第11話 久美ちゃんからの手紙

「手紙、遅くなってごめんね〜。文章かくの得意じゃないからさ、何回も書き直して…もういいや、イラストにしちゃおって思ったんだ。そしたら楽しくなっちゃった」

久美ちゃんは電話に出ると言った。


 お母さんと買い物に行って帰ってきたら久美ちゃんからの手紙がポストに入っていた。

嬉しくてエレベーターに乗る前から封筒を開けたくて仕方がなかったけれど、上手に開けられずに汚く破れてしまうのが嫌で部屋まで我慢した。

 玄関で慌てて靴を脱いでハサミのあるダイニングに走った。後ろからお母さんの声

「こら!靴をちゃんと揃えなさい!」

「あとでー!」

ワクワクしながらハサミで封をきる。

白い便箋…じゃなくて…コピー用紙?

開いてみたら目に飛び込んできたのは紙面を埋め尽くすほどのイラスト。

「うわー!すご〜い!」

その迫力に読む前から声が出る。

よく見ると、いちばん上に一言だけコメント

"私は元気だよ〜。お父さんも元気!よかったぁ"

久美ちゃんらしき顔の絵が笑っている。

 立ったまま紙面を見つめていると、「もう…!」とさっきの私の返事に呆れながらダイニングにお母さんが入ってきた。

「なになに?」

私の手元を覗き込んで

「うわー、久美ちゃん凄いね〜。手紙ってこういう事が出来るよねー。」

と声をあげる。お母さんが感心している様子に私は満足してダイニングの椅子に座って久美ちゃんの手紙を隅から隅まで読んだ。


 1枚目には先生やクラスメートの似顔絵に吹き出しがついていて、その子がよく言う言葉や面白いセリフが書かれていた。昨年の担任だった田中先生には「おーい、ちゅうも〜く」というよく聞いた言葉。いつもふざけている渡辺くんには「ぶりぶりぶりり〜ん」真面目な妙ちゃんは「センセーに相談するから!」お洒落な由美ちゃんの瞳はキラキラだ。

みんなすごくよく特徴が掴んであった。

 2枚目には久美ちゃんの家族の似顔絵。吹き出しはなかったけれど、おばさんは怒った顔だし、おじさんは寝転がってお尻をかいている。弟の駿くんは泣き顔。お婆ちゃんは隅に小さく書いてあるけれど、お花を持ってニコニコと笑っている。知っている人達だから、その絵の雰囲気が分かって笑える。

 3枚目はちゃんとマンガみたいにいくつかのコマになっていた。

 かわいい女の子が主人公だ。女の子がある日偶然に出会った男の子を好きになる。どこの誰か分からないうちにコロナが流行して出かけられなくなってしまう。しばらく我慢してた女の子はある日家を飛び出して男の子を見つけ出す。その男の子も女の子が好きになっていて探していたと言ってハッピーエンドでおわっていた。A4の用紙1枚だけど、ちゃんとストーリーになっていた。

 私はひととおり読み終えて仲良しの久美ちゃんが、短いとはいえちゃんとマンガになっているものを書いた事に驚いていた。

 私はお休みの間、なにをやってたっけ?



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