アイビー&バロック 突撃

浮遊感が収まって転移が完了した私達が見たのは全身を鎧で武装した人達、恐らく騎士団の方々だと思います。


奥に台のようなものがあって、その上に男の人と綺麗なドレスに身を包んだ少女がいて、男性の方は少し場違いというか、騎士団員とは明らかに違う目立った格好をしているのでその人が多分転移者ですね。


とりあえずバロックさんと話した通りに動き出します。


私は隊長から作戦前にもらったスタングレネードの安全ピンを抜いて騎士団の前方に向かって投げた後、私達は後ろを向いて耳を塞さいで口を開きました。


まずスタングレネードを投げて向こうの目を潰します。


後ろから光が差して大きな音がしたので、私達は顔を見合わせて頷いて振り返り全力で走りだしました。


まずここから騎士団の方までそこそこの距離があります。


その間に弓や魔法とかで撃たれたらおしまいです。


なのでそれを潰すためにスタングレネードを投げました。


人は何か物が来た場合はそっちに注意が向いてしまいます。私も隊長のおとり攻撃に何回も引っ掛かりました。


それにこの世界には突然音がして強い閃光がする物は魔法でも中々見ないはず、目と耳が潰れなくても、おびえるなり警戒する団員が少しでも増えれば御の字です。


そうこうしている内に一番の騎士団員が近くに見えました。


どうやらまだ動揺が収まっていないらしく、こちらに気が付いている騎士団員はほとんどいません。


ここまでくれば魔法も弓を使えないはずです。


使ったら味方に当たるかもしれないですからね。


後は奥にいる転移者の所に行くだけです。


これはバロックさんが正面を切り開いて私は横と後ろのカバーをして転移者の所まで行くことになっています。


バロックさんが予定通り、私の前に出て騎士団に攻撃をし始めました。


私は後ろから攻撃が来ないようにスタンガンを、スタングレネードやバロックさん攻撃を食らって動けない騎士団員の鎧の隙間に刺してビリビリさせつつ、動けて攻撃してこようとする騎士団員にゴム弾を当てて牽制するのが私の役目です。


・・・普通に忙しいですね。





目の前で剣を振り下ろそうとする騎士団の鳩尾に拳を打ち込んで悶絶させながら周りをチラリと見る。


騎士団の数はざっと見た感じ200、300ぐらいでしょうか?


ここにいるのが全員ではないでしょうから隊長達のところに同じ数がいた場合、全員で400~600人ほどだと推測出来ます。それでも隊長達なら大丈夫でしょう。


さてまずは指揮官を潰すことが先決ですね。


頭を取られれば少なからず動揺して動きが鈍るでしょうね。


そう思って私は少し遠くにいる男を見る。


他の騎士団員と違って少し鎧が違いますし馬に騎乗しているあたり彼が指揮官だと思います。


とりあえず彼を無力化したいのでアイビーさんに頼もうと思いますがどうしましょう


彼を無力化する場合は馬から落ちる可能性があるので危険ですね。


やはり馬を撃ちましょうか。


この距離だとライフルを使うので馬は死んでしまうかもしれないですが仕方ないですね。


「アイビーさん、私が守るのであっちの馬を撃ってください」

「え?あ、はいわかりましたバロックさん」


アイビーさんはスタンガンをしまって、肩にかけていたライフルを構えて撃ちました。


発射した弾は馬に当たらずに馬の鼻先をかすりました・・・


しかし鼻先に何かが当たったことに驚いた馬が暴れ始めて指揮官らしき男が抑えようと頑張っています。


周りの騎士団員も馬に踏まれないように離れ始めています。


「アイビーさん今のうちに走って行きますよ」

「あ、はい!」


アイビーさんは急いで立ち上がって走り出したので、私も走りながら結果オーライになってよかったとホッとしました。


とりあえず騒ぎが大きくなっている指揮官の方に進みつつ転移者の方に行きましょう。


まぁ私達から見て指揮官のいる所と転移者のいる位置が直線上にあるので特に進む方向は変わりませんが


「アイビーさん指揮官の所を通るときに馬にゴム弾を当ててください」

「了解です」


アイビーさんはサブマシンガンに持ち替えて横を通るときに馬の横っ腹に一発撃ち込みました。


ゴム弾なので貫通することはありませんがそれでも結構痛いので馬は苦しそうに再び暴れだします。指揮官も落馬していない様ですけど抑えるのに必死で指揮は出来なさそうです。


