話を聞いて自己中が会議を強引に進める

「・・・つまり俺たちは、その世界のルールに違反したから死んでほしいということですか?」

「はいその通りです、誠に身勝手なことであることは重々承知していますが、これもこの世界のため何卒ご理解を」


目の前に現れた女性はそう言って頭を深く下げた。


「・・・」


俺は最初この人の言っていることが信用できなかった。と言うか胡散臭かった。


しかし俺達にしか知らないような事、こちらの事情を詳しく知っていることや、元の世界についても話していることなどから信用できるかもと今は思っている。


100%ではないけれど、それでも話の説得力はあると思う。


「ちなみにその話を断った場合はどうなるんだ?」

「実行部が来てあなたを殺します

もしその部隊を撃退しても、あなた達3人が死ぬまで何度も何度も部隊を送り込みます

そうなった場合あなた達の国は疲弊するでしょう

それで脅すわけではなく、私達もそれを望んでいません

できれば大人しく私達に付いて来てほしいのです」


・・・


「この王国にはソータ様の他にも勇者はいます

この三人を相手にしても勝てるというのですか?」


「はい、実行部隊はあなた達のような人を何人も相手取り、勝ってきた猛者がたくさんいます

必ずあなた達、勇者を殺します」


ネペンさんは真剣な口調で話した。


多分ネペンさんの話は真実だろう


嘘にしては突拍子もなさすぎる。


国のスパイの話ならもっとマシな話をするはずだし、嘘ならもっとうまい嘘があるはずだ。


「リース様、俺はこの話を信じようと思います」


頑張って考えた結果俺はそう答えた。


「!?なぜですか?」


リース様が驚いた口調で聞いた。


「俺はこの人の話を聞いてこの人の言っていることは真実だと思いました

嘘ならもっと上手な嘘をつくはずです

こちらでは知りえない事を知っていて、説得力があります

それにこの人の話が本当なら拒絶してもこの国は疲弊して滅んでしまうかもしれない

今は国の建て直し中の大事な時期です

そんな時に戦いをしたら疲弊してしまいます

それなら・・」


「でもソータ様は死んでしまうのですよ?それでもいいのですか?」


「正直怖いです

でも俺は、この国の人が好きなのです

俺はそれが無くなるのが、俺の死よりも怖いんです

それならばと・・・

すみません、あなたにお仕えするといったのに最後までいることが出来なくて」


「・・・いえ、それがあなた自身が考えて出した答えなら私は口を出しません

それにあなたがこの国のことを考えていることは、分かりました

私の下からいなくなってしまうのは悲しいですが仕方ありません」


「ありがとうございます

ネペンさんお待たせしました」


「いえ、それよりもあなたの判断に感謝します

大体の転移する人は今の地位やプライドにこだわって拒否することが多いので、意外でした」


「そう思うようになったのはこの国の人たちですから、その人たちに感謝ですね」


「そうですか、素晴らしい人達に恵まれていたのですね。では転移しますので手を握ってください」


「はい、ではリース様お元気で

俺のように神様に選ばれなかった人間にですら、人のために役に立てたのだからよかった」


そう言って俺はネペンさんの手を取ろうとした。


ネペンさんは手を取ろうとした俺に驚いた顔をして何かを言おうとした。


「させねえよ!!」


そう言ってドアを蹴破り部屋に入ってきたのは誠だった。


「おらぁ!!フレイムソード!!」


誠は突撃しながら俺を突き飛ばし、燃え盛る剣を振ってネペンさんに切りかかった。


「クッ」


ネペンさんは回避しようとしたが回避しきれずに右肩に剣が当たって、ネペンさんは肩を抑えながら後ずさりして壁にもたれかかった。


「誠!!何をするんだ」


俺は思わず叫んだ。


「あ?知らんのか?こいつらは敵だ!!俺らを殺そうとした敵だ!!なら殺すのが当たり前だろうが!!」


そう言って誠は燃え盛る剣を構えネペンさんを切りかかろうとした。


「やめろ!!」


俺は咄嗟に剣を抜き誠の剣をガードした。


「転移して逃げてください!!」


俺はネペンさんに向かってそう言った。


ネペンさんは無言で頷き、転移して逃げた。


「何しやがる!!」


誠の蹴りを食らい俺はネペンさんがいた壁に勢いよくぶつかった。


「何で敵を庇った!!」


俺は立ち上がり剣を構えながら答えた。


「まだ完全に敵だと決まっている訳じゃない!!」


彼女らは言わば使者だと思う。


使者なら簡単に殺そうとしたら駄目だと思う


と言うか使者でも、何もしていない人なら簡単に殺そうとしたら駄目じゃないか?


「俺たちに死ねと言ってきたんだぞ!!敵じゃねぇか!!

