アイビー&バロック 咆哮する

「はあああぁぁ!!」


バロックさんが姿勢を低くして拳を構え地面を蹴って相手に接近しまして左拳を突き出しました。


「ウラアア!!」


相手も持っていた大きな大剣をバロックさんに向かって振り下ろしています。


剣と拳がぶつかる。その直前にバロックさんは拳を引いて大剣を右に向かって回避してがら空きになった相手の顔面に右ストレートを思いっきりぶつけました。


普通の剣ならガントレットに当たっても大丈夫なのですが、流石のバロックさんでもあの大剣にガントレットをぶつけたらガントレットが壊れてしまうかもしれませんし、バロックさんの手も折れてしまうかもしれませんから、ぶつけなかったんだと思います。


「グッ!!くそがぁ!!」


転移者が空ぶって地面に刺さった大剣を強引に引き抜き、バロックさんに向かって横の薙ぎ払いをしようとしたので私は相手の横顔に向かってゴム弾を発射しました。


「ブァ!!てめぇ!」


そう言ってこちらを見た直後にバロックさんが殴り始めました。


私達の作戦は、私達が交代交代に攻撃をして注意をそらす作戦です。


相手の一番注意することは力任せの高出力の魔法を放たれることですが、威力の高い魔法は詠唱が長くなる傾向にあるので、お互いで細かく攻撃して詠唱させる隙を作らなければいい


相手が詠唱をせずに魔法を発動できる可能性もありますが、魔法を使う時には動きが止まるので狙いたい放題です。


私は転移者の横や後ろからの嫌がらせに徹して、バロックさんが殴り続けるために今の状況にしました。


相手が対応しようとしても大振りで力任せに振り回しているだけの大剣では、素早くそして細かく打ち込んでくるバロックさんに対応しきれていません。


魔法の詠唱や魔法名を言って発動しようとしいても私が後ろや横からゴム弾を打ち込んで妨害するそれを続けて相手のイライラとダメージ与えて冷静な判断をできなくしています。


隊長から

『転移者の装備には攻撃が通りにくい時があるから、その時は装備の隙間か装備していない顔か手を狙え、転移者は大体が来た時の服のまま過ごしているから頭と手は出ている。そして、そういうタイプは嫌がらせが良く効くぞ』

と言われました。


実際に向こうの表情は横顔しか見えませんが怒っているように見えます。


それに動きも今までよりも大雑把にそして狙いもブレブレになっていて余計な体力を消費していように感じます。


いける!そう思ったときに


「あああぁぁぁ!!ザ・ファイアー・ウォール」


急に叫んで剣を地面に突き刺して前傾姿勢になって顔を隠して魔法を唱えました。


多分私に魔法の詠唱を妨害されないように顔を隠したんでしょう


そして突き刺した剣から炎が噴き出て、地面に小さな亀裂を作ってその亀裂に沿って炎が走り転移者を覆う巨大な炎の壁を作りました。


「うざってえなぁ!!」


炎の壁の向こうから転移者の声が聞こえます。


マシンガンのゴム弾では効かないかもしれないですね。


「アイビーさんライフルで射撃を!!」

「はい」


私はマシンガンを地面に置いてライフルを地面に置いてうつ伏せになって照準を定めようとしましたが、炎の壁が邪魔で狙いが決まりません。


覚えている限りで相手が立っていたであろう場所を狙って数発撃ち込んでみました。


弾が壁に入っていって少しした後にお返しとばかりに火球がこちらに飛んできましたが、バロックさんが前に立って火球を殴って防御してくれました。


「大丈夫ですか?バロックさん」


ガントレットがあったとしても火を殴るのは危険だと思ったのですが


「大丈夫です。それよりも魔法が解除されない限り、私は攻撃できないのでアイビーさんは攻撃を続行してください」


「は、はい」


そうバロックに言われて、私は再びスコープを覗いて撃ち続けました。


持久戦はあまり有効ではないようです。


相手は神様の加護でトンデモな魔力量をもっているようなので、持っている魔力が尽きるまで粘る持久戦は得策ではないと言われました。


ならば可能性は低くても相手に当てられる可能性があるライフルで撃った方がいいようです。


少しの間お互いに撃ち合いをしたあとに、バロックさんが


「アイビーさん、まだスタングレネード残っていますか?」


と聞いてきました


「えっと、後2個残っていたはずです」

「そうですか、一個もらいますね」

「え?あ、はいどうぞ」


バロックさんは右のガントレットを脱いで私のポーチにあるグレネードを右手で持って壁の右側に向かって走り出しました。


まるで見えているかのように火球がバロックさんを狙いますが素早く安全ピンを抜いて炎の壁に投げ込んで左のガントレットで防ぎました。けれどいくつかはガードできずに当たってしまいました。


