第77話 中に入れちゃったし♪
「ぷは――っ」
舌に続いて唇が離れ、ツーっと、どちらのものともしれない唾液がわずかに糸を引いてから、切れた。
「……」
「……」
お互いに口元に軽く触れて唾液の後をぬぐいながら、至近距離で無言で見つめ合う俺と春香。
春香の顔が真っ赤に燃えていた。
多分、今まで見た中で一番赤いんじゃないかな?
春香は振る舞いこそ恋愛ポジティブ押せ押せ女子だけど、根は恥ずかしがり屋の純情乙女だから、えっちな舌入れキッスは相当恥ずかしかったに違いない。
「………………」
「………………」
春香も同じような気持ちだったと思う。
俺と春香はこそばゆい空気感の中、無言で見つめ合っていた。
先に口を開いたのは春香だった。
「こーへいの顔、真っ赤だし……多分今まで見た中で一番ってくらいに真っ赤だよ? タコさんみたい」
どうやら俺の顔も相当赤くなっているようだ。
「そりゃ、な。だって今の、でぃ、ディープキスってやつだろ?」
「舌、入れちゃったもんね。えへへっ♪ 中に入れちゃったし♪」
「お、おう……」
おいこら春香、女の子が『中に入れちゃったし♪』とか言うなよな。
ついイケナイ想像をしちゃうだろ?
男子高校生の無限の想像力を舐めんなよ?
女子高生が箸が転んでもおかしい年頃なら、男子高校生は箸が転んでもエロスを感じる年頃なんだからな?
いや、学校の図書室でこっそり隠れてディープキスする時点で、相当イケナイんだけれども。
先生に見つかったら、マッハで生活指導室に呼び出されること間違いなしなんだけれども。
「こういうキスって初めてだったんだけど、舌が絡まってすっごくえっちだったよね♪」
「ちょ、おい春香。感想はやめるんだ。ただでさえ恥ずかしいのに、さらにめちゃくちゃ恥ずかしくなるだろ」
「嬉しい気持ちは素直に伝えないと損だしー」
「それは否定はしないけどさ」
「しかも10分くらい入れてたよねー」
「そんなに長くは入れてないだろ?」
……入れてなかったと思うぞ?
いや、どうだろう。
なにせ初めて感じる他人の舌のなまめかしい感触に言いようもない程に興奮して、完全に没入しちゃってたからな。
「入れてたよーだ。すっごく長い時間入れてたよーだ。もぅ、こーへいのえっち……」
「おいおい、先に舌を入れてきたのは春香の方だろ? つまり、えっちなのは俺じゃなくて春香の方じゃないか」
もぅ、春香のえっち……なんちゃって。
「ちがいまーす。その前に舌で舐めてきたのはこーへいでしたー。いきなりえっちな舐め方してきたから、わたし心の準備ができてなくて、すっごくびっくりしたんだからね?」
「えっちな舐め方はしてないだろ、えっちな舐め方は。舌の先っぽで、チロッと軽く春香の唇を舐めただけじゃないか」
「先っぽでもなんでも、舌で舐めるのが、もうえっちなんですー。えっちっちこーへいなんですー」
春香は俺をえっちえっちとからかってくるものの。
「いやほんと、マジでそういうつもりはなかったんだぞ? 今日は春香に散々からかわれたから、今度は俺が春香をびっくりさせてやろうと思っただけだったから」
「えっ? こーへいが大人なキスしたくて、だから唇を舐めてアピールしてきたんじゃなかったの?」
「単に春香を驚かすつもりだったんだよ。そしたら春香の舌がニュっと入ってきたから、逆に俺がビックリさせられたな」
「え……?」
俺の説明をそこまで聞いた途端に、ここまで饒舌だった春香がピシッと固まった。
さらに、これ以上はもう赤くならないだろうって思っていた春香の顔が、さらに真っ赤に染まってしまった。
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