【書籍化】子犬を助けたらクラスで人気の美少女が俺だけ名前で呼び始めた。「もぅ、こーへいのえっち......」【Web版】【コミカライズ企画進行中!】
第57話 「せめて感想を言って欲しいし、感想を!」
第57話 「せめて感想を言って欲しいし、感想を!」
「ごめんごめん。そうだな……うん、春香を感じた」
俺は素直に気持ちを伝えたんだけど――、
「ふぇぇぇぇ――!?」
俺の感想を聞いた春香が、すっとんきょうな声をあげた。
っておい!?
俺はなにを本能のおもむくままに心情を吐露しちゃってるんだよ!?
春香を感じたとかちょっと、っていうかかなり変態っぽいし!
少なくとももっと気の利いた物言いってもんがあるだろ!?
慌てて春香を見ると、
「ちょ、こーへいってばストレートすぎだよ……」
両の人差し指をつんつくしながら、真っ赤な顔をして視線を泳がせていた。
ふぅ、やれやれ、なんで春香はこんなに可愛いんだろうな?
そんな可愛い照れりこ春香は、夏を先取りしたような涼しげな姿だった。
ノースリーブの白いブラウスに、明るい萌葱色のスカート。
さらに色を合わせた薄緑の薄手のカーディガンを、ふんわりと羽織っている。
ブラウスの丈も短めで、ふとした拍子におへそが見えてしまいそうなほどだ。
足下は涼しげなミュールで、肩にかけた大きめのバッグにはきっと水着が入ってるんだろう。
全体を通して夏を先取りした、今日みたいな暑くなるだろう日にとても似合ったオシャレな装いだった。
つまり控えめに言って最高に可愛かった。
「そんなにまじまじと見られると、ちょっと恥ずかしいかも――うん、ちょっと気合い入れてきたし――っていうかこーへい! 見るのはいいけどせめて感想を言って欲しいし、感想を!」
顔を赤くしながら照れギレしながら言われて、見とれてしまっていた俺ははっと我に返った。
「ああ、うん、えっと、その、すげーよく似合ってる」
おう、あまりにもあまりすぎるだろうよ、俺……。
あれだな。
不意打ち目隠くし「だーれにゃん?」が思ってた以上に、俺の心を動揺させてるっぽいな。
まだちょっとドギマギが続いてて、なんかこう照れちゃっていつもみたいに話せないっていうか。
ただ幸いなことに、春香は今のヘタレ感想でも満足だったようで。
お互いちょっと言葉が出なくて所在なさげに見つめ合うこと数秒。
「そ、そろそろ、いこっか?」
春香が上目づかいでそう切り出してくれて、俺たちはやっと動き出したのだった。
駅構内へと入ると、ほぼ待つことなく電車がホームへと滑り込んでくる。
電車に乗っている時間はわずか2駅だけなので、座らずに扉付近で立ったままでいることにした。
すると電車が少し急発進気味だったせいで、
「わっ、たた――!?」
春香がバランスを崩して、向かい合った俺の方へと寄りかかってきた。
「大丈夫?」
そういって軽く受け止めたけど、うっ、いつもとちょっと匂いが違うような……なんだかいつもより甘い匂いがするような、しないような。
春香はいつもいい匂いなんだけど、今日はキンモクセイのような特段いい匂いがしてきて、俺は少しそわそわしてしまっていた。
抱きとめた身体は柔らかくて。
俺はむくむくといけない感情が、無性に盛り上がってきたのを感じていた。
ふぅ、落ち着けよ広瀬航平。
こういう時はアレだ、歴代中華王朝の出番だ。
殷・周・春秋戦国・秦・前漢・新・後漢・三国・晋・五胡十六国・南北朝――。
俺は習ったばかりの歴代中華王朝を、心の中でアルプス一万尺の歌にのせて繰り返し歌うことで、いけない感情をやりすごした。
「あはは、ごめんね。バッグがおっきくてちょっとバランスを崩しちゃった……ところでその、いやってわけじゃないんだけど、電車の中だし人目もあるし、その、そろそろ離してほしいかも?」
軽く受け止めたつもりがその実、腰のあたりをしっかと抱きしめていたことに気が付いたのは、春香にそう言われてからだった。
……ほんとだよ、ほんとだってば。
決して春香の抱き心地がよくて、もうちょっとこうしていたいな~なんて思ってなかったから!
ぜんぜんちょっとしか思ってなかったから!
だってそりゃ、ちょっとは思うでしょ?
春香がすっごく可愛いんだもん!
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