作戦会議と役割決め

「つまり、あのドラゴンはアイビー達が担当していた転移者だと?」


隊長の連絡を聞いて、全員が一旦集まっています。


隊長の服が前衛的になっていることにひと悶着ありましたが、ユッカさんが隊長に上着を渡して着替てもらって解決しました。


「はい、その通りです」

「すみません隊長、私が油断したばかりにこんなことになってしまって」


バロックさんが頭を下げながら言いました。


「そうだな、油断はあったかもしれないが問題はない

今は反省するよりも仕事をしろ、反省は後でしておけ」


「・・・はい」


「さて姿は変わっても、あれは転移者であることは変わらない」


そう言って隊長はドラゴン?の方を見る。


全身の所々にまだ骨が見えるけどシュルエットでドラゴンに見えるのですが、咆哮を上げた姿勢のまま動きを止めています。


多分まだ肉体が完成してないからでしょうか?


「よってこれから転移者が変異したドラゴン退治を始める」


隊長はこっちを向いて役割を指示し始めました。


「まず私とバロックとナギとユッカはドラゴンの足元を攻撃して頭を下げさせる

多分ドラゴンだしブレスをするだろうから、攻撃が向こうの城の方に攻撃を当てるわけにはいかんからな」


私達が戦っていた場所は多分で王国の首都だと思われる所のすぐそばにあります。


だって明らかに立派な壁に囲まれている都市とお城が見えますから、あそこは多分首都だと思われます。


何でここに陣形を敷いたのでしょうか?


「セラはその袋を持って一回向こうに戻れ

あと追加武装を持って戻って来てくれ、今の装備では殺しきれるか不安だからな」


「了解です~。ナギさん袋もらいま~す」


「中身こぼさないでね。気持ち悪いから」


セラさんがナギさんから黒い袋を渡してもらいってから転移を開始しました。


確かセラさん達の仕事は完了したようなのであの袋は・・・・?


・・・いえ、これ以上あの袋の中身について考えるのはやめましょう。


「アイビーは狙撃に集中して欲しい」


隊長は気にせずに役割を決めていきます。


「え?狙撃ですか?」

「ああ、見た所マシンガンは向こうに置いてきたようだし、多分踏まれて壊れているだろうからな」


そう言えば私マシンガンを拾わないでガントレットを持って行ったから、向こうに置きっぱなしでした。


「わかりましたそれでどこを狙えばいいのですか?」


体から生えてきてる鱗に当てても弾かれそうですが


「どんな生き物も口の中と目玉は柔らかいからな、そこを狙ってくれ

頭を下げさせるのは狙いやすくするためでもあるからな」


「了解です」


「では諸君、対象は巨大で実力も未知数だが恐れず、しかしいつも以上に油断がないように行動して欲しい

ではこれより駆除を再開する」


「「「「了解!!」」」」





「一体何が?」


まだ骨が見える竜を見ながら困惑していると


「ソータ殿!!大丈夫ですか!!」


所々に傷を負っている団長がこちらに走ってきた。


「少し肩にケガをしましたが問題ありません」


鎧の効果に自動治癒があるけど、未だに肩の傷が閉じない所を見ると多分骨までやられているのだと思う。


魔法で強化されている鎖帷子がなかったらもう少しケガは増えていたかもしれないな。


そう思って俺は右肩に治癒魔法をかけてケガの治癒を早める。


あのまま戦っていたら確実に殺されていたかもしれないと今更ながら思う。


女性は竜が出た直後にどこかと数度会話した後にこっちを無視して男と共に竜の方に向かっていった。


もしかしてだが彼女たちは、あの竜を倒しに向かったのではないだろうか?


しかもあの竜は多分『ムスペリオス・ドラゴン』だと思う。


何で出たのかわからないし、知らないけど外見はあの竜に似ている。


あの時は誠達が攻撃してもしぶとく生きて、王国内の広範囲の田畑を破壊した。


おかげで食糧難になりかけた。


「なんと!!とりあえず後方にいる医療魔法士の所にいきましょう」


団長が後方に戻ろうとするが


「いえ団長、俺はあそこに行きます」


そういって俺はドラゴンのような物を見る。


「なぜですか!?戦闘なら丁度あの場所にいるであろう第2騎士団と他の勇者がいるはずです。わざわざ今無理していく必要はないはずです!!何故今すぐなのですか?」


「俺が勇者だからです」


笑いながら俺は続ける。


「多分王都では避難が始まっていますよね?」


「確かにあの巨竜が現れたのなら避難が始まっても不思議ではありませんが」


「なら俺は勇者として戦わないといけない。他の人が戦っている誠や拓馬だけでも十分かもしれません。でも俺はリース様の勇者です。他の勇者が戦っているのに俺だけ呑気にしている訳にはいかないのです」


それにいつもなら拓馬や誠が使うような派手な魔法が見えない。


もしかしたら・・・


そう思うと騎士団だけでは荷が重すぎる。


あと多分大丈夫だと思うけど誠がいたあの場所にはリース様がいたはずだ。


流石にあの場所にとどまることは無いと思うけど不安なので急いで行きたい


「大丈夫です。この鎧には自動回復の魔法が付与されています。あっちに向かっている内に傷は治りますよ」


そう言って右腕はまだ動かせないので左手で胸を叩く。


「・・・そうですな!勇者様なら大丈夫でしょう。我らは避難誘導を手伝わなければならないのでお供は出来ませんが」


団長は少しうつむいた後に顔を上げて笑いながら俺の左肩をたたきながら続けた。


「死なないでくださいね」

「死にませんよ。死なないでと言われましたから」


俺は団長にそう言って竜の方に向かって走り出した。




「・・・本当に死なんでくださいよ」


ドラゴンにかけていく勇者の背中を見送りながら呟いた。さてこちらも住民の避難を行わなければ


「第一騎士団 団長殿!!」


そう言って近づいてきたのは鎧の色からして第二騎士団の団員の伝令だと思われる。


「第二騎士団の者か。どうしたのだ?」

「現在第二騎士団はリース様を王都に避難させるために護衛をしております。

残った第二騎士団と第三騎士団で現在あのドラゴンを攻撃中です」


本来なら戦争になど姫様を連れ出したくないのだが、あいつらを説得することが出来なかった。


とても不安だったが無事で本当に良かった。


「了解した。私達も王都での避難指示を行い完了次第そちらに向かう。第二騎士団には避難誘導が終わるまで頑張ってもらいたい」

「もとより、そのつもりです」


そう言ってドラゴンの下に走って行った。


「さぁ!!われらも急いで王都での避難誘導を終わらせて討伐に戻るぞ!!」


そう言って、王都に走り出す。

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