「上出来です」


走りながらアイビーさんに親指を立てました。


「ありがとうございます」


そうこう言っている内に騎士団を抜けて目の前が広がりました。


「やっと来たかよ。ったく待ちくたびれたぜ」


背中にある大きな大剣を引き抜いて両手で構えてこちらを見ている男が言った。


「やっぱり騎士団の奴らじゃ相手にならなかったな」


そう言ってニヤニヤしながらこちらを見ている。


その目は、まるで楽しいおもちゃを見た子供のような目をしていて、これから殺し殺されるということを恐れていないようだ。


・・・やはり思考能力が低くなっている。


加護型の特徴の一つに思考能力の低下がある。


神様から加護をもらう際に能力をストックして使う時に、処理する場所を用意する必要がある。


武器などに付与できるものなら構わないが、身体の上昇や魔力の上昇を行う場合はその能力を処理するために脳の領域を使っている。


一つだけなら問題ないが神からの加護は3つ4つ付与されることが普通なのでその分普段使っている領域を侵食されるのだ。


つまり、加護が多ければ多いだけ感情や思考能力が低下して行動が支離滅裂だったり子供っぽくなったりすると言う事である。


多分この転移者は加護が多く入っているのだろう。


だから殺人に対して恐怖することがなく、むしろ突っ込んでいけるのだろう。


そして神様の加護で無敵のような力持った転移者、さながら鉄パイプを持って弱者をカツアゲしてイキっているヤンキーのようだ。


そんな男が目の前で武器持っている。


ニヤニヤしながら動いていない所を見るとこちらのセリフを待っているのでしょうか?


アイビーさんに不意打ちをするように言っておけばよかったですね。


そう思っていると後ろにいたお姫様のような人が話しかけてきました。


「あの」

「あなたは?」

「私はこのモラン王国の第三王女のリースです」


とりあえず転移者ではないですね。とりあえず自己紹介でしょうか?

向こうの転移者は何か不機嫌そうな顔をしていますが、大丈夫でしょうか?


「私は異世界転移・転生対策課 第753部隊所属バロックです。そしてこちらが」

「え?あ、同じく753部隊所属アイビーさんです」


王女ってことは間違いなく偉いですよね?


流石に偉い人との会話はしっかりしないといけませんからね。初対面で偉い人に対してため口とかもってのほかです。


そして転移者の方を見ると先ほどまでの不機嫌そうな顔から明らかにイライラしているのがわかります。


「あなた達は何故この国の勇者を殺すのですか?」


そんなことはお構いなしに王女さまはこちらに話しかけてきます。


転移者の目線は王女様に向いていて不意打ちするなら今のうちですが、何か嫌ですね。


とりあえず答えましょう。


「そこの三人は神が勝手に転移させた人である可能性があるので回収したいのです」

「では何故今なのですか?私達王国は今までに沢山の勇者を召喚しましたが今回のようにあなた達が現れたという記録はありません。何故今回に限ってきたのですか?」


・・・どういうことでしょう?


今まで沢山の転移者が召喚されたような世界を調査課が見逃すはずがない


なら転移者の召喚が当たり前の世界ということなのか?


でも、それならば今回の仕事が来たのはおかしい


ならば彼女が嘘をついているということか?


でも彼女が転移者の加護に毒されている様子もない


・・・どういうことです?


そうやって考えていると放置されていた転移者が声を荒げました。


「何訳わかんない事いってんだよ!!あいつらは敵だ!!殺せば解決だろ!!」


そう言って武器を構えた。


王女様も転移者を説得して話を続けたいようだが、向こうは聞く耳を持っていません


こっちが説得に参加しても火に油を注ぐような事、無視して話を続けても同じこと


どうやら姫様との会話はここまでのようですね。


「アイビーさん武器を構えてください戦闘が始まります」

「は、はい」


こちらが武器を構えたのを見て向こうも嬉しそうに武器を構えました。


王女様も説得を諦めて転移者を少しにらんだ後に後ろに下がりました。


「しゃあ!!、今からぶっ殺してやるから覚悟しておくんだな!!」


そう言って向こうが剣を構えて啖呵を切りました。

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