生き物を殺す覚悟
「紫電よ、奴を貫け『ライトニング』 エンチャント ポルックス『ライトニングバレット』発射!!」
雷をまとった銃弾が発射される速度は変わらないので回避はできる。
相手の疲労が溜まってきてはいるが、まだ動けるようだ。
そう思い奴の方を見ると騎士団の方を見ている。
まずい、奴がナギ達の存在に気が付いてしまったら作戦が失敗する恐れがある。
そう思い少し無理をして奴に接近し腹に蹴りを入れた。
「すまない、戦闘中によそ見できるほどの余裕があるのかと思って少し攻めてみたのだが違ったようだな」
実は結構きついが挑発をしてこっちに再び注意をひかせる
そしてイラついた顔をした奴と奴の嫁達の攻撃が再開した。
さて極大魔法を早く撃ってくれると助かるんだがどうしたものか。
スナイパーライフルを二脚を立てて置きスコープを覗き、隊長が戦っているのを見ている。
苦戦しているのが見えている。
作戦内容は聞いているのでここからの援護はできないが、不安です。
「本当に援護しなくていいのですか?」
私の後ろで立って同じく隊長のいる方を見ているナギさんの方を振り向きナギさんに聞きました。
「作戦通りよ、援護をしたら今行っている隊長の努力が無駄になってしまうわ」
「それはそうなのですか・・・」
「隊長を信じるのも仕事のうちよ~それにあなたには大事な出番があるのでしょう~
そちらの覚悟を決めた方がいいわ~」
コレダーを外し、ユッカさん達と一緒に騎士団を離れたとこに置いて行っているセラさんがそう言った。
隊長の実力は訓練中に手合わせしているので知っています、だからと言って手を放して信じることができるほどの私の心は大きくないのです。
けれどここで援護してもナギさんの言う通り無意味どころか今一人で頑張っている隊長の努力を無駄にしてしまう。
それにセラさんも言うように、私は生き物を殺す覚悟をしなければならない。
訓練はしました。
しかし、それは的やペイント弾を使った訓練で実際に何かを殺したわけではない
生き物に照準を合わせた時、何も迷わずに私は引き金を引けるのでしょうか?
今回の仕事は私に引き金を引けるようになって欲しいから、私に転移者を撃つような作戦内容にしたそうです。
最初のうちにやっておかないと、私たちはいつ死ぬかわからない、私以外の全員が死んだ時等に引き金を引けなければ私も死んでしまう。
そんなことになってしまうくらいなら、嫌がってもやらせるそうです。
そう言った隊長の眼は有無を言わさない感じがしましたが、顔は少し悲しそうな顔していました。
「アイビー、そろそろ準備して」
そう言ったナギさんの声に我に返り私はスコープを覗きました。
対象が前にいて見えにくいですが、隊長が地べたに這いつくばっていました。
今だ!!
私はそう思い照準を定めようとしましたが
「まだよ」
私をナギさんが止めました。
「今撃っても躱されるかもしれない、もっと相手が動けない確実に当たる状況で撃ちなさい」
そう言っていると対象は上に飛び何かをし始めました。
「・・・今よ、アイビー」
私は上に銃を上げ照準を定め二脚の固定機能を使い、銃を固定した。
後は引き金を引くだけ、そう引くだけなのだ
なのに、引けない
いざその時になったら躊躇って引き金が引けない
覚悟はしていたつもりだった
訓練で練習し撃てると思った
しかし現実は違った
傷つけるのと命を奪うのでは勝手が違う
その考えがよぎってしまった
でも撃たなきゃ・・・でも
呼吸が浅くなり鼓動が早くなって、照準がブレてきた。
そんな時に私の肩に手が置かれました。
振り返ってみるとナギさんが肩に手を置いていました。
「命を奪うことに躊躇うのは悪いことではありません
ですが、それでも私たちは命を奪わなければなりません
彼らがどんなに幸せでも、どんなに世界のために動いていても私たちは彼らを殺す、殺さなくてはならない、それが仕事だから。
だから撃ちなさいアイビー、撃って仕事を果たしなさい」
つらい
生き物を自分の手で殺すのがつらい
でも撃たなくちゃ
すでに魔法が完成しかけているようで、とても大きな白い炎が見える
私は息を止め再びスコープを覗き照準を合わせた。
この胸にまだ迷いはあるけど、今はそれを一瞬でも殺して撃つ
自分の覚悟が消えない内に私は引き金を引いた。
頭を狙い銃口からでた弾丸は下にズレ胸に当たった。
「上出来よ」
ナギさんはそう言った。
魔法の発動に失敗し、下に落ちていく彼を見ながら思ったのは喜びでも達成感でもなく悲しさだった。
「作戦前に隊長の言った言葉を覚えている?
『奴らに同情してはならない』
あれは罪悪感に自分が押しつぶされないように隊長自身に対しても言っていることなの
私達もそう、だから相手に同情をせず相手の気持ちを考えない、そう思いながら仕事しているの
あなたもすぐに慣れろとは言えないわ、私達もそうだったから
でもそう考えないと、いつか罪悪感に押しつぶされて壊れてしまうわよ」
ナギさんの言葉がささる
確かにこの気持ちを何度もあじわったらきっと自分は死んでしまう。
そう思うが今の自分の気持ちを止めることができず罪悪感と不快感がきて自分は吐いてしまった。
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