第46話 一緒にお風呂?

「……はい?」


 そしてお風呂場に、千夏が入ってくる――。


「ちょっ、おい千夏!? なにしてんだよ!?」


 俺はドアを開けて入ってきた千夏から慌てて視線をそらした。

 千夏の姿を視界に入れないように、首をひねって千夏と180度反対のお風呂場の壁をじっと見つめる。


 というのもだ。

 千夏が一糸まとわぬ全裸だったからなんだよ!


「どうしたの?」


「どうしたの、じゃないだろ? 今俺が入ってるんだけど……」


「見れば分かるわよ?」


「分かってるんならなんで千夏が入ってくるんだよ!? しかも裸で!」


 徹頭徹尾、何から何までおかしいだろ、常識的に考えて。

 だっていうのに――、


「もちろん航平と一緒にお風呂に入るためだけど?」

 それがなにか?みたいに千夏はさらっと答えるんだよ。


「いやいや、なに言ってんだよ? 俺たちもう高校生だろ」


「でもわたしたちは今もずっと幼馴染のお隣さんでしょ?」


「幼馴染でも高校生の男女が一緒に風呂は入らないだろ? だってほら、いろいろ目のやり場に困るしさ……」


 もう一度言おう、千夏は全裸だった。

 念のために説明しておくと、全裸っていうのは「完全に裸」って意味だからね?


 俺は最初に見てしまった千夏のシミ一つない真っ白な裸体を、これ以上見てしまわないようにと必死にお風呂場の壁を見続ける。


「あはは、それこそ今さらでしょ? それに昔だって一緒にお風呂に入ってた時に、航平がよく私の胸とかお尻を見てたの気づいてたよ?」


「ぶふぅ――っ!? けほっ、こほっ、えほっ――」


 ちょ、ちょっとぉ!?

 なに言ってくれちゃってんの!?


 思わずむせちゃっただろ!?


「ちょっと航平、だいじょうぶ?」

 千夏の心配そうな声が聞こえてくる。


 いやでも、そんな言うほどいつもマジマジ見てた、なんてことはなかったんだよ?

 ほんとほんと。


 そりゃね?

 俺も男の子だから、ちょっとじっくり見入っちゃったことが全くなかったとは言わないけどさ?


 俺はずっと千夏のことが好きだったわけだし。

 好きな女の子とお風呂に入って、まったく見るなって方が無理な話だろ?


 でもそんなあれやこれやが千夏にばっちり全部モロバレだったとか。


 それを今さら本人の口から知らされちゃって、俺は恥ずかしさと申し訳なさでいたたまれない気持ちでいっぱいだった……。


「ごめんな、つい出来心だったんだ……」

 もはや言い訳不能だった俺は素直に謝ることにした。


「ううん、それはいいの。だってわたしたちは幼馴染だしね。一緒にいればそういうこともあるよ」


「そ、そう……?」


 幼馴染すごいな。

 その一言で軽く済まされてしまうなんて。


 千夏と幼馴染で良かった!


「それでね、お昼ごはんの時に懐かしい話題が出たでしょ? だから久しぶりに航平の背中でも流してあげようかなって思ったんだ」


「いやでもな? 一緒にお風呂は、さすがにまずいだろ――って、はぁっ!?」


 千夏は俺の言葉を軽くスルーすると、軽くかけ湯をしてなんと湯船に入ってきたんだよ――!?


 ちゃぷん、と水面が音をたてたのがすごく耳に残った。

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