第90話 中間テストの手応え
■5月23日■
図書室で頻繁に勉強会をし、放課後カラオケデートでイチャイチャデュエットをして気分転換したことで、週末のテスト勉強の追い込みも大いにはかどり。
そして迎えた中間テスト初日。
「それでは試験開始。必ず最初に名前を書くように」
試験監督をする担任の指示の元、俺は高校生になって初めての定期考査に臨んだ――。
そして放課後。
「こーへい、どうだった?」
俺の目の前の席で、くるりと背を向けた春香がテストの出来を尋ねてきた。
「今日は全教科、思っていた以上にできたと思う」
「それはよかったね」
「春香はどうだったんだ?」
「わたしも結構できたよ。苦手の数学も一応全部答えは埋めたし、今日までの勉強の成果はバッチリかな」
シュッシュ!
いい戦いができたよ、とばかりに春香が軽快なエアジャブを放った。
「お互い出足は好調って感じか」
「この調子でテスト週間、乗り切ろうね」
「ああ、がんばろうな」
俺と春香は寄り道もせずにまっすぐ家に帰って、引き続きテスト勉強を頑張ることにした。
■5月27日■
テスト漬けの1週間、いわゆるテスト週間も今日で最後。
その前のテスト勉強期間も含めれば、実に2週間にも渡る勉強漬けの日々を締めくくる週末の金曜日。
1学期中間テストの最後の科目である保健体育のテストが終わると、そのまま流れで帰りのホームルームが始まった。
それもすぐに終わって放課後となり、解放感を爆発させるように一気に騒がしくなったクラスメイトたち同様に、俺は解放感と達成感に包まれながらうーんと大きく伸びをした。
「高校は勉強の難易度が上がる分だけ、テスト明けの開放感も中学校の時よりはるかに気持ちいいなぁ」
伸びをしながらしみじみと呟いた俺に、
「やっと終わったねー。テストどうだった?」
カバンを持ってくるりと後ろを向いた春香が尋ねてきた。
もはや中間テストは過去のものとなり果て、それを体現するかのように春香の表情も楽しそうの一言だ。
「昨日までと変わらず順調だったな。春香はどうだった?」
正直、成績がかなりギリギリで入学したとは思えないくらいに、俺は中間テストに手応えを感じていた。
元々、毎日真面目に宿題をやっていたのに加えて、今は春香がいるからな。
彼女にカッコ悪いところを見せられないと思うと、テスト前の勉強がものすごくはかどったのだ。
ふぅ、やれやれ。
これがリアル・ラブ注入ってわけか。
少なくとも1教科たりとも赤点を取る可能性は、限りなくゼロのはずだ。
「わたしも今日もバッチリいい感じだよ。名前の書き忘れでもなければ余裕のよっちゃんだから」
「よっちゃんって、誰?」
「え? さぁ?」
「春香の知り合いじゃないのか?」
「違うよ?」
まぁ別にいいんだけど。
「さてと、今日は2時間目終わりだからだいぶ時間があるよな。この後どうする?」
「まだお昼前でしょ? いったん帰って、午後から一緒にドッグランに行かない?」
「ドッグランってたしか、リード無しで犬を遊ばせられるところだよな?」
「そうだよー。場所によってはワンコ用の専用遊具とかも置いてあるの」
「それは楽しそうだな」
「ピースケも必要なワクチンの接種がこの前終わったし、早く連れていってあげたかったんだよねー」
「ワクチンとかも必要なのか」
「他の犬とも触れ合うからね。伝染病をうつしたり、うつされたりしないようにワクチンの接種が必須なの」
「なるほどなぁ。こういう細かいことって、実際に飼ってる人じゃないとわからないよな」
「あとはね、今日は平日だから料金が安いの。平日の昼間は、ほとんどタダだから」
「じゃあ決まりだな。今日は昼からドッグランだ」
俺と春香は、ピースケを初めてのドッグランに連れていってあげることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます