第93話 いざ約束の地・ドッグランへ――!
◇
施設の入り口から中に入ると、
「受付してくるから、こーへいはここで待っててくれる?」
「わかった」
「すぐに終わらせてくるからね」
「そんなに急がなくてもいいってば」
そんな会話をすると、春香はピースケを連れて受付へと向かった。
ピースケと一緒に受付のお姉さんとやり取りしている春香を、俺は邪魔にならないように静かに待つ。
春香は何枚かの用紙に書き込んだり、リュックから証明書のような紙――さっき言っていたワクチン接種済の証明書だろうか――を取り出して提示したりしていた。
テキパキとやりとりをしていて、事前の準備は万端といった感じだ。
でもそうか。
証明書とかを入れるために、今日はリュックを背負っていたんだな。
リュックの中には他にも、投げて遊ぶプラスチックの円盤――フライングディスクも見え隠れしていた。
なんとはなしに壁に貼ってある料金表を見ると、平日の入園料は1ワンコあたり100円と書いてあるのが目に入る。
「安っ……!?」
おっとと、思わず声に出しちゃったよ。
公営とはいえ明らかに安すぎで、多分だけど利用料金っていうよりかは、タダってのをいいことに入り浸る変な客や、モンスター飼い主をシャットアウトするための、最低限の金額なのかなと、ちょっと思った。
バーベキューなどで、わずかな金額であっても入場料を無料→有料にするだけで、マナーの悪いやっかい客や、用もないのに長時間居座る不法占拠者が激減する、みたいなニュースを見聞きしたことがあったからだ。
受付のお姉さんも利用客の受付をする時以外は、何か別の仕事をメインでしているっぽいし。
しかも平日は安いだけでなく、昼間だと利用者も少なくて、ほとんど貸し切り状態で気兼ねなく遊べるんだから、そりゃあ春香も平日の昼間に来たがるよな。
そんなことを考えていると、無事に受付を終えた春香がピースケを連れて戻ってきた。
「受付、お疲れさん」
「ごめんね、待たせちゃって」
「ぜんぜん待ってないっての」
「そう?」
「それにしても、平日の昼間は安いって聞いてたけど、本当に安いんだな。料金表を見て驚いたよ」
「でしょでしょ? 高校生のお財布にも優しくて助かるよねー」
「あと、これって犬の利用料金しか書いてないけど、人間はタダなのかな?」
「もちろんタダだよー」
「つまりピースケの100円分だけで遊べるってことなんだよな?」
「そーゆーことだね。これはもう平日に来ないとでしょ?」
「よーく、わかったよ。じゃあ早速行くか。ピースケも今か今かと待ちわびているみたいだしな」
「うん♪ 行くよピースケ。Let’s go!」
ブンブンブンブン!
春香の言葉に、ピースケが尻尾を元気よく振って応える。
こうして俺、春香、ピースケの出来立てホヤホヤなカップルパーティは、中間テストという長い戦いの果てに、ついに約束の地・ドッグランへと降り立った――!!
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