決着
「紫電よ、奴を貫け『ライトニング』 エンチャント ポルックス『ライトニングバレット』発射!!」
ポルックスに雷撃の魔術を付与して弾速を上げて味方に当たらないように足元を狙って撃ったが、難なく奴に躱わされる。
これで何回目だ。
みんなで巨大な魔獣を倒すときに使ったとっておきのコンビネーションも、帝国を作るときに戦った万を超える兵隊と戦った時に使った魔法も全て躱すか斬られて破られる。
幸いにこれ以上の脱落者は出てきていないが、このままでは不味い。
しかし弱点は見つかった。
何回が空から攻撃しようと、飛翔の魔法を使って飛ぼうとすると、奴に全力で攻撃されて地面に叩き落されて飛ぶことができなかった。
そして奴はその時に飛翔の魔法を使わずに、あくまでジャンプして攻撃していた。
おそらく奴は空を飛ぶことはできない。
空を飛ぶことが出来れば、回避や防御では意味のないほどの範囲と威力を持つ極大魔法放って、奴を殺すことができるのだが、放つ隙が見つからない。
どこかでチャンスを作らなければ。
騎士団ももうそろそろ戻ってきてもいいと思うが俺とみんなが連携しても中々倒せない奴の仲間だ、すぐには来ることができないだろう。
「秋斗!!」
っと、よそ見をするとすぐこれだ。
俺は奴の下からくる刀をポルックスで防御した、すると奴は刀を強引に上に切り払い、がら空きになったお腹目掛けて蹴りを放ってきた。
「ぐッ!」
とっさに後ろに回避しようとしたが間に合わず蹴りをもろに食らってしまった。
「すまない、戦闘中によそ見できるほどの余裕があるのかと思って少し攻めてみたのだが違ったようだな」
蹴りをもろに食らい膝をついてしまった俺を見ながら奴はこう言った。
「この野郎ッ!!」
蹴りを食らったお腹をさすりながら睨んだ。
まるで自分が上だと言っているような態度、挑発するような言動、気に入らない。
やっぱり、こいつを先にどうにかできないといけないようだ。
しかしどうする?
魔法も弓矢も実弾も全部躱すか、防御される。
接近戦をしようにも奴が同士討ち誘うような動きをするせいで、みんなが積極的な攻撃が行えていない。
騎士団がこっちに来るまで待つ?いやみんなの疲労が濃くなってきている。
奴も疲れてはいるだろうが、同士討ちを誘うような動きに警戒していたり緊張感やお互いのカバーリングで心労が増えていて余計に疲れているのだろう、動きが鈍くなってきて細かいミスが増えてきている。
まだお互いのカバーで何とかなってはいるけどジリ貧だ、何とか打開案を見つけないとこっちが負ける。
一番手っ取り早いのは奴が回避できないほどの範囲の極大魔法を撃つことだが、極大魔法は発動に時間がかかるので、奴の手が届かないところで発動しなければならない、さらに発動準備中に攻撃を受けたり範囲外に出ていかないようにしないと。
『グラビティ』か『ヘビィ』を使えば足止めはできるけど『ヘビィ』は範囲が任意の対象に固定出来るのだけどあまり重くできない。
『グラビティ』は重力を操作して重くできるし範囲も自由なんだけど対象が範囲内の全てが対象に入ってしまい味方も被害にあってしまうことと発動までに時間がかかっているのが欠点だ。
『ヘビィ』は駄目だ、今の奴の動きからしてそれなりに鍛えられている多少重くしても問題なく動くかもしれない。
『グラビティ』が現実的だが、奴は俺を狙っている。
みんなが俺に攻撃させないように攻撃しているので、奴は俺にあまり攻撃できていないがこの距離では、みんなを巻き込んでしまうかもしれない。
だがしかし、それ以外に活路はない!
