第26話 フレイン=リフレリア

「モルさん絶対こっち見ないでくださいよ! 見たら殺しますからね! フリじゃないですよ!」


 梯子の変身を解いたアスティが話しかけてくる。アスティが着ていた服に関しては僧侶が持っており、今真後ろで着替えているというわけだ。

 

「よしこれでやっと魔法使いの手がかりが探せるな」


 後ろでもぞもぞしていたアスティはようやく着替え終わったらしい、大きいため息が聞こえてきた。


「私が梯子になったおかげですけどね……。でその魔法使いさんの手がかりはどこにあるんですか?」


「確かに……一切考えていなかった。というよりその場のノリで解決できると思っていたが何をしていいか分からんな、ははっ」


「馬鹿なんですかモルさん、何笑ってるんですか! ははっじゃないですよ肝心の所がふわっふわじゃないですか!」


「よし、僧侶、俺たちはこれからどうすればいいんだ?」

 

「丸投げしないでくださいよ……でもまあ研究室に行こうと思っています。そこなら何を研究していたか分かりますし、もしかしたら何か手がかりが手に入るかもしれません」


「よし、さすが僧侶だ良いこと言うな! で、その研究室ってのはどこにあるんだ?」


「少しは自分の頭を使ってくださいよ……。残念ですが私も場所までは分かりません」


「そうか、じゃあその場所を特定しないと行けないな……。僧侶、何かいい方法ないか?」


「何も考える気ないじゃないですか、その頭に詰まっている脳みそはお飾りですか? まあ卒業名簿を見るか誰かに聞けばいいんじゃないですかね? まあ後者はリスクが高いですし、前者は名簿がどこにあるかわからないっていう問題がありますけどね」


 名簿か人に聞くか、二択か。名簿なんてどこにあるか分からないし、やることは一つだな。


「その辺の魔法使いを捕まえて聞き出そう。一人の所を襲えば抵抗なんてできないだろう」


「ええ……モルさんって勇者でしたよね……。なんかやることがもはや犯罪者というか……罪を犯すのに慣れすぎてませんか?」


「ははっ、まあここまできたら選んでいられないからな、やれることをやるだけさ」


「格好良く言ってますけど勇者失格ですねその発言。段々と勇者さんが盗賊かなにかかと思えてきましたよ」


「おっ、早速いたぞ。都合の良いことに周りに人はいない、そして一人だけで歩っている。アスティ、僧侶、援護は任せた。ちょっと誘拐してくるわ!」


「そんなピクニックに行くみたいに気軽に言われても……あ、ちょっと勇者さん!」


 背後からバレないように忍び込みタイミングを見計らう。アスティよりも小柄な女の魔法使い、近接戦闘であれば赤子の手をひねるより容易い。


 こっそり近づいて……よしっ今だ。


「動いたら殺す。何か話しても殺す。抵抗はするなよ、こっちの要求に従えば無事返してやろう。分かったか? 分かったら首を立てに振れ」


 女の子は首をしきりに縦に振っている。首元にはナイフを突き付けているんだ、抵抗はできないだろう。なんだかもはや勇者とは呼べない畜生に成り下がってる気がするが気のせいだろう、無視しよう。


