case1 オリュンポス帝国
転移者
「さて話を戻そう今回の対象者は転移者であることが判明しており、さらに加護型らしい」
隊長が持っている資料を見ながらそう言うとナギさんたちが露骨に嫌そうな顔をしました。
「あの加護型って何ですか?」
また知らない単語が出たので聞きます。
「異世界への転移者や転生者は異世界へ行くときに神様からある程度力をもらうんだけど、神様から力の一部をもらったり肉体の上限を開放したりするのが加護型で、神様との間に能力のパスを開いて神様から直接力を注いでもらい神の力そのものを使えるのがバックアップ型よ」
ナギさんが説明してくれました。つまり力を分け与えるタイプか、分け与えずに力そのものを使えるようにするかということですかね?
「パスをつなぐだけのバックアップ型よりも加護型は力を分け与えたりその分け与える力に相手の体が耐えられるように肉体を強化したりするのに時間がかかるから、基本的にはパスをつなぐだけのバックアップ型を使う神が多いのよ~」
「なるほど、それで何故先輩たちは嫌な顔をされたのですか?」
「さっきも言ったようにバックアップ型は神とのパスをつないで力を振るいます。
つまりパスの先の神がいなくなった場合対象は力を振るえなくなり、転移者は著しく弱体化します」
「そうなると完全に楽になるわけではないっすけど、仕事のしやすさと命の危険度が格段に違うんすよ」
「なるほど、だから加護型と聞いたときに先輩方が嫌な顔をしたんですね」
「まあだからやる気がどうこうと言うわけではないんすけど、できれば命の危険が少ない仕事の方がいいわけよ」
そんな会話に苦笑しながら隊長が言った。
「お前たちの気持ちもわかる、私もできれば楽な仕事をしたいが仕事は仕事だ。きっちりやるぞ」
『はい』
「では説明を続ける、対象の授かっている能力は『身体機能上昇』『魔力容量上限解放』『魔力適正・全』『罪悪感・嫌悪感軽減』『異性からの好意上昇』だ」
「至れり尽くせりですね」
能力は多分転移者が持っている力のことですね。つまり魔法がすごくて肉弾戦もすごくて異性からモテで魔法の才能もあって、あまり罪悪感を感じないってことですかね?本当に至れり尽くせりですね。
「まぁ死んだことがバレてほしくないから蘇らせて異世界に飛ばしたのに、そこですぐに死んでしまったら意味ないっすからね。神様もすぐ死なないように工夫してるんスよ」
なるほど、簡単に死なれるとすぐに悪事がバレテしまうので色々つけてしまうんですね。それにしてもやりすぎな気がしてなりません。
「『異性からの好意上昇』もその一つだな。現在向こうには十人の婚約者がいるようだ。ボッチで異世界生活するよりも異性と一緒にいた方が死ぬ確率は低いからな。さらに『好意上昇』には自分に惚れている同じ異性との間を取り持つ効果がある。これにより所謂ハーレムを可能にしているようだ。本人は知りえないがな」
別に本人に才能が恋愛上手というわけでもないんですね。
「神様も変なところに力を入れているんですね」
「さらに相手は帝国の皇帝だ、当然のように許嫁と騎士団を持っている。数は許嫁が10人騎士団員は112人だ」
それを聞いてナギさんたちが嫌そうな顔というより半分諦めたような顔をしました。
「どうしたんですか皆さん?」
「それは私が説明しよう、アイビー私たちの仕事はなんだ?」
私は自分の考えた答えがあっているかメモをめくって確かめてから答えた
「異世界へ行った人間の肉体と魂の回収です」
「その通りだ 我々が回収するのはあくまで異世界へ行った人間だけだ。」
「魂の回収は対象を殺害して行う、というか対象を殺さないと安全に輸送できないので殺してから運ぶのが基本だ。」
「はい、で何故先輩たちは嫌な顔をされたのですか?」
「殺害の対象は異世界に行ったものだけだ。逆を言えば対象以外の殺人は基本的には許可されていない、つまり騎士団員と許嫁の殺害は禁止されている」
「・・・・」
騎士団と許嫁を殺さずにトンデモ能力持ちを殺して魂と肉体を回収する?
難しくないですか?
「更に付け加えると~この騎士団や許嫁さん達は、神様の加護を持った対象とずっと近い距離にいるから~対象ほどではないけど普通の人よりも強い何かに目覚めているかもしれないのよね~」
追い打ちをかけるようにセラさんがトンデモナイこと言った。
え?加護ってうつるんですか?
「よくある能力は『魔法威力上昇』や『物理攻撃上昇』など戦いに向いている能力ばかり目覚めるからな」
バロックさん追い打ちはやめてください、もうお腹いっぱいです
「更に騎士団や許嫁さんの装備は対象の知識をフル活用したものがあって、よく重火器やミサイルなんかを持っていたりするっすね。当然対象が魔法で威力を挙げてあるっす。」
ユッカさんもういいです
やめてください
どうしろっていうんですか
そんなトンデモ
無理じゃないですか?
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