「みんな!『グラビティ』で奴の動きを止める。足止めを頼む!!」
そう言って俺は手のひらに魔力を集め始めた。
みんなが俺の前に立って防いでくれているが、奴の攻撃はさっきよりも激しさを増していてみんなも防戦一方になっている。
奴の横から、同士討ちの心配が無くなった遠距離組の三人が二手に分かれて弓と魔法で攻撃を再開したが、どちらも躱されるか撃ち落されている。
だが、おかげで俺に攻撃は一回も当たっていないので、今の所は順調に魔力が集まっている。
そう思っていた矢先、奴は持っていた刀の一本を二手に分かれた遠距離組の一人でいる方に投げつけた。
幸いに投げた刀は当たらずに目の前に刺さったが、投げた刀の方を見ている隙に反対側にいた二人を切り倒した。
一瞬ヒヤリとしたが首から血を流していないところを見ると峰打ちなのだろう。
しかし好都合なことに遠距離攻撃持ちを潰しに行ったので奴との距離が開いている、さらにもう少しで『グラビティ』に必要な魔力が集まる。
「もうすぐ『グラビティ』を使う。全員倒れている者を運んで離れろ!!」
俺は全員にそう指示した。
奴は気絶した者を抱えて離れるみんなには見向きもせず、刀を構え俺だけを見て向かってくる。
だが少し遅かったな
「鳥は地に堕ち潰れ、獣は骨が折れ地に伏せ潰れろ。わが前にひれ伏せ『グラビティ』」
そう言い俺は手のひらの魔力を開放する。
俺の前、直径10メートルの円形が魔法の範囲だ。
魔法が発動した直後に奴は地に伏した。
無理もない俺が発動したグラビティの威力は20倍体重が50kgの人間ならばそれが1000kgに増えたようなものだ。
普通なら潰れて死んでしまうような重さだ。
だがそれでも奴は頭を地面に付けず、四つん這いの状態に腕を曲げた格好で踏ん張っていた。
やはり危険だ、塵も残さずに消滅させなければ。
俺は奴の刀を投げることを考え、飛翔の魔法を唱え飛び上がり5メートルほど上がって極大魔法の詠唱を開始した。
「赤を超え、蒼を超えし白銀よ、何物にも負けぬ白銀よ
それが溶ける前に燃やし尽くせ、それが壊れる前に燃やし尽くせ、死の足音すらも抜き去り、死が持っていくモノさえも残さず燃やし尽くし、我の前に何も残すな。」
本来はできない3つの魔法の同時使用。
神様がくれた力のお陰でできる俺の十八番。
呪文を唱えながら俺は下にいる奴を見た、顔は下を向いているがそれでも膝を震わせながら立ち上がろうとしている。
だがそんなでは、この極大魔法を回避することも防御することも間に合わない。
まぁ防御しても死ぬんだけど。
俺は詠唱を再開する。
「白銀よ、何者にも防げぬ白銀の炎よ
いかなるものであっても、届くことのない至高の玉座よ
その輝きの前では命など薪にすらならない」
俺の頭上に集まっていく魔力が白い炎となって照らす。
ふと向こうを見ると離れた所に俺の嫁達がこっちを見ていた。
全員無事そうだ。
「どんな気持ちだ?俺たちに負けて地面とキスしそうになっている気分はどうだ?」
俺はそう言い再び視線を膝を震わせながら立ち上がった奴に戻して、最後の詠唱の言葉を紡いだ。
「まぁ答えなんて聞かないけどね
さようならだ 奴を燃やせ原初の炎 『ヴァイス・ノ―』」
俺は呪文を唱えようとした。
唱えきることができなかったのは、呪文を言い切る直前に後ろから強い衝撃来て俺の胸が弾けたからだ。
「・・・・?」
俺は下を向き、赤黒い何かが下に落ちていくのをただ眺めていた。
状況が理解できない。
確認するように俺は自分の胸を触ろうと右手を動かした。
何もなかった。
そこにあるはずのものがなく、ただ俺の右腕が空を切るだけだった。
そこに心臓の鼓動はなく服の感触すらない、ただ何もなかった。
悲鳴を上げようとした。
だが空気が入るべき場所はすでに無くなっており、俺は息をすることも声を上げることができなかった。
同時に寒気と脱力感が同時に来た。
飛翔の魔法も維持できず、俺は落ち始めた。
落ちていく中考える力も無くなってきた俺が最後に見たのは、眼前に迫る刃と
「上出来だ」
と言う奴の声だけだった。
そして刃は俺の喉を切り裂き、俺は意識を手放した。
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