グレネードは投げ込んで少ししたら破裂音がしました。


すると炎の壁が解除されて、相手が目を抑えながら剣を振りまわしていました。


バロックさんは転移者が振り回している剣を躱しながら素早く距離を詰めて、相手の懐に入り込むと左のガントレットで思いっきりアッパーカットを打ち込みました。


空中に放り投げられながらたのを見て私は急いでライフルを持ち上げて照準を合わせて撃ちました。


放たれた弾丸は相手の左足をもっていきました。


「ぎゃああぁぁ!!」


地面に落ちて左足を抑えながらのたうち回っている相手にバロックさんは


「止めです」


とガントレットのパイルバンカーを起動して殺そうと殴りかかりましたが


「ふ、ふざけんじゃねえ!!」


落とした剣を持ち上げて炎を纏いながら振り回したのでバロックさんは後ろに跳んで下がりました。


同じ剣でも炎があると危険度は違いますから


すぐにライフルで撃とうとしましたが射線上に剣を突き立てて防がれて同時に先ほどの炎の壁を再び展開されました。


狙う位置を変えようとライフルをもって立ち上がったときに

「全員死んじまえやぁぁぁ!!」

そう叫び声が聞こえて、直後に全方位に無差別に大量の火球が放たれました。


私は急いでライフルを担いでバロックさんのガントレットを持ってバロックさんの所に走りました。


走りながら周りを見ると後ろに下がっていた姫様は周りの騎士団員に守られてるようです。


「バロックさん」


私はバロックさんの所にたどり着いてガントレットを渡しました。


「アイビーさん、ガントレットありがとうございます。私の後ろに隠れながらライフルで火球を撃ち落してください」


「え?でも」

「いいからアイビーさんの装備だと火球をさばき切れないでしょう?」

「・・・そうですね。お願いします」

「ええ、どのみちアイビーさんが左足を吹き飛ばしたので長くはないで最後のあがきですね」


バロックさんは火球をはじきながら説明してくれます。


そうだといいんですけど、何でしょうこの言いようのない不安は





ふざけるな!!ふざけるな!!


俺は魔力を最大まで割いて火球を撃ちだす。


俺は神様から最強の力をもらったんだ!!お前は勇者に選ばれたのだと言われたんだ!!


まだなんにもしてねぇ!!勇者としてチヤホヤされてねぇ!!絶世の美女を抱いてねぇ!!


こんなところで死んでたまるか!!まだ何もやってない!!何もできてない!!


回復魔法は覚えていない、今までケガをしたことがなかったし、しないという自信があった。


クソがぁ!!


・・・いやまだだ

俺は懐から奴らから貰った注射器を取り出した

ガラスのような容器に血のように赤黒い液体が満たされているが傷は一つもついていない

これであいつらをぶっ殺して国を取ってやる

俺はその注射器を迷うことなく左胸に突き刺した




「そろそろですね」

バロックさんがそう言った後に火球が止まり、壁が揺らいできた

「あんな高温な状態が続いていたら血は簡単には止まらなくなりますから。さらに壁で引きこもった時にも回復魔法を使った形跡がありませんので回復される心配もありませんでした」

そう言っている内に炎の壁が無くなって中が見えてきました

しかし炎の壁がなくなる前に何かが不気味で巨大な肉塊のような物が出てきました

心臓のように赤く発光しながら出てきた肉塊は四つの棒のような物を生やしながら大きくなってきました

「アイビーさん!!撃って!!」

「!!は、はい」

バロックさんに急ぐように言われて我に返り、慌ててライフルを構えてうちました。

しかし銃弾は肉を削りましたが削る速度よりも巨大化する速度の方が早くて火力が足りません


「駄目ですバロックさんに効いているように見えません」

「そうですか!・・・しかたありませんアイビーさんのライフルで無理なら、私達では殺せません。一旦後ろに下がって隊長と合流しましょう」

「分かりました」


私達は隊長の方に走り出しました。


後ろを見るとだんだん生き物の形になってきました。


トカゲ?いえ翼が生えているのでドラゴンでしょうか?


赤黒い鱗を生やしているドラゴンはまだ骨の見える四肢で地面を踏みしめ、地響きを立てながら空に向かって翼を広げ骨と筋肉がまだ見える頭を上げて咆哮しました。


「ムスペリオス・ドラゴン・・・」


誰かがそう言ったのが聞こえました。





「何?あれ?」


斜に構えていた転移者を半殺しにして止めを刺そうとした時に地響きがして振り返るとあの竜のような物が見えた。


「フフフ、流石だ」

「なにが?」


セラが周囲を見張ってくれている。

周りに勝てるような要素はあのドラゴン以外ないが、そのドラゴンは咆哮した後に咆哮した姿勢のまま動いていない。


「さすが連合の奴らから貰った切り札だ!!

想像以上だ!!そして!!」


転移者は勝ち誇った笑みを浮かべながら、服の中から赤黒い液体の入った注射器のような物を取り出しました。


「これで俺もあいつみたいになれ」


そこまで言いながら腕を振り上げ自分に刺そうとした瞬間に2回発砲音がして奴の頭と左胸がはじけ飛んだ。


振り返るとセラが持っていたM29を引き抜いて撃っていていた。


「セラ・・・」


もう少し情報を聞いてから殺そうと思ったのですが・・・


「駄目でしたか~?明らかにそのままにしたらやばそうだと思ったので、止めといたのですが~」

「いえ・・・その通りですね。とりあえず私はこれを袋に詰めて持っていくので、先に行ってください」


液体の入った明らかに怪しい注射器を拾って別の袋に入れながら指示をしました。


「了解で~す。ナギさんも急いできてくださいね」


そう言ってセラさんは隊長の方に走って行きました。


「・・・しかし威力高すぎませんか?あの銃」


頭がはじけ飛んでいるのですが・・・


気持ち悪いなぁ

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