第35話 「あ、先っぽ剥けてる……」

 土曜日の朝。


 学校が休みの俺はベッドの上で、気持ちよく二度寝からの惰眠をむさぼっていた。


 半分寝かけてて意識がちょっとだけある感じだ。

 ほんと二度寝ってなんでこんなに気持ちいいんだろうな……。

 

 そしてなんだろう……なんとも抱き心地がいいものがあるな。


 ぎゅ――。


「ぁ……ん……っ」


 本能のおもむくままに抱きしめると人肌のような温もりが返ってきて、それがとても幸せな気分にさせてくれるんだよ。


「ぁぅ……んっ……今、キ、キスしちゃったし……」


 さらに甘いいい匂いもしてきて、なんだろう、なんとなく知ってる匂いだな……なんだったかな……。


 抱き心地もどことなく知ってる感じで、華奢きゃしゃなんだけど柔らかくて、もっともっとよりいっそうぎゅっと抱きしめていたくなるんだよな……。


「ぁ、こーへい、そこはだめ……っ、だめじゃないけど、ん、ぁ……っ、か、硬いの、当たってるよぉ……ぁっ、んんっ」


 でもなんだろう。

 あ、あれだ。


 春香を抱きしめた時に似てるかも……柔らかくて暖かくてまるでほんとに春香を抱きしめてるみたいだ…………なんか切ない吐息も感じるし。


 ……吐息を感じる?

 ……春香を抱きしめた時に似てる?


「ぁ……っ」


 この声って……。


「って、え……?」


 俺はパチッと目を見開いた。


 するとなんということだろうか!?


 目の前に春香の顔がドアップであったんだ!


「こ、こーへい、おっはー……」


 挨拶しながらぎこちなく笑う春香の顔は真っ赤になっていて。


 そして俺はそんな春香をベッドの中で、思いっきり抱きしめてしまっていたのだと気が付いたのだった。


 春香を布団の中に引きずり込んで、ぎゅっと身体を密着させて抱きしめてしまってたんだよ。


 なんとなく唇にも、なにかと触れ合ったような感触が有るような無いような?


 しかも俺の足が春香の太ももの間に分け入ってたりもして、その密着度合ときたら抱き合うという言葉以外では説明不能で――。


「ど、どどどどういうこと!?」


 俺は慌てて春香を抱きしめていた手を離すと起き上がった――起き上がろうとした。


 するとまたまたなんということだろうか!?


 偶然にも春香の指が俺のハーフパンツにかかってしまって、俺が立つ動作と反比例してずりっとトランクスごとずり落ろしてしまったのだ!


「ふひぇっ――!? お、おちん、おふぅ――!?」


 謎の悲鳴を上げてビシリと固まってしまった春香の目は、俺のノーガード下半身にバッチリ釘付けになっていた。


 そして俺は膝立ちのまま、どうしよもうもなく朝勃あさだちしたアレを、寝転がる春香の目の前でこれでもかと見せつけてしまっていて――。


「お、男の子のって、こ、こんな大きくなるんだね……べ、勉強になったし……」


「う、うん……それはよかったよ……」


「えっと、朝勃あさだちって言うんだよね? わ、わたし知ってるし……」


「そ、そうだな……勉強家だな……」


「あ、先っぽ剥けてる……仮性?」


「う、うん……」


 つまりはそう言うことだった。


「えっとなんで春香が、俺の部屋のベッドで一緒に寝てたんだ……?」


 俺は後ろを向いて、いそいそとトランクスとハーフパンツを穿きなおしながら聞いた。


「それはその、話せば長くなるんだけど――」


 すると、まだちょっと顔が赤いままの春香が事のいきさつを説明し始めた。

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