第49話 「な、なななななくぁwせdrftgyふじこlp!!??」

「な、なななななくぁwせdrftgyふじこlp!!??」


「航平なに言ってるの?」

「わ、悪い。ちょっと、いやかなりの動揺をしてしまった。すー、はー……」


 俺は深呼吸をして気持ちを落ち着ける。


 っていうか!

 あの夜ってまさかあの夜のことかよ!?


 カッとなって春香に一方的にキレてしまって、ごめんなさいもガンスルーしちゃって、謝りに行ったら告白されて最後はキスしちゃったあの夜のこと!?


 なんで千夏がそのことを――って、あっ。

 俺はそこでハッと春香の言葉を思いだした。


『えっと、誰か奥にいたような気がしたんだけど――』


 別れ際に春香はそんなことを言っていた。

 その時は勘ちがいかな、みたいな結論だったんだけど、まさかあの時あそこに千夏がいたのか――!?


「あのあたりからだよね、航平が変わったのって。急に大人びてきたからビックリした」


「見てたならそう言ってくれよな……」

「え、言ってよかったの? 私なりに気を使って黙ってたんだけど。なら今度からはそうするね」


「……いや、黙っててくれてありがとう。黙っててくれた千夏の優しさに俺は心から感謝している」


 もし晩ご飯を呼びに来たときとかについでで話題にでも出されたら、俺は恥ずかしくて恥ずかしくて間違いなく部屋にひきこもってしまうだろう。


 そう言う意味では、お風呂に一緒に入ってるっていう今の逃げ場のないシチュエーションには感謝かもな……。


 いや、感謝なのか?

 よくわからん。

 まぁいいや。


「最近の航平は悪くないよ。ううん、むしろかなり素敵」

 千夏がまたそんなことを言ってくる。


「そ、そうか……」

 そして俺はそれに明確な言葉を返せないでいた。


 春香の顔が脳裏に浮かんできたからだ。


 告白失敗で、千夏への一方的な恋愛感情は終わってしまって。

 そこからは春香のことが好きなのかどうか、それだけを考えてきた。


 そして春香のことをだんだんと好きになっている自分に、俺は気がつき始めていた。


 でも終わったと思ってた千夏への恋が、実は終わってなかったとしたら――?


 千夏と春香。

 俺は今、究極の選択を迫られているんじゃないのか――?


「まぁすぐには答えは出せないよね。とりあえず私の気持ちは伝えたから、考えといてね?」


「千夏の気持ち……」


 俺のことを素敵だと言って付き合ってもいいって。

 それってつまり――、


「航平のことが好きってこと」


 千夏が、俺を好き……?


「でも俺のことは、異性じゃなくて家族としてしか見れないって――」


「前まではね。でももう今の航平は家族としては見れないくらいに、魅力的な1人の男の子になったから」


 千夏は笑顔が半分、真顔がもう半分って表情で俺への好意を伝えてくる。


「う……っ」


 全く想定外の展開の前に完全に言葉にきゅうしてしまった俺を見て、だけど千夏はどこまでも優しかった。


「まぁそう言うことだから考えといてよね。じゃあ身体も温もってきたし、そろそろ背中洗ってあげる」


「い、いや、いいよ。もう身体は洗ったし――」


「せっかくだから洗ってあげるってば。ほら上がって上がって」


「いや……そのな……?」

「どうしたの?」


 事ここに至って、俺にはどうしても立ちあがれない大きな事情があった。


 全裸の千夏と一緒にお風呂に入りながら告白された俺は、色んなことを考えてしまい。

 そしてその中には、つまりエロい想像もあったりしちゃったのだ。


 つまり下半身がですね、パオーンしちゃってるんだよ。


「ああ、そういうこと? 私は別に航平がおちんちん大きくしちゃってても気にしないよ? むしろ私に興奮してくれてるってことだし」


「当たり前のように気付かれてる!?」


「ほら、あがってあがって。久しぶりに洗いっこしようよ?」

「いや俺も洗うのか?」


「? ずっとそうしてきたでしょ?」

 千夏が、なに当たり前のことを聞いてるのって顔を向けてくる。


「じゃあまぁ、久しぶりに洗いっこしようかな……?」


「なんなら前も洗ってあげようか? サービスしちゃうよ?」

「さすがにそれは本気でまずいんで遠慮しとくかな……」

「そっ、残念」


 俺はと千夏は昔のようにお互いの背中とかを洗いっこした。

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