第21話 「もういいじゃん別に! わたしがこーへいのことなんて思ってたって!」

「じゃあこうしない? 両方良くないところがあったってことで、今後はなくしていこう? 人生一度きりなんだし前向きに生きないとだよ」


「許してくれるのか?」


「だから許すもなにも、わたしは最初から怒ってなんかなかったし。むしろこーへいを怒らせちゃって、どうやったら許してもらえるかってずっと考えてたのに。いっぱいラインしちゃってウザかったよね、それもごめんなさい」


「うっ、俺の方こそ全く見てなくて悪かったな……その、春香に連絡する勇気がなくて、ひたすら先送りにしちゃってたっていうか……」


「うわっ、想像以上のヘタレがいたし! 既読もつかないから、もしかして充電切れてたのかなって思ってたのに」


「ほんとごめんな……」


「もう、冗談だってば。だって結局こうやって来てくれたんだもん。だから全然ヘタレじゃないし。ヘタレかもだけど、すっごくがんばったヘタレだもん」


「ちゃんと行動してちゃんと言葉で伝えなきゃって。春香の気持ちに俺も真剣に応えないといけないって、そう思ったんだ」


「うん、こーへいの気持ちはちゃんと伝わったよ。すごくカッコよかったぞ、こーへい」


 ちょっとうつむいて、はにかみながら上目づかいで告げる春香は、先日ネットで見かけた、昼寝中に寝言を言う子猫の動画なんて目じゃないくらいに可愛かった。


 そんな春香の姿に、俺の心臓がこれでもかと早鐘を打ちはじめる。


 そうでなくても春香はかなり可愛い容姿をしているんだ。

 そんな春香に照れた様子で「カッコよかったぞ」なんて言われてみろ。


 これで何も思わない男子がいたら、そいつはもはやこの世界には必要ないからサッサと異世界転生でもして、新たな人生を進むべきだと俺は思うね。


「そ、そうか……そんな面と向かって言われると恥ずかしいって言うか、むずがゆいって言うか、ガラじゃないって言うか。まぁなんだ、すごく照れる」


「ぜんぜん照れなくていいし。わたしにとってこーへいは出会った時から素敵だったもん。こーへいは絶体絶命のピンチに、風に乗って颯爽さっそうと現れて助けてくれた、白馬の王子様なんだし」


「さすがにそれは盛り過ぎだろ」


 思わず苦笑した俺に、


「ぜんぜん盛ってないし! 本心丸出しだし! あっと、えっと、その、本心って言うか……もういいじゃん別に! わたしがこーへいのことなんて思ってたって!」


「そうか……俺は春香の中で白馬の王子さまだったのか……」


 まさか俺の人生で、そんな表現をされる日が来るとは思ってもみなかったよ。


「でもでも、そんな素敵なこーへいが変わろうって、もっと素敵になろうって言うんならわたしが止める理由なんてないよね。まったくもう、わたしのことどれだけキュン死させようとするんだよコンニャロウ!」


「そんなつもりはさらさら……でもありがとう。春香にそう言ってもらえてうれしいよ」


 しかしあれだな。


 非日常的って言うか真夜中に会ったからってのもあるのかな、今日の春香はかなりぐいぐい来るような……。

 なんていうかこう、勢いに飲まれちゃいそうな気がしなくもない。


 あと結構恥ずかしい会話をしている自覚があるので、家にいるであろうご家族とかご近所さんに聞こえてないといいなと、ちょっとだけ心配になる俺がいた。


「ねぇこーへい」


「ん?」


「わたしはこーへいのことが好き。大好き。初めて会った時から今もずっとこーへいのことが、だいだいだいだい大好きなんだ。こーへいと話すたびに、会うたびに、こーへいのこと考えるだけでドキドキするの」


「お、おう――」

 俺は今ものすごく情熱的な告白をされている。


「ねぇこーへい。こーへいはわたしのこと……好き?」


 俺を見つめる春香の真剣な瞳を俺はしっかりと見返しながら、改めて俺は自分の心に問いかける。


 もちろんすぐに答えは見つかった。

 一応再確認してみただけだ。


 だから今の素直な気持ちを、素直な言葉でありのまま春香に伝えようと思った。


「俺は――」


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