「よし、それでいい。歩きづらいからこの拘束は解くがもし抵抗したら分かってるだろうな?」


「……は、はい……」


 彼女は震えていた。それもそうだろうこんな犯罪者まがいの男に脅されているんだ、恐怖しかないはずだ。


「よし、捕まえてきたぞ。これで奴の居場所も聞き出せるな」


 僧侶とアスティに向け戦利品を見せつける。なんだかんだで俺一人でどうにかなったな。さすがは俺だ、褒めるがいい。


「……畜生じゃないですか……抵抗もしない女性とにナイフを突き付けてる勇者さんを見てこのパーティに入ったことを改めて後悔しましたよ……」


「家畜以下の所業じゃないですかモルさん……。手際が良すぎてもうこの人に着いていくのは辞めようと思いましたよ……」


 二人からの侮蔑の眼差しを一身に受ける。なあに、慣れたもんさこんなもの。侮蔑の死線なんて太陽光と同じよ、日光浴みたいなもんだこんなもん。


「さて、一つ聞きたいんだが魔法使いの……魔法使いの……あいつの名前なんだっけか……。僧侶、分かるか?」


 普段職業で呼び合っているせいか名前を忘れてしまった。さらに言うと僧侶の名前すら思い出せない。


「何で肝心なとこをど忘れするんですかあなたは……。私は分かりませんよ、名前教えてもらっていないですし」


 そう言えばそうだった、自己紹介の時に職業だけ言ってそれっきりだったっけか。こんなことなら真面目に紹介するんだった……。


「モルさん、どうするんですか! 名前を思い出さないと何も進みませんよ、思い出してください!」


 そうは言ったってなあ……物覚え悪いからな俺、欠片も思い出せん。出て来る気配すらない。


「身長は僧侶より少し小さいくらいで……喋り方は軽く、妹みたいな感じで……炎魔法が得意な卒業生がいるんだが分からないか? お前」


 身を守る様に縮こまり、こちらを上目遣いで伺っている女の子に話しを振ってみたが頭を左右にぶんぶんと振って否定している。


「えっと……炎魔法を選考してる生徒はここにはたくさんいますし……それだけでは分からないです、ごめんなさい……ごめんなさい……」


「これだけじゃ無理か……。やっとここまで来たのに、こんな所で躓くとはなあ……」


「元はと言えば勇者さんが覚えてないのが悪いんじゃないですか。何か思い出せないんですか? 最初の一文字とかその程度でもいいですから」


「うーん、なんかリズムのいい名前だったきがするなあ……これで分かるか? 女」


「リ、リズムのいい名前……ですか……? えっと……全く思いつきません……ごめんなさい……」


「勇者さん馬鹿なんですか? なんですかリズムのいい名前って、そんなことで分かるはずないじゃないですか。もっと何かないんですか!」


「そんなこと言われても思い出せんもんは思い出せん。あとは……ローブが青かったな」


「青ですか……そういわれても……ローブの色は自由ですから青を使ってる生徒もここにはいっぱいいますし……分からないです……ごめんなさい……」


「モルさん、女の子が困ってるじゃないですか! そんなんで分かるはずないでしょ! なんで肝心な時に何も分からないんですか!」


 そうは言われても俺が知ってることなんてそれくらいしかない。あいつは自分のことなんて一切話そうとしなかったから。


「だめだこれ以上は出てこない。あと強いて言うなら……銀髪だったよなあいつ」


「銀髪の人なんてその辺にいっぱいいるじゃないですか! 馬鹿なんですか勇者さんは!」


「銀髪……なんですか? その人は」


 女が不思議そうに声を上げる。


「ああ、そうだ銀髪だ。だけどそれがどうしたんだ? これで何か分かるのか?」


「えっと……普通の魔法使いは使っている魔法の属性によって髪の色が変わるんです……私であれば水系の魔法が得意なのでこんな風に青くなっちゃってるんです……」


 女がローブをめくり髪を見せてくる。確かに綺麗な青色に染まっていた。


「そうだったのか初めて知ったよ。でそれが銀髪とどう関係があるんだ?」


「えっと……私達の魔法は四大元素とそれから派生した八つの現象を元にしているんです、なので髪の色も基本的に一二種類に別れます。でも……銀色になる魔法なんて私が知る限りでは見たことないです……」


「そうだったんですね、珍しい色をしてたんですね魔法使いさんは。気づきませんでしたよ」


 珍しい? それで片付けてしまっていいのか? これってあいつの魔法に関わる重要なことじゃないのか?


「それで……この学校に一人だけ……銀髪の人がいたと私も聞いています……。とても有名だったから……多分誰でもその名前は知ってると思います……」


 いや今は置いていこう、それよりも名前だ。


「なんて言うんだその魔法使いの名前は」


「その人の名前は《フレイン=リフレリア》。四大魔法を極めた最初の魔法使いと言われています」

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