第76話 図書室キッス
ちゅっちゅ、と小鳥がついばむような軽いキスをする。
だけど春香はやっぱり緊張で身体をわずかに
恥ずかしいなら、こんなところでキスのおねだりなんてしなきゃいいのにと思うものの。
付き合い始めたばかりだから気持ちが燃えがったり、キスとか恋人つなぎとかいろいろやってみたい気持ちも、実はわからなくもなかったりする。
俺は春香を安心させるように、春香と恋人つなぎをしてる手と反対の手で、春香の身体を優しく抱き寄せながら、何度も何度も春香とキスを交わした。
「ちゅ、ん、ちゅ――」
もちろん図書室は利用者が少ないとはいえ、完全にゼロというわけじゃない。
人が来たらすぐ気づけるようにと、俺が
「んっ、ん、ちゅ――」
一生懸命キスをしている春香の真っ赤な顔が、すぐ目の前にあった。
目を閉じて必死に俺のキスに応えようとしている春香の姿が、俺の興奮をさらに激しくかきたててくる。
加えて、ほんのわずかないたずら心が俺の心に芽生えていた。
さっきから抱き着かれたり、ASMRをされたりと、春香にいいようにからかわれてばっかりだったからな。
ここいらで、やられてばかりのヘタレな航平君ではないということを、春香に見せつけてやろうじゃないか。
俺はやる時はやる男なのだ。
俺は意を決すると、キスをしながらそっと小さく舌を出した。
舌の先っぽで、春香の
「ふわっ!? んんっ、はぅ――」
驚いたんだろう。
切なげな声を小さく上げた春香が、身悶えながらキュッと身体を縮こまらせたのが伝わってくる。
よしよし、作戦は大成功だ。
ちょっと舌の先っぽで唇を舐めただけで、こんなに敏感に反応しちゃうだなんて、まったく俺の彼女は
「ひぁっ!?」
俺はさっきの春香よりも、はるかに切ない声を上げてしまった。
声を出してしまってから、ここは図書室だから声は我慢しろと、慌てて自分の心に言い聞かせる。
でも今のは仕方なかったんだよ。
というのもだ。
春香の舌がおずおずと、だけどしっかりと意思をもって俺の口内に侵入すると、ぬるりと俺の舌に絡んできたからだ。
もう一度言おう、春香の舌が俺の口の中に入ってきて、俺の舌と絡んできたのだ。
しかも春香の濡れそぼった舌は、ヌルヌルといやらしく形を変えては俺の舌と絡まり合って、離れようとはしないのだ。
さらにさらに、それだけでなく上あごを舐め、歯茎を舐め、頬の裏を舐めと、春香の舌は俺の口の中で艶めかしくうごめき続けた。
「んっ……」
初めて味わった情熱的で生々しい舌の感触。
俺は込み上げてくる快感に、切なく身体を震わせる。
もっと春香の舌を感じたい、春香の熱を堪能したい。
湧き上がってくる強い情動に突き動かされて、
「ちゅ、れろ、ちゅ――」
誰に邪魔されることもない静謐な図書室で、俺は我を忘れて春香と舌を絡め続けたのだった。
いったいどれくらいの間、そうしていただろうか。
2,3分のようにも感じられたし、10分以上だったかもしれない。
時間感覚はおかしくなっていたし、そもそも時間なんて気にする余裕はこの時の俺にはありはしなかった。
それでもなんとなくそろそろかな、みたいなタイミングで、俺と春香はどちらからともなくゆっくりと絡み合った舌を離した。
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