第7話 久美ちゃんの不安

「どうしよう…お父さん、感染したら、どうしたらいい…?カクヨム小学校からは感染者は出しちゃいけないのに…私…お父さんも…校長先生に叱られる…」

 先生がポストに封筒を入れて去っていった夜、久美ちゃんが電話をしてきた。いつも元気な久美ちゃんが、凄く不安そうにしていた。

 悪い事に昨日、おじさんの会社の人が感染していたと連絡が入ったところだったのだ。

そこへ今日の校長先生の手紙を読んで、久美ちゃんは酷く動揺してしまったのだ。

「大丈夫だよ、きっと大丈夫だよ…」

私は久美ちゃんに、何をどう言ってあげたらいいのかわからなかった。久美ちゃんの不安を消してあげる事が出来なくてもどかしかった。すると私の様子を見ていたお母さんが

「ちょっと代わって」

と私の携帯をとった。

「久美ちゃん、おばさんよ。わかる?」

久美ちゃんの返答を聞いてお母さんは久美ちゃんに話し始めた。

「お父さん心配だね。でもね、お父さんは、その感染した会社の人とどのくらい一緒にいたのかな?お父さんは何と言ってる?」

お母さんは久美ちゃんの返事を聞きながら、ゆっくりと話した。

「会社の廊下で挨拶しただけなのね。お互いにマスクをして。じゃあ、おばさんは大丈夫だと思う。あくまでも可能性だけど、久美ちゃんのお父さんが、その人から感染させられたとは、おばさんは思えないな。お父さんも大丈夫だといってるでしょう。保健所の人も久美ちゃんのお父さんを濃厚接触者とは見ていない。大丈夫。」

「それにね、カクヨム小学校から感染者が出ても、それは仕方ない事なのよ。校長先生から叱られる事なんて事は絶対にない。感染した人が悪いわけじゃないもの。そんな事は絶対に思ってはいけないことよ。校長先生はみんなの事が大事で…大事に思い過ぎて、感染して欲しくないなと思ったの。それが、ちょっと間違えて書いちゃったんだと思う。だから、安心して。さあ、うちの子に楽しい話しを聞かせてあげて」

 お母さんの話しに久美ちゃんは、やっと少し落ち着いたようだった。

「ありがとう。昨日、お父さんの会社の人が感染したって聞いた時は、ヘェーて思っただけだったんだけど…今日の校長先生の手紙を読んでたら、なんか感染した人は悪い人だと思われるのかと思っちゃって…。へへへ…」

 少し恥ずかしそうに笑う久美ちゃんの声を聞いて、私はお母さんって凄いなと思った。

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