第13話 「いいんだもーん。むしろ学校帰りにパピコ半分ことかすごく青春っぽくない?」

 ワオーンと鳴く電子マネーでちゃちゃっと会計を済ませた俺は、パ〇コ片手にフードコートで再び春香と落ち合った。


 2人席に、向かい合って座る。


 そして、

「ほい、半分こしようぜ」

 俺はパ〇コをパキっと2つに分けると、1本を春香に手渡した。


「い、いいよ、こーへいが一人で食べなよ」

 春香は遠慮がちにそう言うけれど、


「だってこの暑いのに、俺だけアイス食べるのはさすがに気が引けるだろ? その点パ〇コなら簡単に2つに分けれて便利だよさ。ほら春香、とってとって。溶ける前に食べようぜ」


「あ、ありがと、こーへい……じゃあ、いただきます」


 春香は早速はむっとパ〇コの先っぽを可愛く咥えると、ちゅーちゅーしだした。

 俺も同じようにパ〇コを咥える。


 しばらく2人でちゅーちゅーしていると、


「あっ、これって、こーへいからもらった初めてのプレゼントだよね……えへへ」


 ふいに春香が、嬉しそうにそんなことをつぶやいた。


「別にそんな大したもんじゃないだろ……っていうか、パ〇コ半分こしただけだし。いいのかそんな安い女で。50円くらいだぞ?」


「いいんだもーん。むしろ学校帰りにパ〇コ半分ことか、すっごく青春っぽくて素敵だもーん」


「うっ……」


 だからなんの前振りもなく、いきなりそんな可愛いにっこり笑顔を俺に向けるのはやめてくれないかな?


 無防備で自然体すぎる笑顔が反則級に可愛すぎて、すごくドキッとしちゃうだろ。


 そんな感じで2人そろってパ〇コをちゅーちゅーしながら、だべりながら涼をとる。


「思ってた以上に美味しかったね、すっごくキウイキウイしてた」

「つぶつぶ感がすごかったよな。凍らせたキウイの果肉を食べてるみたいっていうか」


「アゲリシ〇ス~アゲリシ〇ス~♪」


「「キウイでアゲリシ〇ス~♪」」


「うわっ!? こーへいがノリノリで乗ってくるなんてめずらしいね?」


「つ、ついな……耳に残るフレーズだから覚えちゃって……」


 実はCMで見て気になってネットで動画をチェックして。

 歌うだけでなく踊れたりもするんだけど、さすがに恥ずかしいから内緒にしておこう。


「でもほんと美味しいし。さすがパ〇コに外れなしだね」


「お、それなんかすごく名言っぽい」


「でしょでしょ」


「でも実はぜんぜん大したことは言ってないよな、パ〇コは美味しいって言ってるだけだもんな」


「この調子でチョコミント味も出せばいいのにね?」


「おいパ〇コ、間違っても俺を失望させるんじゃないぞ? 俺はお前のこと信じてるからな」


「その時はこーへいに半分あげるからね、いっしょに食べよ?」


「悪いがノーサンキューだ。断固拒否させてもらう」


「いーじゃんこーへい、そんなつれないこと言わないで、いっしょにチョコミントをキメようよ?」


「なんだよそのアメリカドラマに出てくる、悪い遊びを教えてくれるチャラい先輩みたいな勧め方は……」


 とまぁそんな感じで、半分こしたパ〇コを2人で食べつつ楽しくアゲリシャスをして。

 しばらくフードコートでだべってから、俺たちは少し暑さが引いた夕方の帰り道を肩を並べて帰った。


 朝から暑すぎるしんどいだけの一日は、だけど最後はちょっといい感じに幕を閉じた。

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