第84話 気分転換
■5月20日■
「ねぇねぇ、こーへい。今日は放課後遊びに行かない?」
そろそろ中間テストが目の前に迫りつつある、とあるお昼休み。
チャイムが鳴ると同時に春香が遊びに誘ってきた。
「いいな。俺もそろそろ息抜きをしたいって思ってたんだよな」
もちろん俺は二つ返事でOKする。
「だよねー」
「直前の土日は勉強漬けだろうから、リフレッシュ休みを入れるとしたらここだよな」
「そうそう。わかってるじゃん、こーへい」
テスト勉強は順調だったが、その分疲れも溜まっていた。
疲れというかストレスかな?
人間は本来、長時間机に座っているような生き物じゃないんだと思う。
なのでここは一度パーッとストレスを発散させて、最後の追い込みに繋げるのが高校生らしいあり方というものだろう。
というわけで、俺たちは帰りに駅前によってブラブラすることにした。
しかしいまや俺たちはカップル。
よって初めての正式な放課後デートということになる。
俺は千夏に『今日は勉強会はしないから図書室には来るなよ』とラインを入れると、春香の作ってくれたお弁当を一緒に食べながら、放課後デートのプランを考え始めた。
彼氏として、彼女を満足させないといけないからな。
ふふっ、待ってろよ春香。
それはもうすごいデートプランを組み上げてやるからな!
◇
そして迎えた放課後。
「今日はカラオケに行こう」
俺は必死に考え抜いた結果、どうしようもないほどに平凡な結論に落ち着いていた。
だがしかしそれも仕方ないことだったのだ。
以下、言い訳。
だってそもそも放課後スタートだし、テスト前だから遅い時間までは無理だし、お金がかかるようなところはお小遣い的にも無理だ。
しかもプランを考える時間は休み時間しかなかったのだ。
テスト前の授業中にデートプランを考えるなんてのは、さすがに本末転倒だからな。
つまりすごいデートプランを考えるには何もかもが足りなかったのだ。
言い訳終了。
「カラオケ、いいね~」
「平凡でごめんな」
「なんでこーへいが謝るの?」
春香が小さく小首をかしげる。
「いや、なんとなく」
彼氏として、彼女にスマートなところを見せたい気持ちがあったんだけど、それを言うと絶対に春香がからかってくるだろうから、言わないでおいた。
『そんなにわたしのことが好きなの~? もぅ、こーへいってば可愛いんだからぁ』
とか絶対言われるし。
「じゃあすぐに行こうよ? 遅くなると学生でいっぱいになりそうだから」
「どこの学校も今はだいたいテスト前だろ? 大丈夫じゃないか?」
「クラスでもわたしたちみたいに息抜きに行く子、結構いるみたいだから、他の学校の生徒も同じじゃないかなぁって」
「みんな考えることは一緒か。なら早いに越したことはないな。駅前のワンカラでいいよな?」
「ワンカラならわたし、アプリの50%オフクーポンがあるよ?」
「マジで?」
「マジマジ。期限が今月末までだったからちょうど良かったかも」
「じゃあ行くか」
「うん♪」
というわけで、俺たちは普段の通学路から大きくそれて駅前方向に寄り道すると、ワンワンカラオケ――通称ワンカラに入店した。
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