第104話「なっ、俺を踏み台にした――!?」

 俺は両手を前方上方に差し出し、完璧なタイミングでキャッチしようとして――、


 ダダダダダッ!


 しかしそこでなぜか、ピースケが俺に向かって猛然と走って来るのを、俺は視界の端で捉えていた。


(なんだ!? 俺にタックルでもする気か? まさかな? いや、フライングディスクは円盤の格闘技。掟破りの危険タックルの可能性は捨てきれないぞ!)


 まさかとは思いながらも、しかしタックルに備えてわずかに身体を固くした俺に向かって、ピースケがジャンプした!


 そして俺の太ももを足場にし、三角跳びの要領で今日一番のハイジャンプを見せる!


 シュバぁッ!


 Flying the sky!

 ピースケの小さな身体が大空を舞った!


「なっ、俺を踏み台にした――!?」


 驚く俺を眼下に、ピースケはフライングディスクを見事に空中キャッチした!


(やられた! まさかこんな大技を隠し持っていたなんて――!)


 シュタン!

 軽やかに地面に降り立ったピースケが、勝利の証たるフライングディスクを咥えたまま俺を振り返る。


 しかしその瞳には、俺をあざ笑うような負の感情はなく、ただただ『やったよ! 褒めて褒めて』という純粋さしか感じられない。


 ピースケ的には今のも、勝負ってよりも、みんなで楽しく遊んで楽しいってことなんだろうな。


「やれやれ、お前は本当にできたワンコだよ」

 俺は素直に敗北を認めた。


 そこへ春香が、てこてこと歩いてやってくる。


「こーへい、お疲れさま。ナイスファイト♪」

「サンキュー」


「ピースケもナイスジャンプ♪ まさかこーへいを足場にするなんて、思ってもみなかったし」


 褒められたピースケは尻尾をフリフリ嬉しそうな様子で、咥えたフライングディスクを春香に返した。

 フライングディスクを回収した春香が、ピースケの頭をワシャワシャっと撫でる。


「本当にナイスジャンプだったよな。こんなに高く飛べるなんて思ってなかった。キャッチしたの、俺の顔の高さくらいはあったぞ?」


「柴犬って、けっこう運動能力が高い犬種なの。それに大好きなこーへいとの勝負だから、ピースケも力いっぱいに遊んだんじゃないかな? こーへいに自分の凄いところを見て欲しかったんだよ」


「ピースケ、マジですごかったぞ? また今度一緒にフライングディスクをしような」

 ブンブンブンブン!


「いいよねぇ。男の友情っていいよねぇ。今日から始まる熱いライバル対決の物語だねぇ」


 春香が妙につやっぽく言ったので、俺は感情を極めてフラットにしながら「そうだな」と答えた。


 春香の頬がほんのり赤いのは、夕日が照らしているせいだ。

 きっとそうだ。

 そうに違いない。


「さてと、帰るか」

「帰ろっか」

 ブンブンブンブン!


 こうして俺と春香とピースケの初めてのドッグランは、ワンコ遊具の全制覇を成し遂げ、フライングディスクで激しいバトルを繰り広げ、最後にピースケの運動能力の高さに驚かされて、幕を閉じたのだった。



――――――――


いつも応援ありがとうございます(*'ω'*)

これにて書籍第2巻・発売記念の更新は終了となります。


・放課後バカップル編

・図書室でテスト勉強編

・ドッグラン編


今回はこの3本でお送りしました。

楽しんでいただけましたでしょうか?


文字数的には6万3000字書いたので、ラノベ1冊弱くらいに相当します。

もしかして結構がんばった!?


かなりの分量を最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。

読者の皆さんの応援が、とても励みになっていますよ!٩( ''ω'' )وウォォォ


まだ企画が進んでいるらしいコミカライズが始まった時などに、この続きを書ければなと思っております。


(ちなみにコミカライズに関しては、本当に何も聞かされておりません。何の誇張もなく、コミカライズ企画が進行中としか聞かされていないので……)


というわけで、今回の更新はこれにて完結です。


これからも、


子犬を助けたらクラスで人気の美少女が俺だけ名前で呼び始めた。「もぅ、こーへいのえっち......」


を応援よろしくお願いいたします(ぺこり

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【書籍化】子犬を助けたらクラスで人気の美少女が俺だけ名前で呼び始めた。「もぅ、こーへいのえっち......」【Web版】【コミカライズ企画進行中!】 マナシロカナタ✨2巻発売✨子犬を助けた~ @kanatan37

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