手がほぼ炭みたいな状態だったそうで、思わずキレかけていたが、思ったより平気そうだった。焼けすぎて感覚がほとんど残っていない。怒鳴り散らしたり叱ったりはもうしないが、それでも心配を表すために病室で会ったときに一発軽く小突かれた。
「完治はするそうだが、流石に一気に治せないから、段階を踏んで少しずつ治していく予定だ。具体的には7日程かかるそうだ」
ここの医療魔法は四肢の欠損は治せないが、指程度の欠損なら直せる。いや、本当は四肢の欠損も頑張れば治すことも出来るが、治せるからと無茶な行動や無謀な作戦が増えたことがあり、今は意図的に技術を封印しているから、よほどの理由が無い限り治そうとはしない。私の場合は右手全部が炭になったのではなく少し壊死しかけているけど残っている部分をから少しずつ再生させていく予定だ。今は少し疲労が大きすぎるので、少し体力を回復してから治療を開始する予定だ。痛み止めと点滴を打って一晩明かしている最中だ。
「その間753部隊は休止っスか?」
机の上に載せておいたリンゴの皿に手を伸ばして三個一気にとりながら聞いてくる。
「そうだな。私が完治するまで、少し長い休暇を楽しんでもらうとしよう」
私もリンゴを一つ取って食べる。シャクシャクと咀嚼してゆっくりと飲み込んだ後に、先ほどから浮かんでいた疑問をユッカに聞く。
「そう言えばナギ達は来ていないのか?」
ここにいるのはユッカだけで他の皆はいない
「みんな先に部屋に戻って休んでいるっスよ。流石に、けが人相手に大勢で行くのは良くないっスから、皆は明日から来るっスよ」
「そうだな」
納得して、また一つリンゴを頬張る。考えれば仕事が終わったばかりなのだから、疲れていて当然か。と言うか疲れているはずなのにわざわざ来たユッカの方がおかしいんだがな。
「というか、ユッカはいつまでいるんだ?」
こっちに戻って来てからずっと部屋で駄弁っているが、もう知りたいことは知れたし時間もいいころだし部屋に戻っても構わないと思っているんだが?
「そうっスね・・・もうそろそろ戻ることにするっスね」
そう言って皿の上の最後のリンゴを取って頬張り立ち上がる。
・・・結局私3個しか食べてないからそっちの方が食べてないか?
「そうか」
「また明日来るッスから、明日になったら他の皆も来ると思うっスから」
「わかった。明日からの休暇の件の説明は任せたぞ」
そう言うと面倒くさそうに頭を掻いてから二ッと笑ってサムズアップする
「まかせるっスよ。隊長はのんびり療養してくださいッス」
そういって部屋を出て行く。遠くなる足跡を聞きながら皿を片付けてベットに寝そべる
「・・・心配だなぁ」
前のユッカは結構しっかりしていたが、今のユッカは適当に済まそうとしているからな。・・・とりあえずナギにも連絡しておこう
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