第34話 「わたしこーへいとならいつでもえっちオッケーなんだから」

「えっと……あの……その……」


「ね、コンビニでゴム買ってこ……? わたし、こーへいとならえっちしてもいいよ?」


 そんな童貞をKILLする的なセリフを上目づかいで言ってくる春香に、俺は激しく心を揺さぶられていた。


 春香とえっちしたいかと聞かれたら、もちろんしたい。

 とてもしたい。


 俺も年頃の男子高校生なので、えっちなことには興味津々だ。

 当たり前すぎてそこに議論の余地はない。


 もし俺が春香のことを心から好きだと断言できるなら、間違いなくこの流れでやっちゃってるだろう。


 というか好きな女の子から誘われるなんて夢みたいなシチュエーションで、やらない男子高校生なんていないだろ?


 だけど――、


「……やっぱりその、そういうのは、結婚を前提にお付き合いしないとだめだと思う」


 春香みたいな素敵な女の子に、中途半端な気持ちでしていいことじゃない――そんな風に俺は思ったんだ。


「ぶぅ、ここまでお膳立てしてるのに、こーへいのへたれ……でもそういう誠実なところは大好きだし♪」


「お、おう……」


「あーあ、こんなこーへいだから、既成事実さえ作ったらわたしを選んでくれるって思ったんだけどなー。外堀埋める作戦しーっぱい、ざんねん!」


「それはもはや外堀を埋めるどころか、完全に本丸が落城してると思うんだが……」


「でもえっちしたくなったらいつでも言ってね。わたしこーへいとならいつでもえっちオッケーなんだから」


 い、いつでもえっちオッケー!?


「えっと、その、うん……」

 俺は小さな声でうなずいた。


「あ、めっちゃ照れてるし。こーへいの顔真っ赤だよ」


「言っとくけど、そう言う春香もさっきからずっと顔が真っ赤だからな?」


「……う、うるさいし」

「あはは、照れてやんの」


「だってこーへいがコ、コンドームとか言わせるんだもん……セクハラだもん……セクハラこーへいだもん……」


「えっと、うん、それはほんとごめん」


「もうこーへいのばーか! へたれのくせに! 知らないもん!」

「ああもうごめんってば。アイスおごるから許してくれ」


「じゃあダッツおごりで」

「しゃーないな、おごってやろう」


「チョコミント味ね」

「そいつだけは許さん」


「半分食べてもいいよ?」

「悪いがノーサンキューだ」


 この後。

 俺はコンビニでハーゲンダッツを買ったんだけど、春香がその、薄いゴム的な『アレ』をさりげなく購入していたのが見えてしまった。


 どうやら外堀埋める作戦は、継続中のようだった。


 そんなこんなで春香の家に行って、楽しくおしゃべりしてたんだけど。


 チラッ、チラチラッ――。


 その間ずっと、春香の部屋のベッドがすごくすごく気になって気になって、仕方がなかった俺だった。


 だって春香が『アレ』を購入したってことは、つまりあとは俺の意思さえあれば、えっちしちゃう感じなのである。


 あえて何も言わなかったけど、俺がそわそわしてたことに、春香は間違いなく気づいてたよな。


 何を考えてたのかもろバレでちょっと恥ずかしい、春の終わりの放課後おうちデートだった。


 もちろん何もなかったよ?

 念のため。

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