まさかお前あいつらの仲間か!!」


「なわけないだろ!!お前は短絡すぎんだよ!!もう少し考えろ!!」


「んだとぉ!!」


「そこまでにしなさい!!」


リース様の声に俺と誠が止まった。


「誠様、お部屋にお戻りください

ここはもう大丈夫です」


「そうはいかねぇ

俺は王様からの伝言を伝えに来たんだ

んでドアの前で話し声が聞こえて、それを止めようとしてドアを蹴破ったんだ。

伝言を伝えてねぇ」


「そうですか

では話しなさい」


「ッチ『侵入者に対しての会議を開くので至急会議室に来るようにだ』だとよ

じゃあな」


そういって誠は部屋を出ていった。


「リース様」


「行きましょうソータ様、会議に参加しなければ」




「では、侵入者は撃退したのか?」


会議室の円卓の奥の大きな椅子座って話しているのが王様のオルフェゴーラ4世だ。


本当の名前はもっと長いそうだけど、まだ覚えきれてない・・・


席に座っているのは王様とクレイユ様とイヴ様、そしてリース様

王様の隣に騎士団長、クレイユ様の隣に誠、イヴ様の隣に拓馬、リース様の隣に俺がいる


「あぁ、俺と拓馬は同じ部屋にいたので問題なく処理できたぜ」


「しっかし、変な連中でしたね、私たちに死ねなんて言ってきて」


「まぁ、くそ雑魚だったから、楽に殺せたがな」


「え?殺したのか?」


「ああ、ろくに抵抗なかったから楽にな」


何でそんな簡単に人を殺せるんだろうか。


騎士団と訓練して強くなってきている俺は本物の剣を持つたびに少し怖くて手が震える。


この剣で人を刺せば殺せる、そう考えて剣を持つ手が震える。


人を殺してしまうかもしれないことが怖い。


でもあいつらは、簡単に人を殺す。


何回か話をしたことがあるけど俺と変わらない世界というか、ほぼ同じ様な世界から来たはずなのに何か戦闘に慣れているというか、人を殺そうとするのに一切の躊躇がない


想像するのと実際にやってみるのではまるで違う。


だというのにあの二人はまるで前から使っているかのように剣を振り魔法を使う

俺がおかしいのだろうか。


「それよりも蒼汰、お前何で殺さなかったんだ?

それに俺が部屋に入った時お前あの敵と何かしてたよな?お前何していたんだ?」


「それについては私が説明します」


そう言ってリース様は立ち上がり、ネペンさんとの会話の内容を話した。


「信じられないな」


話し終えた後に最初に口を開いたのは誠だった。


「そうだな神が間違っているはずがない」


拓馬も誠に続いた


「つーか、何でそんな話信じたんだよ

嘘とかスパイの可能性とかあんじゃん」


「スパイにしてはこちらの事情を知りすぎている。俺たちのいた世界の事についても知っていた

俺たちから聞いたにしても詳しすぎてる。

同じ理由で嘘の可能性もないと思った。嘘にしては俺たちの事や俺たちの世界のことについて一致しすぎている」


「それについては後で話そう、今はこの後のことだ

佑馬殿、奴らはいつこちらに攻めてくると言っていた?」


「13日後です」


「そうか13日後か・・・」


そう言って王様は目を閉じて考え始めた。


「おいおい王様、考える必要ないだろ、あいつらは敵なんだから殲滅あるのみだろ」


「しかし、奴らの力が分からない

それにあまり長く戦っては国が持たない

戦いは勇者の死か、向こうが諦めるか、それまで続くだろう。だがこちらはそれまでに国が崩壊する可能性もある。

今の王国は建て直しの最中、あまり争いはしたくない」


「じゃあ俺たちに死ねっていうのか!?あ?

そっちが勝手に呼んだくせに都合が悪くなったら死ねっていうのか!?」


「そういう訳ではない

ただ向こうの戦力が分からないのでは対策のしようが」


「俺たちは神様から認められてもらった力がある コイツさえあれば勝てるんだよ!!」


誠は胸をたたきながら言った。


「・・・わかった、戦おう」


王様が渋々ながら決めた。


実際選択はないようなものだ、戦わないという選択をすることは、俺たち勇者に死ねと言っている事だ。


それに勇者の支持は多分俺以外は低いと思う。


だからと言って勇者を殺せるほどの人でないしでもないが、国か勇者かとなれば国のために動く王様だ。


だがそうした場合あの二人は絶対に抵抗するだろう。


あの二人を止められる人間はこの国にいない。


そうなった場合、あの二人が本気で抵抗したら国が滅んでしまう可能性がある。


王様に選択の余地なんてなかった。


使者は一人を除いて殺してしまった、もはや和平も降伏もない。


「おし、その前に蒼汰、お前一人逃がしたよな」


「そうなんですか?蒼汰さん」


誠と拓馬がこちらを見た


「ああ、逃がしたよ」


「なぜですか?」


「理由なんてどうでも良い、こいつは敵を庇い逃がした。

戦っている最中に裏切ったら面倒だからな

戦いが始まる前に、お前の主のリースを預からせてもらうぜ」


「は?お前何言ってんの?頭大丈夫か」


思わず素が出てしまった。


「裏切ったり敵に説得されたりするかもしれないからな

人質を取らせてもらうぜ」


「いや、違う・・」


「悔しかったら俺らに勝負で勝つことだな」


話を聞いてほしい・・・


「ま、無理だろうがな」


「そうですね、蒼汰さんは一回も私達に勝っていませんから」


そう言って誠達は部屋を出ていった。

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